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『カマラとアマラの丘』 初野晴|あとがきのあとがき|webメフィスト
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あとがきのあとがき

『カマラとアマラの丘』

初野晴 (はつのせい)

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1973年静岡県生まれ。2002年『水の時計』で第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。他の著書に、『トワイライト・ミュージアム』、『千年ジュリエット』、『ノーマジーン』などがある。

 本格ミステリの面白さと幻想小説のエッセンスをミックスさせた連作集です。

 廃園になった遊園地には動物霊園の墓守をする青年・森野がいます。依頼者と動物の「絆」の正体が彼の口から明らかにされていくことで、一度読んだら忘れられない余韻を残す物語となるよう執筆しました。それが成功しているかどうかは、手に取ってくださった読者に判断していただければ幸いです。

 小説構造の特徴として、回想による場面転換は極めて少ないです。夜の遊園地で完結し、創造の世界をどこまで広げられるのかが本作におけるチャレンジでした。

 それでは、既読の方にも未読の方にも楽しめるよう各章の解説をします。

■カマラとアマラの丘
 表題作。ゴールデンレトリーバーの章です。この連作集は犬ではじまり、犬で終わります。セラピスト・金子リサの生き方を通して、「忠実さ」と「奉仕」が生む悲しさを描いています。

■ブクウスとツォノクワの丘
 ビッグフット(!)の章です。第二話でいきなり未確認生物が登場しますが、地に足の着いた短編となっています。夕鶴という名の臓器移植の研究に携わる女性は、人間はどんな手段を使っても生き延びなければならないと持論を展開します。それは十七世紀から科学者がとってきた「動物機械論」のスタンスになり、連作を通じたテーマとなっています。

■シレネッタの丘
 天才インコの章で、ミステリらしく刑事が登場します。この章は何を書いてもネタバレになるので豆知識を。本短編でオウムの知能に触れていますが、オウムは恨みを抱くことで有名で、オウムと仲良くしたかったら、爪やくちばしを切る役目を引き受けないこと。

■ヴァルキューリの丘
 クマネズミの章。私の某メーカーでの営業経験が活かされています。世の中は「想定の範囲内」で収まるほど甘くない。自分の考える事態より、どんどん最悪の事態に転がっていくこともあり得る。その究極形の物語。ラストに驚愕してください。

■星々の審判
 墓守・森野の正体にすこし触れ、わずかな光明を残す形で終了します。連作集に収められなかった「カラス」「猫」「サイクロプス」の物語はいずれ―。


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