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『ネタバレ厳禁症候群 〜So signs canʼt be missed!〜』柾木政宗
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あとがきのあとがき

ネタバレ厳禁症候群 〜So signs canʼt be missed!〜

『ネタバレ厳禁症候群 〜So signs canʼt be missed!〜』

柾木政宗(まさき まさむね)

profile

1981年、埼玉県生まれ。ワセダミステリクラブ出身。2017年、『NO推理、NO探偵?』で第53回メフィスト賞を受賞しデビュー。発売後、想像の斜め上行く仕掛けがミステリファンの間で大きな話題となる。著書に『朝比奈うさぎの謎解き錬愛術』がある。

 前作『NO推理、NO探偵?』がああいう形になったので、似たような方向性のトリックはないか。そう思い巡らせていたら浮かんできたのが、本作のメイントリックです。

「実は……こんなのがあるのですが……(↓「トリック」とか「仕掛け」とか呼ぶことさえはばかられ、「こんなの」とにごしている)」

 おそるおそる担当さんにお伝えしたところ、「すげー!」とまさかのリアクション。その時点ではプロットを考えておらず、トリックが成立するかもわかりませんでした。ですがその反応にいっちょやってやるかと燃え上がり、そして書き上げた今、トリックもきちんと成立させた気になっています。たぶんすべてが思い込みです。

 元々『ネタバレ厳禁症候群』は仮タイトルでしたが、結局そのまま採用となりました。「ネタバレ」と入っているため、題名だけで検索してもネタバレ感想がヒットします。まったく狙っていなかったのですが、題名とは逆にネタバレを厳禁していない仕様になりました。申し訳ないなと思ったものの、そもそもこれは、ネタバレを厳禁するほどのネタなのだろうか……

 トリックは使い方が重要とは言いますが、本作もあるトリックの使い方という点では、新しいというか珍しいのかなと思います。何だかすごい発明でもしたみたいですが、もちろんそうではなく、思い付いても馬鹿馬鹿しすぎて誰も書かないだけです。しかし開き直ってそこを逆手にとってこう言いましょう、前例も類似例もない前代未聞のトリックと。字面じづらだけはインパクトがあります。

 言われても「そんなつもりないのにな」とよく思うのですが、トリックの限界に挑戦したいという気持ちはあまりないです。既存のトリックをそのまま使ってはいけないという、至極当たり前のルールを守っているだけです。

 ですが、実力も恥じらいもないうえに貧乏性なので、立ち止まらずに突っ走ってしまうみたいです。おまけに自信もないので、何か思い付いても「このトリック、誰かがすでに考えているのでは?」とおそろしくなってしまいます。そして正解がわからないまま深みにはまっていき、そんな諸々もろもろが重なり続けて、最終的におかしなことになってしまうのでしょう。本当はクイーンみたいなのを書きたいのに……。泣けてきます。残念無念です。

 なぜか書きたい気持ちだけは消えず、しかしその気持ちだけで進められるわけでもなく、毎日「もうダメだ」の繰り返し。

 そんな執筆生活ですが、プロットにGOサインをもらったり、刊行が決まったり、カバー案をいただいたり(カバー案は複数出していただいていて、最終的に採用されなかったものもとても素敵なのです)、その時その時の沸き立つ思いを必死で次までつなぎとめて、まあやっています。「もうダメだ」心の中でこれを言っているのは、今のところオオカミ少年のようです。この先はどうなのでしょうか。

 というわけで、ふとひらめいた「こんなの」は、果たして「あり」なのか「なし」なのか。ぜひ未読の方は確認してみてください。今のところ断然「なし」派が優勢です。おそらく、この先もずっと。

 作者はこんな紹介のされ方をしている作品があったら、逆にワクワクして手に取り、大体は「あり」とジャッジするタイプです。きっとそんな作者だから生まれたのでしょう、『ネタバレ厳禁症候群』は。

 また、すでに手にとっていただいたすべての方には、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

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