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『未来S高校航時部レポート 新撰組EZOで戦う!』辻 真先
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あとがきのあとがき

『未来S高校航時部レポート 新撰組EZOで戦う!』

『未来S高校航時部レポート 新撰組EZOで戦う!』

辻 真先(つじ まさき)

profile

1932年、愛知県生まれ。脚本家として「鉄腕アトム」「デビルマン」など多くのアニメ、特撮作品に携わる。72年に『仮題・中学殺人事件』で作家デビュー。82年、『アリスの国の殺人』で第35回日本推理作家協会賞長編部門を受賞。09年、牧薩次名義で刊行した『完全恋愛』で第9回本格ミステリ大賞小説部門を受賞。

 SF作家クラブに入会して久しいが、ミステリはともかくSFらしいものはめったに書いたことがない。反省して、タイムパトロールものを講談社ノベルスで書かせてもらった。その最終巻である。

 土方歳三が量子力学の世界で剣を振るい、虚数とは死の世界だと喝破するなど、我ながら無茶を演じたが、さきごろ中学以来の友人で名大の理学部名誉教授に会ったら、前回の真田幸村の豊臣幕府創建の歴史歪曲を喜んでいたので、いくらかホッとした。既成作家既成読者の世代では、時代小説が花盛りだけれど、しょせんは平成の目で見たあのころが舞台のフィクションだ。それならいっそ途方もないオハナシをでっち上げてしまえと噓八百をならべたが、山田風太郎・光瀬龍・高橋克彦たち先輩作家が編み出したホラにくらべれば、可愛いものでしかないだろう。

 幼い日々を思い返せば、当時の大日本雄弁会講談社の少年講談シリーズが、ぼくの基礎的教養だったようで、その結果がこんな作品につながったと思えば、これも講談社文化の末流には違いない。クライマックスで武闘派のヒーローの名を列挙してみたが、真田十勇士、里見八犬伝の豪傑はソラで書けたものの、尼子十勇士となると三人しか思い出せなかった。我ながら衰えたものだが、完璧に名前と能力を記憶していたのはこれも講談社が版元の、吉川英治『神州天馬俠』のめんめんであった。伝奇小説の痛快さを刷りこまれたのはこの作品からであり、連載中断の悲哀を覚えたのも『天馬俠』(おなじ吉川作の『恋ぐるま』になると、さらにとんでもない瞬間に、中絶となる)であった。あまりに悲しいので、伏線を回収しながら百枚以上を書き足したのが、中学三年のときであった。シナリオはそれ以前から勉強していたが、小説を書いたのはこれがはじめてで、つまりぼくはこの種のごた混ぜ剣戟小説が好みであったに違いない。読者としては中断がトラウマになったため、ここ数年自分のシリーズに次から次へ幕を下ろしている(作者の自己満足ですね)。第一作『サハリン脱走列車』を講談社の宇山さんに拾われた鉄道冒険小説は、その後徳間書店に移って『義経号、北溟を疾る』を年内に脱稿、ピリオドを打つ。『EZO』にも出た斎藤一が、北海道はじめてのお召し列車を守護する鉄道推理ものだ。量子も虚数も出ませんから、安心して読んでください。

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