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『神の時空 ―鎌倉の地龍―』 高田崇史|あとがきのあとがき|webメフィスト
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あとがきのあとがき

『神の時空
 ―鎌倉の地龍―』

高田崇史 (たかだたかふみ)

profile

昭和33年東京都生まれ。明治薬科大学卒。『QED百人一首の呪』(講談社ノベルス)で、第9回メフィスト賞を受賞しデビュー。代表作に「QEDシリーズ」、「カンナ」シリーズ、『軍神の血脈』など。

 日本各地には「禁足地」と呼ばれる場所が数多くあります。そして、大抵そういった場所には「神」が鎮座され、我々は立ち入ることを禁じられています。

 しかし、どんな辞書を調べてみても「禁足」という言葉に「立ち入り禁止」の意味は見当たりません。「禁足」には、政治の世界などでもしばしば使われているように「外出禁止」「ここから出てはいけない」「足留めの罰」という意味があるだけです。つまり「禁足地」というのは、本来「外出禁止の罰則地」を表していたのでしょう。

 では、一体誰が外出禁止を命じられているのか。それはもちろん、その場所に封じ込められている「神(怨霊)」たちです。神や鬼や怨霊たちは、その場所から出られない。そして我々は、その場所に入れない。そこでは、我々と怨霊たちとの接触が禁じられ隔絶されてしまっているのです。

 六百年ほど前──。鵺とおぼしき怪鳥が北野天満宮に現れて大騒ぎになるという事件がありました。結局、怪鳥は見事に退治されたのですが、その時人々は「天神様の力が弱ってしまわれた」「天神様は病気なのだ」と感じたといいます。では、どうして病気などになられてしまったのか。それはきっと天神様が自分たちの災厄を全て引き受けてくださったからだ。ならば今度は、自分たちが天神様を看病する番ではないか。そう考えて、人々は盛大な祭りを執り行ったといいます。言うまでもなく「祭り」は「祀り」であり、それは取りも直さず「祈り」であるわけですから。

 このように庶民と神(怨霊)とは、とても近しい仲にありました。それがいつしか「行きは良い良い、帰りは恐い」というように、容易な接触が叶わなくなってしまいました。それは怨霊たちだけでなく、我々にとっても非常に不幸な出来事なのではないでしょうか。

 今回のシリーズでは、そんな心優しき怨霊たちを訪ね歩いてみる予定です。同時に時の権力者たちによって隠されていた歴史を掘り起こし、彼らの抱いていたさまざまな思いを共有すること。それこそが、彼らに対する何よりの鎮魂になるのではないかと感じているからです。

 今のところ全八巻を予定していますが、さて、果たしてどうなることでしょう。みなさまもこの本と共に、怨霊鎮魂の旅を最後までご一緒していただけますことを、心より祈念しています。

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