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『猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条』 北山猛邦|あとがきのあとがき|webメフィスト
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『猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条』

北山猛邦 (きたやまたけくに)

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2002年、『「クロック城」殺人事件』で第24回メフィスト賞を受賞しデビュー。前作『猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数』は2013年版「読者に勧める黄金の本格ミステリー」に選出。

 本格ミステリというジャンルは研究しつくされていて、二十一世紀になってデビューした作家にはもう、さほどやるべきことがないんじゃないかと、デビューする前から考えているのですが、一方で、だからこそ新しいことを考えなければならないという思いもあります。誰も見たことのないようなミステリ、誰も知らないようなトリックこそ、ミステリ作家として模索していかなければならないことだと考えています。

 しかし百年以上にわたって、世界中の頭脳が朝から晩まで考察してきた問題を、そう簡単に解決できる発明なんて、思いつくものではありません。「いいこと思いついた」なんて閃きはもう、他の誰かが考えたことに違いないのです。やっぱり、もう新しいものなんてないのかもしれません。もちろん、こうした悲観的な考察も、百年前に誰かが通った道に違いないでしょう。

 一方で世の中には、「誰かが思いついてもあえてやらなかったこと」が結構あるんじゃないかと思います。「自粛」によって途切れてしまった廃道が、あちこちに打ち捨てられているのではないでしょうか。

「あえてやらなかった」理由はいろいろあると思います。その多くは「必要ない」「くだらない」「やりようがない」といったネガティブな理由でしょう。

 今回の『猫柳十一弦の失敗』は、その手のネガティブな理由によって、他の人たちがやらなかったことをやったミステリといえると思います。自分でいうのもなんですが。

 そしてそれは同時に、この廃道の先に何か新しい風景が見えるかもしれないという希望への挑戦でもあります。やっぱり何もないという結末も当然あるでしょうけれど。

 さて『猫柳十一弦』はシリーズ二作目になりますが、もともとシリーズの先にそれほど展望はありません。登場する探偵、猫柳十一弦はまっすぐな性格ですが、基本的にはあまのじゃくな作者によって書かれていますので、僕の精神がまたひねくれた時に、次のシリーズ作ができるかもしれません。

 とはいえ、前作もそうでしたが、今作もミステリ素人がミステリの楽しみを知ることができる小説であり、同時にミステリ玄人がにやりとしたりううむと唸ったりするような小説であることを目指しました。次回作もそうしたいと思っています。


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