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『聖者の凶数 警視庁捜査一課十一係』 麻見和史|あとがきのあとがき|webメフィスト
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『聖者の凶数 警視庁捜査一課十一係』

麻見和史 (あさみかずし)

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1965年生まれ。2006年に『ヴェサリウスの柩』で第16回鮎川哲也賞を受賞し、デビュー。新人女性刑事が捜査一課の仲間と共に難事件に挑む警視庁捜 査一課十一係シリーズが、警察小説の新機軸に挑んだシリーズとして人気を集めている。他の著書に、『真夜中のタランテラ』(東京創元社)がある。今後のさ らなる活躍が期待されるミステリー界の気鋭。

 なんとか十二月に間に合わせたい!」そう心に決めて執筆したのが『聖者の凶数 警視庁捜査一課十一係』です。

 これまで、特定の季節や行事を意識して書いたことはなかったのですが、今回だけはクリスマスの時期を狙いたいと思いました。物語の中心となるアイデアが、その時期にこそ最大の効果を発揮するものだったからです。

 ミステリー作品を書くにはふたつのアプローチの仕方があると考えています。ひとつは、アイデアの種にさまざまな材料を付け加えていく塑像のような作り方。もうひとつは、強いアイデアを加工して形を整えていく彫刻のような作り方です。

 従来、私のやり方は材料を付け加えていく塑像スタイルでした。しかし今回のアイデアはとても大きく、力強いものです。この原石を磨いて宝石にするには、すべての作業を慎重に計算しなければなりませんでした。ストーリーに工夫を凝らすのはもちろんですが、「クリスマスの前に世に出す」ということも、アイデアを活かすために必要な要素でした。

 結果として、十二月に間に合ったのは本当に幸せなことだったと思います。

 さて、それがどんなアイデアかというのは書籍でご確認いただくとして、ここでは凶数に触れておきたいと思います。

 本作冒頭の事件は、遺体に《27》という凶数が記されていた、というものです。

 ご存じの方も多いと思いますが、凶数というのは姓名判断で使われる言葉です。流派によって多少違いはあるものの、一般に27は幸運にはつながらない画数とされています。主人公の如月塔子は占い好きだったため、この凶数に気づきます。

 作中ではさらりと書きましたが、じつはこの背景にはある偶然が働いていました。

 構想の段階で27を使うことは決めていたのですが、その時点で私はまだ、それが凶数であることを知りませんでした。遺体の描写をしてからこの数について調べ、そこで初めて知ったのです。つまり作者も塔子と同じように、現場の手がかりを分析して「凶数だ!」と気がついたわけです。

 この偶然によって、本書のタイトルは『聖者の凶数』に決まりました。何か運命のようなものを感じた出来事でした。

 これは数にこだわった、残酷で哀しい物語です。ぜひ、クリスマスの町並みを思い浮かべながらお読みください。


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