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『燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿』 篠田真由美|あとがきのあとがき|webメフィスト
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あとがきのあとがき

『燔祭の丘 
建築探偵桜井京介の事件簿

篠田真由美 (しのだまゆみ)

profile

1953年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。‘92年『琥珀の城の殺人』でデビュー。著書に「建築探偵桜井京介の事件簿」シリーズ、「龍の黙示録」シリーズ、「北斗学園七不思議」シリーズほか、『アベラシオン』『螺鈿の小箱』『閉ざされて』『緑金書房午睡譚』など多数。

 建築探偵桜井京介の事件簿の、最初の一冊『未明の家』が刊行されたのが一九九四年の九月。他の著書はまだ二冊しかなく、作家専業となったのもその年の夏からだったので( 有体にいえばバイト先の社長と喧嘩して、なんの目算もないまま尻をまくったのだ)、これが第二の処女作のようなもの。以来十六年で十九冊。誇れるほどの数でもないが、よくもまあ途中でこけもせずに書き続けられたものだ、と自分でも半分呆れている。

 最終巻『燔祭の丘』を書き出すに当たって決まっていたのはひとつだけ、これは「建築探偵桜井京介という人間は何者なのか」という謎に答えるための一作だ、ということだった。なぜ彼は、日本における明治以降の西洋建築に興味を覚え、それを研究の対象に選んだのか。

 もちろんそういう設定を作ったのは自分がそれを好きだからだが、果たして京介は好きなんだろうか。いうまでもなく作者と主人公はイコールではないのだから、彼には彼の答えがあるかも知れない。そう思っていままで書いてきたシリーズを、付箋と抜き書きのレポート用紙を片手に読み返してみた。自分語りの少ない主人公だが、幸い『胡蝶の鏡』の冒頭には、彼が大学を出てからずっと書き継いできた論文の抜粋もある。その気で読み返してみれば、建築というテーマに絡めて真情の吐露めいたせりふも散見される。というわけで、なんとなく答えのある方向性みたいなものが見えてきたわけだ。

 ここまで読んで「こいつ、自分の書いたものになにを他人事みたいな」と、思われたかも知れない。しかしなにせ書いてから考える、が毎度の篠田だ(インタビュー参照)。伏線のつもりもなく書いた細部を拾い集めてみたら、自分でもほぼまったく意識していなかった構図が浮かび上がってきました。あらビックリ。

 メインのテーマだけでなく、重要なモチーフのひとつとなった珊瑚のロザリオ、なんてのも『月蝕の窓』にちらりと現れたきり忘れていたのを、某熱心な読者様からの指摘で思い出したもの。というわけで最終巻を読了されると、既刊本をひっくり返してあちこち再読したくなるはず。それが作者より読者諸姉諸兄に仕掛けたラスト・トリックです。どうかお暇のあるときに、ゆっくりお楽しみ下さい。


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