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『生霊の如き重るもの』 三津田信三|あとがきのあとがき|webメフィスト
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あとがきのあとがき

『生霊の如き重るもの』

三津田信三 (みつだしんぞう)

profile

奈良県出身。編集者を経て2001年デビュー。本格ミステリと怪異譚を融合させた「刀城言耶シリーズ」(講談社文庫など)が大ヒットしている。

 本書には、学生である刀城言耶君が関わった事件ばかりを集めてあります。どうして学生時代の彼の活躍を書く気になったのかというと、たまたま……です(笑)。

 切っかけは『新・本格推理特別編』(光文社文庫)の依頼でした。百枚の本格ミステリということで、何を書こうか随分と迷いました。そのうち締切が近づいてきて、困ったなと思っていたとき、ふと学生の言耶君が浮かんだのです。そこで番外篇のつもりで、「死霊の如き歩くもの」を書きました。学生の言耶君が登場するのは、本作のみのはずでした。

 ところが、長篇で『凶鳥の如き忌むもの』一作だけが講談社ノベルスだったため、愛読者の間から「単行本でそろえたい」という希望が出ました。そのため特装版(原書房)を刊行する運びとなったのですが、単にノベルスをハードカバーにしただけでは読者に申し訳ないと思い、書き下ろし短篇を入れようと考えました。そのとき、こちらも番外篇でいこうと思ったわけです。

 本来なら言耶君の学生時代の事件は、この二件で終わるはずだったのですが……。本誌での連作短篇の連載がはじまり、さらに彼が活躍することになりました。実は「屍蝋の如き滴るもの」を発表したあと、ある作家さんから「学生の刀城言耶シリーズのテーマは、足跡の謎ですね」と言われて、「へっ?」となりました。

 確かに「死霊」も「天魔の如き跳ぶもの」も「屍蝋」も、すべて不可思議な足跡の謎を扱っています。でも、決して意図的にそうしたわけではありません。たまたま……です(笑)。

 よし、それなら足跡の謎で統一だ??と意気込んだものの、僕の創作方法が「執筆しながら考える」というスタイルのため、最初から意識したのが失敗の元で、まったく筆が進みません。結局、テーマの統一は諦め、改めて一から執筆したのが表題作です。しかし、今度は書いても書いても終わらなくて往生しました。

 それから「顔無の如き攫うもの」を仕上げて、刀城言耶君の学生時代の事件簿として本書にまとめることができました。

 どうやら学生の言耶君は、他にも色々な事件に巻き込まれているようなので、機会がありましたら、また彼のお話をお届けできるかもしれません。そこには彼の悪名高き先輩、阿武隈川烏の姿(巨漢!)も、きっとあることでしょう。

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