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『緋紗子さんには、9つの秘密がある』清水晴木
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あとがきのあとがき

緋紗子さんには、9つの秘密がある

『緋紗子さんには、9つの秘密がある』

清水晴木(しみず はるき)

profile

1988年、千葉県生まれ。東洋大学社会学部卒業。2011年、函館港イルミナシオン映画祭第15回シナリオ大賞で最終選考に残る。以降、短編映画脚本や、スマートフォン向けアプリのシナリオ原案に携わる。2015年、『海の見える花屋フルールの事件記 〜秋山瑠璃は恋をしない〜』(TO文庫)で長編小説デビュー。

 ごく自然と物語の舞台は千葉になった。
 物語の中でも描かれる京葉線沿いは、私が高校時代、日常的に過ごしていた場所だ。自転車を漕ぎながら花見川の傍を延びるサイクリングロードを遡り、時には海沿いの道を、日の沈む方へと向かった。もう十年以上も前になるが、その時の記憶は今でも鮮明に残っている。多分、他の記憶と比べても、その頃の情景は絵の具をチューブからぎゅっと絞り出したように色濃く残っている。だからこそ、高校生を主人公にした物語を書くという事になって、ごく自然と物語の舞台は千葉になった。
 地元を舞台にするうえで、千葉に住んでいる人に喜んでもらうのは勿論の事、千葉に縁のない人にも、一度訪れてみたいと思わせるような作品にしたかった。気持ちとしては千葉京葉線沿い観光大使に任命されたくらいの責務を勝手に背負っていたと思う。そして実際に店頭で発売されてからは、「千葉、千葉、千葉!」と大きく展開してもらえるような形になっていたので、まずは自称千葉京葉線沿い観光大使としての責務もわずかばかりだが果たせたように思う。
 ごく自然に思い浮かんだ、という事で続けるとするならば、「緋紗子さん」という主人公の女の子の名前は最初に、漢字もそっくりそのまま頭に思い浮かんだ。おまけに、その綺麗な顔までもがくっきり浮かび上がったのを覚えている。
 緋紗子さんには、体に重大な秘密がある。と、あらすじにも書かれているが、このかなり突飛な体の秘密を思いついたのには理由があった。私は緋紗子さんを、幸せになる事から一番遠い位置に置いてみたかったのだ。そうする為にはどうすればいいか考えると、自然にその体の秘密は思いついた。それから趣味・嗜好や、他の詳細なピースがハマっていき、「緋紗子さん」という、ミステリアスで、でもどこか魅力的な存在が誕生した。そうして生まれた緋紗子さんの姿は、私の頭の中に最初に浮かんだ「緋紗子さん」と変わらないままだった。
 また、今作品は、「友情」が一つの大きなテーマとしてあげられる。でも私は男子同士の友情ではなく、女子同士の友情を描いた。それにも理由がある。
 ただ、綺麗な友情の青春物語を書きたかったのだ。
 それに際して、私はごく自然に女子の友情の方が綺麗なものだと思ったのだ。きっとそう思うのも、私が女子同士の友情に対して客観的で遠い立場にいるからこそだと重々承知している。
 男の友情が綺麗じゃない、と言っている訳ではない。でも個人的には、汚いけど熱い、と表現するくらいが丁度いいと思っている。だからこそ今作品では女の子二人の友情を描いた。直視すれば眩しく感じてしまうくらいのまっすぐで綺麗な関係だ。
「友情を信じるすべての人に。」というコピーを付けて頂いたのは、本当に光栄な事だと思う。
 ぜひ、この友情と秘密の混ざり合ったミステリアスな青春小説を、ご一読ください。

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