「いきもの係シリーズで福家警部補シリーズとの『クロスオーバー』をやりたいんですよ」
半ば冗談のつもりで言った一言が、編集者の尽力であれよあれよと言う間に現実となる……。
『アロワナを愛した容疑者』は私にとって、特別な作品となった。
クロスオーバーというのは、海外ドラマなどでもよく使われる手法で、二つの違う作品が文字通り交錯し、一つの物語を紡いでいくことを言う。「刑事ドラマA」という番組の主人公がまったく別番組の「刑事ドラマB」にゲスト出演し、両者が協力して事件解決に当たる――いわゆる「夢の共演」ものとでも言えば良いか。
また場合によっては、刑事ドラマAが前編、刑事ドラマBが後編という、番組をまたいで一つの事件が解決する試みもなされているし、最近では三つ、四つの番組の主人公が一堂に会したりといった作品も制作されている。クロスオーバーもより大掛かりに進化しつつあるのだ。
子供のころ、映画館で『マジンガーZ対デビルマン』や『グレートマジンガー対ゲッターロボ』などに熱狂した影響もあり、私は夢の共演に強い憧れを持っている。であるから、自身のキャラクターを共演させることは、一つの夢でもあり目標でもあった。
実は、最初から狙っていたわけではないのだが、いきもの係シリーズと福家警部補シリーズは、同じ世界、同じ時間軸の物語として書いてきた。そうと判る記述を紛れこませたものも何作かある。勘の良い読者の方は、既にお気づきのようであるが……。
いきもの係シリーズも今回で五作目。そろそろ、長年の夢であった福家警部補との共演を実現させてもいいのではないか。そんなことを思い、打ち合わせの席上で口にしたのが、冒頭の一言である。共演といっても、ただ一緒にだすだけではつまらない。物語は前後編として、いきもの係が前編、福家警部補が後編を担当、さらに掲載に当たっては、いきもの係はいつもの「メフィスト」(講談社)に、福家警部補は「ミステリーズ!」(東京創元社)に掲載と、出版社をまたいでの前後編としたい。
無論、実現できるなんて、これっぽっちも考えていなかった。「それはちょっと……」とやんわり断られると思っていたのだが、担当編集者ははたと膝を打って「面白そうだからやりましょう」と走りだしたのである。東京創元社の福家担当者に連絡を取り、クロスオーバーの件をもちかける。創元社の担当者も快諾してくれて、あっという間に執筆のゴーサインが出た。
実のところ、クロスオーバーをやりたいなんて言ったものの、内容についてはまったく考えていなかった。だって、まさか本当にやれるなんて思っていなかったんだもの……。
まあ、そんなこんなもあって、出来上がったのが表題作「アロワナを愛した容疑者」である。ちなみにこのエピソードは、福家警部補シリーズの「鬼畜の檻」に続いている。
さて、作者の無茶ぶり全開のクロスオーバーに尽力してくれた担当編集者さんも、今年の異動で別部署に行ってしまわれた。
「いきもの係、初の海外編をやりましょう!」
という無理難題を残して。
そんな担当さんの置き土産(?)とも言うべきいきもの係の最新作「ゾウを愛した容疑者」も既に連載が始まっている。この作品を書くため、私はとある国まで取材旅行に出向き、死にそうな目に遭ってきた。それはまた、別のお話。
- 『これはミステリではない』 竹本健治
- 『法廷遊戯』 五十嵐律人
- 『詐欺師は天使の顔をして』 斜線堂有紀
- 『希望と殺意はレールに乗って アメかぶ探偵の事件簿』 山本巧次
- 『#柚莉愛とかくれんぼ』 真下みこと
- 『ミッドナイツ』 山口雅也
- 『ネタバレ厳禁症候群 〜So signs canʼt be missed!〜』 柾木政宗
- 『絞首商會』 夕木春央
- 『創竜伝14〈月への門〉』 田中芳樹
- 『家族パズル』 黒田研二
- 『アロワナを愛した容疑者 警視庁いきもの係』 大倉崇裕
- 『貌のない貌 梓凪子の捜査報告書』 松嶋智左
- 『友達未遂』 宮西真冬
- 『線は、僕を描く』 砥上裕將
- 『千年図書館』 北山猛邦
- 『うつくしい繭』 櫻木みわ
- 『奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!』 加藤元浩
- 『試験に出ないQED異聞 高田崇史短編集』 高田崇史
- 『暗殺日和はタロットで』 古川春秋
- 『オホーツク流氷殺人事件』 葵 瞬一郎
- 『レベル95少女の試練と挫折』 汀こるもの
- 『異セカイ系』 名倉 編
- 『体育会系探偵部タイタン!』 清水晴木
- 『清らかな、世界の果てで』 北里紗月
- 『人間に向いてない』 黒澤いづみ
- 『閻魔堂沙羅の推理奇譚』 木元哉多
- 『コンビニなしでは生きられない』 秋保水菓
- 『毎年、記憶を失う彼女の救いかた』 望月拓海
- 『緋紗子さんには、9つの秘密がある』 清水晴木
- 『ギキョウダイ』 嶋戸悠祐
- 『禁じられたジュリエット』 古野まほろ
- 『双蛇密室』 早坂 吝
- 『神の時空 ―京の天命―』 高田崇史
- 『溝猫長屋 祠之怪』 輪渡颯介
- 『もう一つの「バルス」―宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代―』 木原浩勝
- 『未来S高校航時部レポート 新撰組EZOで戦う!』 辻 真先
- 『水の都 黄金の国』 三木笙子
- 『ホームズ四世』 新堂冬樹
- 『倒叙の四季 破られたトリック』 深水黎一郎
- 『誰も僕を裁けない』 早坂吝
- 『ペンギンを愛した容疑者 警視庁総務部動植物管理係』 大倉崇裕
- 『幸腹な百貨店』 秋川滝美
- 『その可能性はすでに考えた』 井上真偽
- 『たとえ、世界に背いても』 神谷一心
- 『深紅の断片 警防課救命チーム』 麻見和史
- 『怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関』 法月綸太郎
- 『黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子』 二上 剛
- 『かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。』 最果タヒ
- 『パリ症候群 愛と殺人のレシピ』 岸田るり子
- 『無貌伝 ~奪われた顔~』『無貌伝 ~最後の物語~』 望月守宮
- 『純喫茶「一服堂」の四季』 東川篤哉
- 『都知事探偵・漆原翔太郎セシューズ・ハイ』 天祢涼
- 『蜂に魅かれた容疑者』 大倉崇裕
- 『五覚堂の殺人』 周木律
- 『未来S高校航時部レポート TERA小屋探偵団』 辻 真先
- 『渦巻く回廊の鎮魂曲(レクイエム) 霊媒探偵アーネスト』 風森章羽
- 『さいとう市立さいとう高校野球部 甲子園でエースしちゃいました』
あさのあつこ - 『鬼神伝 龍の巻』 高田崇史
- 『ただし少女はレベル99』 汀こるもの
- 『神の時空 ―鎌倉の地龍―』 高田崇史
- 『双孔堂の殺人 ~Double Torus~』 周木 律
- 『月と太陽』 瀬名秀明
- 『さくらゆき 桜井京介returns』 篠田真由美
- 『聖者の凶数 警視庁捜査一課十一係』 麻見和史
- 『硝子の探偵と消えた白バイ』 小島正樹
- 『美都(みと)で恋めぐり』 北 夏輝
- 『水晶の鼓動 警視庁捜査一課十一係』 麻見和史
- 『狼と兎のゲーム』 我孫子武丸
- 『綾辻行人殺人事件 主たちの館』 天祢涼
- 『404 Not Found』 法条 遥
- 『蔵盗み 古道具屋 皆塵堂』 輪渡颯介
- 『猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条』 北山猛邦
- 『セシューズ・ハイ 議員探偵・漆原翔太郎』 天祢涼
- 『プライベートフィクション』 真梨幸子
- 『カマラとアマラの丘』 初野晴
- 『増加博士の事件簿』 二階堂黎人
- 『戦車のような彼女たち』 上遠野浩平
- 『カンナ 京都の霊前』 高田崇史
- 『魔境の女王陛下 薬師寺涼子の怪奇事件簿』 田中芳樹
- 『猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数』 北山猛邦
- 『天山の巫女ソニン2 海の孔雀』 菅野雪虫
- 『さよならファントム』 黒田研二
- 『アケローンの邪神 天青国方神伝』 高里椎奈
- 『覇王の死 二階堂蘭子の帰還』 二階堂黎人
- 『空を飛ぶための三つの動機THANATOS』 汀こるもの
- 『QED 伊勢の曙光』 高田崇史
- 『闇の喇叭&真夜中の探偵』 有栖川有栖
- 『バミューダ海域の摩天楼』 柄刀一
- 『虚構推理 鋼人七瀬』 城平京
- 『メルカトルかく語りき』 麻耶雄嵩
- 『生霊の如き重るもの』 三津田信三
- 『古道具屋 皆塵堂』 輪渡颯介
- 『縛り首の塔の館 シャルル・ベルトランの事件簿』 加賀美雅之
- 『シンフォニック・ロスト』 千澤のり子
- 『ハウンド 闇の追跡者』 草下シンヤ
- 『聖地巡礼』 真梨幸子
- 『夜の欧羅巴』 井上雅彦
- 『眠り姫とバンパイア』 我孫子武丸
- 『ひなあられ』 日日日
- 『燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿』 篠田真由美
- 『小鳥を愛した 容疑者』 大倉崇裕
- 『琅邪の鬼』 丸山天寿
- 『薔薇を拒む』 近藤史恵
- 『光待つ場所へ』 辻村深月
- 『星々の夜明け フェンネル大陸 真勇伝』 高里椎奈
- 『幻人ダンテ』 三田 誠
- 『キョウカンカク』 天祢 涼
- 『プールの底に眠る』 白河三兎
- 『幻獣坐』 三雲岳斗
- 『妖精島の殺人 上・下』 山口芳宏
- 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』 辻村深月
- 『奇蹟審問官アーサー 死蝶天国』 柄刀一
- 『残酷号事件 the cruel tale of ZANKOKU-GO』 上遠野浩平
- 『萩原重化学工業連続殺人事件』 浦賀和宏
- 『トワイライト・ミュージアム』 初野晴
- 『完全版 地獄堂霊界通信(1)』 香月日輪
- 『無貌伝~双児の子ら~』 望月守宮







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