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『怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関』法月綸太郎
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『怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関』

『怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関』

法月綸太郎(のりづき りんたろう)

profile

一九六四年松江市生まれ。京都大学法学部卒業。八八年『密閉教室』でデビュー。以降「都市伝説パズル」、『生首に聞いてみろ』、『キングを探せ』、『ノックス・マシン』と本格ミステリの王道と最先端を書き続けている。

『怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関』は大変な難産の末に、どうにかこうにか完成にこぎ着けた長編である。

「メフィスト」で連載を始めたのは、二〇〇八年の暮れ。〈ラトウィッジ機関〉と名づけた冗談みたいなネタがあるだけで、具体的なプロットはほとんど決めず、見切り発車してしまった。手探りで書き進めていったのだが、二〇〇九年の夏に眼の手術を受けたせいで一度休載、その後も『キングを探せ』の書き下ろしに専念するため、二年以上連載がストップして、自分でも話を忘れてしまったほどである。二〇一二年に執筆を再開したものの、完全にレームダック状態で、どこを目指しているのかわからないまま、その場しのぎのエピソードを綴っていた。毎回入稿が遅れたのは言うまでもない。『怪盗グリフィン、絶体絶命』に続いて連載イラストを担当していただいた本秀康氏にはずいぶんご迷惑をかけたと思う。この場を借りてお詫びしたい。

「メフィスト」の連載は二〇一四年の夏に完結したが、その段階ではまったく小説の体をなしておらず、とても本にできるような内容ではなかった。なにしろ主人公のグリフィンが何も盗まないまま、話が終わってしまうのだから。これではとても怪盗ものの続編とは言いがたい。潔くボツにするしかないかと、一時は本気で考えた。

 そうならなかったのは、ストーリーの迷走を一気に解消する打開策を泥縄式に思いついたからだ。「窮すれば通ず」というやつで、ヒントになったのはリチャード・P・ファインマンが編み出した経路積分という手法だった。物語の発端と結末を固定して、両者を結ぶ無数の経路をすべて足し合わせてやると、確率波の山と谷が打ち消し合って、首尾一貫したストーリーの軌道が定まる……。もちろんこれは比喩的なイメージで、実際の経路積分とは似て非なる趣向だが、とにかくそんなふうにしてこの小説は息を吹き返したのである。

 もうひとつ、連載時から大きく変わったのは章割りで、リライトする際、各章のサブタイトルが『易経』の六十四卦(の英訳名)に対応するよう、ストーリーを再編集した。本書の第一部が三十章、第二部が三十四章から構成されているのは、「上経」三十卦、「下経」三十四卦に合わせたものだ。英語の卦名が物語の進行を暗示するように気を配ったので(特に第二部)、そのへんのアレンジもお見逃しなきよう。

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