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『これはミステリではない』竹本健治
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あとがきのあとがき

これはミステリではない

『これはミステリではない』

竹本健治(たけもと けんじ)

profile

1954年兵庫県生まれ。大学在学中にデビュー作『はこの中の失楽』を探偵小説専門誌「幻影城」に連載し、1978年に刊行。日本のミステリ界に衝撃を与えた。以来、ミステリ、SF、ホラーと幅広く活躍。『涙香迷宮』で「このミステリーがすごい!」2017年版国内編第1位、第17回本格ミステリ大賞に輝く。

 All play and no work makes Jack a dull boy

 近著であるKADOKAWA刊の『狐火の辻』は、手法はやや異色ながらも、比較的オーソドックスで地味な作りで、そのぶんできるだけ丹念な仕上がりを目指した。それに対してこちらの『これはミステリではない』は、本格ミステリのゴリゴリの中核的形式である「犯人あて」をメイン・ガジェットに据えながらも、あえていえばミステリそのものに喧嘩けんかを売っているような(?)話になっている。そしてそういう種類のものに関して作者があれこれ述べること自体、野暮やぼ滑稽こっけいな所作でしかないだろう。

 ただ、この物語を書き進めながら、どうしてこうも性懲りもなく、こんなひねくれたものばかり書き続けているんだろうなと、我ながら困ったちゃんを眺めるような苦笑を浮かべざるを得なかったものだ。まあこればかりは持って生まれた性分だから仕方がない。これからも何かで根こそぎ性根が入れ替わらない限り、たびたびこの種のおかしなものを書き続けていくのだろう。いや、こういうものを今後も書かせてもらえるならの話だが。

 つけ加えるなら、この物語は汎虚学はんきょがく研究会のシリーズになっている。従って事前に講談社刊の『汎虚学研究会』を読んでおいて戴いたほうが、ベースとなる世界観にはいりこみやすいのは確かだと思う。

 ……ほかに言うべき言葉が思いつかない。

 いや、これはひとつ言っておくべきか。

 わざわざこんなものを読んでもらってゴメンナサイ。

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