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『深紅の断片 警防課救命チーム』麻見和史
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あとがきのあとがき

『深紅の断片 警防課救命チーム』

『深紅の断片 警防課救命チーム』

麻見和史(あさみ かずし)

profile

1965年生まれ。『ヴェサリウスの柩』で鮎川哲也賞を受賞しデビュー。『石の繭 警視庁捜査一課十一係』が人気を集め、シリーズ化。『蟻の階段』『水晶の鼓動』『虚空の糸』『聖者の凶数』『女神の骨格』を刊行している。他の著書に『特捜7 銃弾』『警視庁文書捜査官』など。

 深夜、何者かが市民を襲う。大きな悲鳴。逃走する犯人。偶然通りかかった目撃者が、携帯電話で通報する

 ミステリー小説でよく描かれる、事件発生のシーンです。私も〈警視庁捜査一課十一係〉という警察小説シリーズでこうした場面を描いてきましたが、執筆中、ときどき頭に浮かぶ疑問がありました。

「負傷した被害者は、その後どうなったのだろう?」ということです。

 警察小説では事件の捜査が主眼となるため、鑑識作業や聞き込みが終わると、すぐにシーンが変わってしまいます。しかし実際の事件現場には、被害者に救命処置を施す人たち救急隊が存在します。小説では省略されがちですが、彼らはいち早く現場に駆けつけ、警察と協力しながら活動を行っているのです。

 普段、縁の下の力持ちとなっている救急隊にスポットライトを当てたら、どんな小説が出来るのだろう、と私は考えました。

 救急隊員は被害者の住所や氏名を確認し、負傷に至った経緯を聞き取ります。ある意味、初動捜査に参加しているとも言えます。しかも、彼らの仕事は人の命を救うこと。その活動には緊迫感があり、心を打つようなエピソードもあるはずです。過去、救急隊員を主人公とした小説があまり発表されていないこともあって、ぜひ書いてみたいと思うようになりました。

 調べていくうち、救急隊は三名で構成されていることがわかりました。この三人一組というのもまた、物語を作る上でとても良い条件でした。責任感の強い隊長・真田、血気盛んな若手隊員・工藤、丁寧な運転を心がけるベテラン機関員・木佐貫。主要メンバーはこの三人に決まりました。

 執筆中、ストーリー展開に迷うことはほとんどありませんでした。理由はふたつあったと思います。ひとつは、救急隊の三人が使命感を持って積極的に動いてくれたから。もうひとつは、すでに私が警察小説を書いていたので、救急隊と警察の連携を自然に描けたからです。救急隊だけを調べていても、警察のことを知らなければ執筆は難しかったでしょう。〈警視庁捜査一課十一係〉シリーズがあったからこそ『深紅の断片』が刊行できたのだと言えます。

 これまで〈警視庁捜査一課十一係〉シリーズを応援してきてくださった読者のみなさまには本当に感謝しています。今後の作品にも、どうぞご期待ください。

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