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『アケローンの邪神 天青国方神伝』 高里椎奈|あとがきのあとがき|webメフィスト
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あとがきのあとがき

『アケローンの邪神
 天青国方神伝』

高里椎奈 (たかさとしいな)

profile

『銀の檻を溶かして』で第11回メフィスト賞を受賞しデビュー。「薬屋探偵」「フェンネル大陸」「ドルチェ・ヴィスタ」などの大人気シリーズを次々発表。

 ファンタジーが好きです。見た事のない魚、触れた事のない葉、食べた事のない果物に記憶にはない空の色。

 私達が住む地球の大きなエネルギー源は太陽から降り注ぐ光と生物の内なる生命力ですが、そうではない惑星が何処かにあるかもしれません。

 それは言い換えれば宇宙の別の星の様でもあります。先日も、工学部で機械の勉強をして来た割りに、どうしてSFを書かないの? と、友人に訊かれました。

 SFも大好きです。ロボット、いいですね。ひとつの作業に特化した工業用機械も美しいです。使ってみて初めて分かる、痒い所に手が届く繊細な仕様。部品で特に好きなのは歯車でしょうか。最新の知識と古くからの経験則を駆使したこだわりの仕上げ。きちんと噛み合い、尚且つ、滑らかに回転するように計算され、削られた尖端の微妙な角度、理論と技術に心が躍ります。

 閑話休題。

 先の質問の答えは単純明快でした。私の中では双方に明確な境目がないからです。

 ファンタジーとSFに限らず、ミステリも恋愛ものも現代ものも時代ものも、多分同じ抽斗に入っています。

 異世界、宇宙、過去、未来、どの世界にも定められた法則があって、自然界の理と人間界の理不尽があり、皆が感じて、考えて、生きています。

 どんな環境で暮らしていようと、異なる常識に従っていようと、人です。私達と同じ、この世界と同じ、誰かの日常です。

 少し遠くに住む友達に会いに行くようにこの天青国にも遊びに来て下さい。

 今作はシリーズ始まりの第一巻、序章になります。

 天青国に生まれ、城仕えの将来を朧に思い描く少年イオンが、国の英雄クロウリー将軍の目に留まった事から、叛逆の陰謀に巻き込まれてしまいます。

 イオンは国を護る事が出来るのか。叛逆の背後に蠢く悪意を退けるべく、その正体と伝説の邪神を探す旅が始まりました。

 これは私事ですが、天青国は南半球にある島国なので、よく東西南北を見失いそうになります。あと、南という文字に反して意外と寒いです。

 見た事のない魚、触れた事のない葉、食べた事のない果物に記憶にはない空の色。見慣れない景色の中を、主人公達と一緒に旅して頂けたら嬉しいです。



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