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『試験に出ないQED異聞 高田崇史短編集』高田崇史
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あとがきのあとがき

試験に出ないQED異聞 高田崇史短編集

『試験に出ないQED異聞 高田崇史短編集』

高田崇史(たかだ たかふみ)

profile

1958年、東京都生まれ。1998年、『QED 百人一首の呪』で第9回メフィスト賞を受賞しデビュー。以来、「QED」、「カンナ」、「鬼神伝」、「千葉千波の事件日記」、「麿の酩酊事件簿」、「神の時空」の各シリーズを上梓。2018年に『古事記異聞 鬼棲む国、出雲』『古事記異聞 オロチの郷、奥出雲』の「古事記異聞シリーズ」がスタート。

 おかげさまで昨年、作家デビュー二十年目を迎えることとなりました。まさかこんなに長く書き続けられようとは「メフィスト賞」受賞当時、誰もが想像できなかったでしょう。何しろ本人が全く想像すらしていなかったのですから……。

 今年の正月、二十周年記念の短編集『試験に出ないQED異聞 高田崇史短編集』を上梓させていただきました。過去の「QEDシリーズ」から二編、「千波くんシリーズ」から二編、その他の懐かしい作品を二編。この短編集のための書き下ろしで『QED』の桑原崇と『古事記異聞』の橘樹雅が絡む中編『木曾殿最期』という構成です。

 それぞれの内容や創作裏話に関しては、巻末「自作解説風エッセイ」に詳しく書いてありますが、書き下ろしの『木曾殿最期』に関してだけ言えば、あの松尾芭蕉が自らの最期に臨んで、
「骸は木曾塚に送るべし」
 と遺言し、今も義仲の隣に眠っているのですが、では、どうして俳聖・芭蕉ほどの人間が「無教養で乱暴者」という評価が一般的に定着している義仲に、そこまで愛情を抱いたのか? もしかするとそこには、歴史の表からでは見えない何かがあったのでは――という謎がメインになっています。

 また、この「自作解説風エッセイ」が、思い切りネタバレしているため「袋とじ」という、昔懐かしい装丁になっています。ひょっとすると「装丁ミス?」と思ってしまう若い方もいらっしゃるかも知れませんが、ぜひ自力でカットして開けてお読みください。

 思えば、書き下ろしは講談社だけで五十六作。他社も入れれば、二十年で六十作を超えました。日本の歴史や風俗・習慣の重箱の隅をつつくように、まだ誰も書いていない新しいモノを探して、いつの間にかこんな所まで来てしまいました。それでもまだ次があるのは、常に叱咤してくれる編集部の方々と、激励してくれる読者のみなさんのおかげと感謝しています。

 更にここで忘れてはいけないのは、その土地土地の「神様」です。取材に行き、きちんと「神社・温泉・地酒」をクリアすると、その夜に耳元でさまざまなことを囁いてくれます(たまに頭を殴られたりもします)ので、ぼくは「神様」に言われた通りのことを文章にしているだけです。

 冗談と思われるかも知れませんが、実は本当のことなのです。

 そうでなければ、二十年にもわたって毎回新しいネタを探して書き続けることは不可能だったでしょう。同時に、この状態がいつまで続くのか「真のゴーストライター」(?)であるぼくには全く分かりませんが「流れのままに」「果報は寝て待て」の精神で、これからも書き続けて行かれればと思っています。

 二十年を迎えて新たなるスタートの次作は「源平合戦」に挑みました。これが予想を遥かに超えて大変な事態に陥り、内容も分量も普段の「QED」二冊分ほどとなってしまい、つい先日ようやく脱稿しました。主要テーマは、いわゆる治承・寿永の乱における最大の(と思われる)あの謎を、どうして今まで誰もがあっさりと看過してきたのか……といういつも通りの突っ込み方ですが、楽しんでいただけることを願っています。

 ぼくは四十歳デビューでしたので、二十周年とともに還暦を迎えてしまいました。ということは「四柱推命」的に見て、〇歳からの新たなスタートとなります。ぜひこれからも、優しく見守っていただければ幸いです。

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