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『純喫茶「一服堂」の四季』東川篤哉
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あとがきのあとがき

純喫茶「一服堂」の四季

『純喫茶「一服堂」の四季』

東川篤哉(ひがしがわとくや)

profile

広島県生まれ。2011年『謎解きはディナーのあとで』で第8回本屋大賞受賞。『密室の鍵貸します』『放課後はミステリーとともに』他著書多数。

私の新刊『純喫茶「一服堂」の四季』という作品は、「いま流行の喫茶店ミステリのような洒落た舞台設定で、いま流行しているとは言い難い、残虐非道な猟奇殺人の謎が語られるっていう趣向は、どうですかねえ?」という呑気な思い付きから生まれた連作短編集。要するにミスマッチの面白さを狙った作品だ。

そもそも私の創作ノートには随分前から「いつか必ずやりたい」と願う猟奇殺人トリックがあった。「ならば、それを書こう。他に上手いアイデアも浮かばないしね」。そう考えた私は、さっそくそのトリックをもとに第一話を構想。だが、いよいよ執筆に取り掛かろうとする直前、私の脳裏に全然別の考えが浮かぶ。「待てよ。このトリックって第一話じゃなくて、最終話のほうが面白くなるのでは?」。で、いろいろ考えた結果、「確かにこれは第一話で書くには惜しい。最終の四話目まで引っ張ろう!」と私は急遽、連作集の方針を変更したのだった。

だが、そうなるとまた別の問題が生じるのは自明の理。第一話として準備していた物語を最終話に回すなら、では第一話としていったい何を書くのか。もう締め切りは目前に迫っているというのに、またゼロから違うアイデアを捻り出し構想を練り直すなんて、無理だぁ~、不可能だぁ~、まさに不可能犯罪だぁ~ッ! と軽いパニックに陥った私が向かったのは、なぜか東京競馬場。その日、よっぽど見逃せないレースがあったのか、それとも単なる現実逃避か。おそらくは後者に違いないのだが、しかし、この日の競馬場には確かに本格の神様がいらっしゃったらしい。レースの合間、メモ帳片手に悩む私の頭に、そのとき思わぬ密室トリックが舞い降りたのだった。

自分でいうのもナンだが、この競馬場で閃いたトリックは、なかなかのものだったらしい。「春の十字架」と題されたその第一話は好評を博し、思いがけず日本推理作家協会賞の短編部門候補にもなった。だが私にしてみれば、これは急遽バッターボックスに送り込んだ代打が、期待もしなかった二塁打を放ったようなもの。この連作集において私が本当にやりたかったトリックは四話目の最終話「バラバラ死体と密室の冬」のほうにある。四つの物語を通読すれば、私がこのトリックを最後に回した意味が理解していただけることだろう。興味のある方は、ぜひご一読を願いたい。

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