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『縛り首の塔の館 シャルル・ベルトランの事件簿』 加賀美雅之|あとがきのあとがき|webメフィスト
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あとがきのあとがき

『縛り首の塔の館 シャルル・ベルトランの事件簿』

加賀美雅之 (かがみまさゆき)

profile

1959年、千葉県生まれ。『本格推理14』や「新・本格推理」シリーズなどで短編を発表後、2002年に『双月城の惨劇』(光文社) で長編デビュー。以来、重厚感ある本格ミステリを次々発表している。

 よく編集者や読者の方から、「何故お前は現代を舞台にしたミステリを書かないのか?」と尋ねられます。

 実際、2002年のデビュー以降に私が書いたものといえば、長編は1930年代を舞台にしたベルトラン判事シリーズのみ、短編も今回纏めたベルトラン判事を主人公にするものを除けば、アマチュア時代から書き続けているロシア革命を背景とした歴史ミステリを筆頭に、殆んどが過去を舞台にしたもので、現代を舞台にしたものは僅かに他の八人の作家たちと競作した『EDS 緊急推理解決院』(光文社)のみという有様です。

 クラシカルな本格ミステリは過去を舞台にするのが相応しい―と頑迷固陋に思い込んでいる訳では決してありません。にも拘わらず私が敢あえて過去を舞台にした本格ミステリに拘泥するのは、畢竟好みの問題なのでしょう。

 私が本格ミステリの面白さに開眼した当時、世の中は空前の横溝正史ブームに沸き立っていました。私も御多分に洩れずあの黒い背表紙の角川文庫を読み漁り、やがて横溝作品のあのおどろおどろしい雰囲気がアメリカの推理作家ジョン・ディクスン・カーの作風をそっくり日本に移植したものだということを知って今度は熱烈なカーの愛読者となり、それを足がかりにして1920年代から1930年代の探偵小説黄金時代の名作を次々に読破していったのです。長じて書く側に回った時、私がこの時代を舞台にしようと考えたのは極めて自然なことでした。

 かくして私の「メフィスト」初連載作品及び講談社ノベルス初登場作品は、些か非常識な位にレトロな探偵小説集になりました。どうか「古臭い」と敬遠せずにお手に取って戴き、古き良き時代の探偵小説の面白さを味わって下さい。

 ちなみに次回作『怨霊島(仮題)』は昭和三十年代を舞台にした私としては初めての和物ミステリで、風光明媚な瀬戸内海を舞台に横溝テイスト満載の内容になる予定です。太平洋戦争の惨禍の記憶が色濃く残る中にも高度経済成長の足音が迫っていた時代に、瀬戸内の孤島を牛耳る一族の間に起こった恐るべき連続殺人―。やがて物語は戦前に起きた凄惨な少女惨殺事件へと?がってゆきます。

 シャルル・ベルトラン判事に続く異色の名探偵・姫宮恭一郎の活躍をお楽しみに。



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