講談社BOOK倶楽部

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講談社ノベルス

『禁じられたジュリエット』
もうひとつの歴史を刻む日本の全寮制高校。
現政権下では退廃文学として禁書となっている
「ミステリ小説」に触れてしまった女子高生6人が反省室に収容される。彼女たち「囚人」役と、同級生2人の「看守」役の計8人で、更生プログラムに参加させられることに。はじめはごく普通の友人同士だった8人は、プログラムを早く切り上げられるよう協力するはずだったが、次第に対立を深め状況は深刻化していく。そして密室状態でひとりの命が奪われた。

『禁じられたジュリエット Juliette et Juliettes Pour Toujours』
著者:古野まほろ
定価:本体1,600円(税別)

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著者コメント

 本格ミステリとは何だろうか?
 私はデビューしてから、本格ミステリを書かなかった年がありません。そして、とうとう今年で作家10周年。自分がどれだけの作品を書いてきたのか、数えたこともありません。
けれど――
 ひとつひとつの作品を、職人として仕上げているうちに。冒頭の疑問が、解決されるどころか、ますます大きくなってくるのです。
 もちろん、職人にそんな哲学的なものは必要ありません。私は私が書きたいと思う小説を書く。それは、ほとんどが本格ミステリになる。私の手が、手癖が、そういうものになっている。だから、普段は改めて考えない。傘でも下駄でも油絵でもいいですが、その職人は『そもそも傘とは何だろう』『どうしてこの世に下駄なんてものがあるのだろう』とは(たぶん)考えない。それと一緒です。
ただ――
 今年は私の10周年。しかも、新本格ミステリ30周年。
 ならば、この特別な年に。
『本格ミステリとは何か?』というテーマを、真正面から採り上げてみてはどうだろうか? というか、それができるのはあるいはすべきなのは、このメモリアルイヤーを措いて他にないのではないか?
――そんな思いつきから、そして、ほんとうにちょっとした使命感から、『禁じられたジュリエット』はできました。
 本格ミステリの意味をとらえるためには。
 本格ミステリのない世界を考えればいい。
 そんな世界では、いったい何が起こるのか。あるいは何も起こらないのか。人間と社会にとって、そして『あなたと私』にとって、本格ミステリとは何なのか?
それを、本格ミステリそのもので表現してしまおう。評論でも哲学でもなく、小説のかたちで、書き手がやってしまおう――
 そんな思いをこめた、今年しか書けなかった1冊。ぜひ御一読ください。

 

PROFILE

古野まほろ(ふるの・まほろ)
東京大学法学部卒業。リヨン第三大学法学部第三段階「Droit et Politique de la
Sécurité」専攻修士課程修了。フランス内務省より免状「Diplôme de
Commissaire」授与。なお学位授与機構より学士(文学)。警察庁I種警察官として交番、警察署、警察本部、海外、警察庁等で勤務の後、警察大学校主任教授にて退官。2007年、故・宇山日出臣氏に絶賛され、『天帝のはしたなき果実』で第35回メフィスト賞を受
賞しデビュー。有栖川有栖・綾辻行人両氏に師事。以降、長編探偵小説等を次々に発表している。

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担当者コメント

「臨床真実士ユイカの論理」シリーズ(講談社タイガ)が大好評となっている、メフィスト賞・作家古野まほろさんの新作が登場します。
 閉鎖された空間、「看守」と「囚人」に分けられた女子高生。そう、あの有名な「監獄実験」です。仲が良かった女子高生たちの人間関係がゆっくりと崩壊してゆくさまの惨さ、悲しさ……。読めば監獄に入る8人のうち誰かに自分を投影し、同じように心を試されることと思います。そして、古野さんの真骨頂である論理パズルも最大の読みどころ。新本格ミステリ30周年記念作品としてこれ以上ない重厚なパズル・ミステリであり、青春ストーリーである本書をお届けします。
また、BOOK倶楽部に掲載されたこちらのスペシャルインタビューも合わせてご覧ください! 古野さんがたびたび作品テーマとして描く「正義」について、その答えの一端が見えてくるかもしれません。

『臨床真実士ユイカの論理 ABX殺人事件 古野まほろスペシャルインタビュー』

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