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『カンナ 京都の霊前』 高田崇史|あとがきのあとがき|webメフィスト
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あとがきのあとがき

『カンナ 京都の霊前』

高田崇史 (たかだたかふみ)

profile

昭和33年東京都生まれ。明治薬科大学卒。『QED 百人一首の呪』(講談社ノベルス)で、第9回メフィスト賞を受賞しデビュー。代表作に「QED」シリーズ、「カンナ」シリーズなど。

『源氏物語』の「蛍」の巻で、作者の紫式部は光源氏に、「日本紀などは、ただかたそばぞかし。これらにこそ道々しくくはしきことはあらめ」(『新潮日本古典集成』)

 と言わせています。これはつまり、正史とされている『日本書紀』などは歴史の中の一部分に過ぎない、創作ものである物語の中にこそ、真実が書かれているのだという意味です。戦時中の大本営発表ではありませんが、中央政府から発せられる情報には、いつの時代も虚飾がまとわりついているのでしょう。だからこそ物語作者誰もが、それらの奥に隠されている真実を「物(鬼)の語り」というフィクションとして書き残してきたのだと思います。お能も歌舞伎も同様の手法を用いているところを見れば、おそらくそれこそが日本の「物語」の本質なのかも知れません。

 そんなことを思いながら「カンナ」シリーズ完結編『カンナ 京都の霊前』を書きました。『QED』と比べても荒唐無稽であり完全なるフィクションである分、むしろ『QED』よりも一歩深く踏み込んで書けた感じがしています。何をどう踏み込んでいるのかは本文でお確かめください。

 また、今回の作品中で、偽書といわれる『蘇我大臣馬子傳暦』の全貌が明らかになります。果たしてその内容は……ということで、こちらもお楽しみに。

 その『蘇我大臣馬子傳暦』の漢文創作は、元駿台予備校古文科専任講師(元祖マドンナ先生)高橋いづみさんにお願いしました。色々なお話も聞かせていただき、とても楽しい偽書作りでした。ここに(その共犯者である高橋さんに)謹んで感謝の意を表します。ありがとうございました。

 そして、ご存知のようにこのシリーズは、題名の一番下の文字を拾っていくと「臨兵闘者皆陣列在前」―「臨める兵、闘う者、皆、陣を列ねて前に在り」という「九字の呪文」が表れますが、その他にもやはり一〜三冊目の題名の一文字目を拾っていただくと「飛天吉」、そして七〜九冊目は「天出ずる京」となります。この場合の「京」は、いろは歌や双六での「終わり」という意味になります。頼まれもしないのにそんなことも試みてみました(本当にバカです)。

 ではみなさま、いずれまたどこかで新たな気持ちを持ってお目にかかれる日を、心から楽しみにしています。


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