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『禁じられたジュリエット』古野まほろ
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あとがきのあとがき

禁じられたジュリエット

『禁じられたジュリエット』

古野まほろ(ふるの まほろ)

profile

東京大学法学部卒業。リヨン第三大学法学部第三段階「Droit et Politique de la Sécurité」専攻修士課程修了。フランス内務省より免状「Diplôme de Commissaire」授与。なお学位授与機構より学士(文学)。警察庁I種警察官として交番、警察署、警察本部、海外、警察庁等で勤務の後、警察大学校主任教授にて退官。2007年、故・宇山日出臣氏に絶賛され、『天帝のはしたなき果実』で第35回メフィスト賞を受賞しデビュー。有栖川有栖・綾辻行人両氏に師事。以降、長編探偵小説等を次々に発表している。

 はなはだ、ザクッといえば──
 犯罪その他の謎を解くプロセスを描く小説を、『ミステリ』と呼ぶとする。
 このうち、その〈犯人〉〈動機〉〈手口〉等を、証拠の事前呈示・フェアプレイの精神その他の〈ルール〉に基づいて解いてゆくパズルを、『本格ミステリ』と呼べる。その流派には、例えば謎そのものの美しさ又は衝撃を重視するものもあれば、証拠から展開する論理の美しさ又は衝撃を重視するものもあるけれど、パズル性・フェアプレイの精神は、本格ミステリのコアといえる。
 またこのうち、誰がやったかに特化し、かつ〈探偵対犯人〉〈読者対作者〉のクイズに特化したものを、本格ミステリ原理主義過激派と呼べる。それを、『犯人当て』『人殺しパズル』と呼んでもいい(もちろん、何故やったかに特化するもの、どうやってやったかに特化するもの、あるいは、いわゆる倒叙──コロンボスタイル──も当然、本格ミステリと呼べるけれど、たぶん過激派ではない)。
 ここで、犯人当て・人殺しパズルを『原理主義過激派』と呼ぶのは、それが最も古典的であり、上記の対決図式が強く、かつ、遊技としての不謹慎さが強いから。とりわけ殺人と殺人者をクイズのお題にするなど、健全な社会常識からすれば、本質的にいかがわしい。
 そう。
 人殺しパズルは、本質的に不健全でいかがわしい。社会にとって不可欠ではないし、むしろ有害ととられるかも知れない。また、論理・証拠・フェアプレイの精神などは、ケンリョクにとって邪魔になるものです。例えば、殺人の犯人候補が10人いるとき、ケンリョクとしては、論理だの証拠だのより、片っ端からとっ捕まえて拷問にかけた方がはやいから。
 ゆえに、本格ミステリは──
 戦前の歴史が証明するとおり、本質的にマイノリティの文学で、プロテストの文学です。
 いえ、もっといえば。
 社会的有用性ゼロの、純粋なパズルであるがゆえ、いっそう強く激しく、『読書』『文学』、『自由』『正義』というものの本質を、浮き彫りにするものです(たぶん)。
 そこで、それが禁じられた世界を描いてみました。もちろん本格ミステリとして、エンタテイメントとして、です。御一読ください。

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