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『無貌伝 ~奪われた顔~』『無貌伝 ~最後の物語~』望月守宮
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あとがきのあとがき

『無貌伝 ~奪われた顔~』
『無貌伝 ~最後の物語~』

『無貌伝 ~奪われた顔~』

『無貌伝 ~最後の物語~』

望月守宮(もちづきやもり)

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08年、『無貌伝 ~双児の子ら~』で第40回メフィスト賞を受賞しデビュー。今秋、シリーズ最終巻を2ヵ月連続刊行し、「無貌伝」シリーズの完結を迎える。

古今東西、主人公という存在はあらゆる困難を乗り越えてきました。強大な敵、不可解な謎。家族との不仲や心の痛みを克服した者もいるでしょう。彼らは、困難に直面し、時に逃げたいという誘惑にかられながらも、必ず内なる力に気づき、知恵や力を振り絞ってそれを乗り越えるのです。全ての娯楽作品は、このたった一つのパターンを神話の時代から繰り返してきたものだと言っても過言ではないでしょう。

「なら、究極の困難とは何だろう?」

強大な敵? 不可解な謎? 家族との不仲? 心の痛み? しかし、これらが克服されるさまを描いたものこそが物語です。

つまり、主人公が直面する困難は、はじめから解決されることが約束されているのです。当然といえば当然でしょう。物語とは読者を楽しませるためにあるのですから。

「なら、主人公が困難に立ち向かう力を失っていたら?」

それもよくあるパターン。大抵は、別の形で力を取り戻します。

「主人公が主人公でなかったら? 主人公を主人公たらしめているものが、奪われ、取り戻せなかったら?」

どうなるのだろう。

こんな疑問から『無貌伝』は生まれました。主人公の探偵・秋津承一郎は怪盗・無貌によって全てを奪われています。自分を自分たらしめている人格や嗜好、特徴を奪われ、大事な人間との繫がりも失っています。
なので、秋津承一郎は無力な男です。名探偵とされながら、謎は一切解かず、助手に任せきりでろくに活躍しません。

こんなキャラが主人公として使えるはずがない。だから、仕掛けを施しました。全七作のうち、六作目の『奪われた顔』のラストで、初めてこの男が真の主人公であり、本当に「全てを失ったのだ」とわかるのです。

最終作の最後のシーンまで、「どうなるのだろう」という疑問に、どんな答えが出てくるかわからないまま、書き進めました。本来であれば、物語を面白いものにするため、せめて最終作を書き始める前に答えを見つけておくべきだったのですが、できませんでした。ですが、主人公とともに歩むように書いていくうちに、答えを見つけられたような気がします。

 この作品を最後まで書き終えることができて、本当に幸せです。ありがとうございました。

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