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あとがきのあとがき

『キョウカンカク』

天祢 涼 (あまねりょう)

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『キョウカンカク』で第43回メフィスト賞を受賞しデビュー。現在、シリーズ二作目『月明かりの闇(仮)』を執筆中。

 初めまして。天祢涼です。

 『キョウカンカク』をメフィスト賞に投稿したのが二〇〇七年八月。それから二年以上、改稿を重ねてきました……などということが飽き性の私にできるはずもなく、思いついた側から書き上げた小説を投稿し続け、いわゆる「常連さん」として座談会を賑わせて(?)きました。

 その後、編集部と何度か(何度も)やりとりをした末、回り回って『キョウカンカク』でデビューさせていただくことに。

 メフィスト賞初投稿作であり、かつ、人生で初めて書き上げた長編ミステリでデビューできた自分は幸せ者だなあ、と、できあがった本を見てしみじみ思ってます。

 さて、本作には「共感覚」という知覚現象が登場します。これは一つの刺激に対し、本来反応する以外の感覚も附随して反応するというもの。具体的には、濃い味のものを食べると皮膚に尖りを感じたり、匂いを嗅ぐと音が聞こえたりします。希少ながらも、実在する感覚です。

 主人公は、音が見える共感覚者です。ただし、フィクションということで甘えさせていただき、現実の共感覚を一部、大幅に逸脱・脚色した共感覚者にしてます。

 オチを光らせるために頭を捻った結果、ああいう形になりました。

 要は『キョウカンカク』という話はオチを先に決めて、そこから逆算して設定を作っていったわけです。なので、「キャラクターがよく書けてる」と褒めていただくと、嬉しい半面、ちょっと当惑もします。そもそも主人公自体、自主的にボツにしたホラー小説のヒロインからスライド登板させたわけでして(ちなみにそっちでは、現行と違って単なるコギャルでした)。

 というわけで、ふざけた連中が登場している割に真面目なミステリ『キョウカンカク』、お楽しみいただければ幸いです。

 なお、投稿時の自分が知ったら卒倒しそうですが、ありがたいことに、この話は「美夜シリーズ」として二作目以降も書かせていただけることになりました。

 二作目『月明かりの闇(仮)』では、一作目の雰囲気を踏襲しつつも薄気味悪いものにして、早ければ夏前に刊行を……と思っていたのですが、前作では私の完全支配下にあった登場人物達(特に主人公)が勝手に動き出したため、現在、プロットを大幅に改変中。とにかく楽しんでいただけるミステリになるよう、がんばります。

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