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『都知事探偵・漆原翔太郎セシューズ・ハイ』天祢涼
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あとがきのあとがき

 蜂に魅かれた容疑者

『都知事探偵・漆原翔太郎
セシューズ・ハイ』

天祢涼(あまねりょう)

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2010年、美夜シリーズの一作目となる『キョウカンカク』で第43回メフィスト賞を受賞しデビュー。現在、長らく中断していた同シリーズの新作『ゼロ・トレランス(仮)』刊行準備中。

本作は、昨年上梓した『セシューズ・ハイ 議員探偵・漆原翔太郎』の続編です。まさか主人公が都知事になるとは。作者も意外でした。

意外と云えばもう一つ。前作は、女性読者に好評でした。主人公と秘書の主従関係が「萌え」ポイントだったらしいです。

喜んでいただいたのはありがたいですが、作者は男性なので、女性心理はよくわかりません。今回も、「女性が不快に感じない程度のドタバタコメディにしよう」くらいに考え、執筆に取りかかりました。

さて、本作に出てくる政界は、云うまでもなく架空のもの。ただ、一から十まで噓では説得力がないので、取材のため、都庁に何度も足を運びました。

時は二〇一三年の暮れ。当時の猪瀬直樹都知事の五千万円問題で、都議会が揺れに揺れていた時期です。

都議に追及された猪瀬氏が五千万円の模型を鞄に詰めようとした、あの日も傍聴していました。鞄が出てきた時には既に帰ってましたけどね。他社との打ち合わせがあったからですが、用事がなくても帰っていたと思います。

理由は、野次が不愉快だったから。

一部の都議が、とても公職に就いている身とは思えない気分の悪い言葉を連呼して、聞くに耐えなかったのです。

が、自分はあくまで小説家。義憤に駆られましたがどうすることもなく、作中で主人公に「どうせ野次なんて誰も聞いていないから、云うのはやめましょう」という意味のことを語らせ、終わりにしました。

賢明な人なら、このコラムのオチがわかりましたね。

そう、終わりにならなかったのです。

入稿を済ませ、順調に作業が進んでいた二〇一四年六月。世界に報じられた「早く結婚しろ!」「産めないのか!」の、都議会野次問題が勃発してしまいました。

めちゃくちゃ焦りました。

だって「野次なんて誰も聞いていない」と書いてしまったんですよ。見当はずれもいいところ。しかも、よりによってセクハラ野次。「女性が不快に感じない程度のドタバタコメディ」という目論見がはずれるどころか、女性を敵に回してしまう公算大ではありませんか。

果たして修正が間に合ったのか否か、前者ならどう書き直したのか。答は『都知事探偵・漆原翔太郎』をお読みください。

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