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『溝猫長屋 祠之怪』輪渡颯介
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あとがきのあとがき

溝猫長屋 祠之怪

『溝猫長屋 祠之怪』

輪渡颯介(わたり そうすけ)

profile

1972年、東京都生まれ。明治大学卒業。2008年に『掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南』で第38回メフィスト賞を受賞し、デビュー。主な作品に「浪人左門」シリーズとして『百物語』『無縁塚』『狐憑きの娘』、「古道具屋 皆塵堂」シリーズとして『蔵盗み』『祟り婿』『夢の猫』などがある。

 このたび新作を書き上げました、輪渡颯介です。

 今回は子供が主人公です。江戸の長屋に住む四人の少年たちが、とある祠にお参りしたことがきっかけで幽霊騒動に巻き込まれる、というお話です。

 と申しますと、私の読者様の中に「お前また幽霊話かよ」とおっしゃる方が出てくるかもしれません。しかし、それは諦めてくださいとしか申し上げられないのです。私の作品に幽霊は憑き物……じゃなかった、付き物なのですから。

 そう申しますと今度は、「お前、本当は怪談作家の皮を被った猫小説書きだろうが」と言う方が出てくる可能性があります。確かに最近の私の作品は猫てんこ盛りなので、そう思われても仕方がないのかもしれません。しかしそれは誤解です。私は決して自ら進んで作品に猫を登場させている訳ではないのです。あれはたまたまちょろっと出した猫が作者の見ていないところで勝手に子作りを始めて、自然増殖してしまっただけです。お蔭でこの新作の前に書いていた「古道具屋 皆塵堂」シリーズは、散々これは怪談ですよと煽っておきながら、最後の最後で肝心の幽霊がうっすらとすら姿を現さず、ただの猫の飼い主探しの話で終わってしまいました。無念です。

 繰り返し申し上げます。輪渡作品においては幽霊こそ基本装備ですが、猫は決してそうではありません。あくまでもオプションですので、誤解なさらないようお願いいたします。

 さて、そんなことより新作の話です。先に書きましたように、今作は四人の少年が主人公です。この子供たちがとある祠にお参りしたところ、幽霊の存在を感じ取る力を得てしまうのです。ところが、これがなぜかやたらと中途半端な能力でして、「見る」か「聞く」か「嗅ぐ」かの、どれか一つしか与えられない。しかも次に幽霊が出た時には別の能力に移っている。さらに言うと、子供は四人いるので、一人は必ずあぶれてしまうという、なんとも面倒臭いシステムなのです。

 そんな状態の中で幽霊騒動に巻き込まれていく訳ですが、少年たちは能天気なほど明るく前向きに事件に立ち向かっていきます。お蔭で幽霊ネタを扱っておきながら、からっとした印象の楽しい作品に仕上がっておりますので、ぜひこの新作小説、よろしくお願い申し上げます。タイトルは『溝猫長屋 祠之怪』でして……。

 ……あれ?

 溝猫長屋……。

 ええと、どなたかお客様(読者様)の中に、オプションで猫を注文された方、いらっしゃいましたでしょうか?

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