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『ひなあられ』 日日日|あとがきのあとがき|webメフィスト
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あとがきのあとがき

『ひなあられ』

日日日 (あきら)

profile

1986年生まれ。高校在学中に5つの賞を受賞しデビュー。2010年「ビスケット・フランケンシュタイン」(メガミ文庫)でSense of Gender賞大賞受賞。現在も精力的に執筆を続ける。

 少女小説が好きです。

 百合はちょっと苦手です。

 勝手な区分でいくと「少女小説」は女性的な、純粋な意味でのファンタジーであり、「百合」は男性的な、いわば「異世界」ファンタジーです。両者のちがいは、空想の量。あるいは著者の妄想の量。

「百合」は同性愛を、「少女小説」は同性での感情の揺らぎを描きます。見比べると、同性愛はやや一般に受けいれられにくい「設定」であり、その心理を描くとおおむねそちらの趣味がないものには「どうしてこうなるの?」「文化がちが〜う」となります。

 その齟齬を埋めるために「百合」は多くの文章を費やす必要があり、その「異世界」について読者に理解してもらうために紙幅を割かねばなりません。あるいは完全に理解を拒み、聖書みたいに清らかで難解なものになります。

 つまり押しつけがましく、そのくせ断絶があって、楽しくない。

 けれど「少女小説」は誰もが感じるちょっとした心の動きを、美文で、きれいな雰囲気で描くことに特化しています。そこには説教はなく、空気感があり、優しい奥行きがあります。僕はどうしようもなく男性ですが、そんな「少女小説」を愛し、そこに生きる美しすぎて、だからこそ壊れてしまいそうな少女たちを愛しました。

 思えば少女小説というものは、古くは「マリみて」から(*古くない)最近では吉屋信子さんなど(*最近復刊されてた)に連綿と受け継がれたり忘れられたりしつつも生き延びてきたジャンルであります。

 そこに新たな風を吹かせる、などというには力及びませんが、あくまで「ひなあられ」は日日日なりの「少女小説」なのです。

 なので本作の女の子たちはお年頃だというのにちっとも恋愛はせず、それどころか彼女たちの尊くてちっぽけな「日常」という名の箱庭には、いびつで不自然な人間関係しか存在しません。ある意味、現実と乖離したファンタジーな世界でうごめく少女という名の怪物たちを、そっと覗き見るような作品になったと思います。

「百合」のようには押しつけません。

 ただ感じてほしい。

 男性的で下品な意味でなく、僕の愛した少女たち―

 その日常と末路をあなたに。


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