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『双孔堂の殺人 〜Double Torus〜』 周木 律|あとがきのあとがき|webメフィスト
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あとがきのあとがき

『双孔堂の殺人
〜Double Torus〜』

周木 律 (しゅうきりつ)

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某国立大学建築学科卒業。『眼球堂の殺人 〜The Book〜』で第47回メフィスト賞を受賞。

エレベータ。

『双孔堂の殺人〜Double Torus〜』でも、館の入口に使われているこの装置、冷静に考えると結構怖いものです。

 狭いかご。窓はないことが多く、あっても開けることができない。手動でドアを開閉することも不可能。閉所恐怖症ではないとしても恐ろしさを感じるのではないでしょうか。

 そんなエレベータに、僕はかつて閉じ込められたことがあります。

 あるビルで乗り込んだエレベータ。これが、上昇中にいきなり止まってしまったのです。僕は居あわせた数人と顔を見あわせました。

「あれ、もしかして止まりました?」「ええ、そのようですね」「ドアも開かないですか」「ですね、ボタンも反応しません」不安げな声色での会話。やがて誰かが思い出したように非常時の黄色いボタンを押し、制御室を呼び出しました。

「あのう、止まったんですけど」『あーそうみたいですね、ドア開きません?』「ええ」『そうですか、じゃあ救出に行きますのでちょっと待っててください』

 救出? 穏やかじゃない単語にどきりとしつつ、しばしはらはらしながら待っていると、やがて係員の方がドアを向こう側から開けてくれて、無事僕らはエレベータから脱出することができました。

 振り返ってみれば、高々十分程度の閉じ込めに過ぎなかったのですが、予期しなかった分だけなかなか恐ろしいものでした。とりわけ一番怖かったのはエレベータから外に出る瞬間。「ここをまたいだ瞬間、ロープが切れたらどうなる?」―そんなイヤな想像が頭から離れなかったからです。

『双孔堂の殺人』の主人公である宮司司は、エレベータ恐怖症です。彼もまた閉じ込められた経験があり、そのせいで恐怖症になったのですが―それはまた別の話。

 さて、シリーズ(「堂シリーズ」?)三作目となる『五覚堂の殺人〜Burning Ship〜』を二〇一四年二月上旬に出版します。複雑に見える自然界も実のところ単純な規則に基づいて構成されているもの。雪の結晶も、込み入った海岸線も、もみの木の梢も、あるいは人間そのものも。そんな思想を体現する館で、十和田たちが新しい謎に挑みます。もちろん例のあの人も健在。図版だらけの次作ですが、お楽しみいただけましたら幸いです。

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