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『奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!』加藤元浩
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あとがきのあとがき

奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!

『奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!』

加藤元浩(かとう もとひろ)

profile

1997年から「マガジンGREAT」で『Q.E.D.―証明終了―』を、並行して2005年から「月刊少年マガジン」で『C.M.B. 森羅博物館の事件目録』を連載。2015年4月発売「マガジンR」1号より『Q.E.D.iff―証明終了―』連載開始。2009年、第33回講談社漫画賞少年部門を受賞。

 もう二十年以上、漫画を描き続けている。

 案を出し、プロットを文章にし、それを元に漫画の設計図になるネームを描く。これに編集からのOKをもらうと、原稿用紙に絵を描く作業に入る。この頃にはアシスタントの子達が背景や仕上げ作業を手伝いに来てくれる。さぁ、地道な作業の始まりだ。毎朝仕事場に入るとその日飲む分のコーヒーを煎れ、お茶を沸かし、ラジオを聞きながら作画作業。お昼は奥さんの作ってくれたお弁当を食べる。夕飯はうちに帰り、皆が帰った後も作業は続く。

 目が覚めたら妖精が漫画を仕上げてくれていることも、お地蔵さんが完成原稿を運んできてくれることもない、変わらない毎日が続く。

 年に六冊の漫画単行本を出すのが、変わらぬ自分のペースとなっていた。

 ところが五年ほど前からここに、小説を書く作業が加わった。大変な変化である。

 誰に頼まれたわけでもなく、書きたくなったから書き始めたわけで、これ以上自業自得、自縄自縛……いや、自爆と言えることはない。

 幸運なことは自爆の結果、作品が本となり発表することができたことである。

 『捕まえたもん勝ち! 七夕菊乃の捜査報告書』初めて書いた小説である。

 さて、この小説を書くことを続けることになった。

 冬物でギチギチにあふれかえる押し入れの中に、衝動買いして使わなくなったランニングマシーンをしまい込むくらい無茶なスケジュールが始まった。

 少なかった休みがさらに消えてしまい、年間三十本は見に行くように心がけていた映画館にパッタリと行けなくなってしまった。テレビでせっせと補うのだけれど、なんだか悲しくなることもあった。

 でも、小説は完成させたかった。

 そこにはある目標というか、試してみたいことがあった。

 年間七冊の本を出し続けたら、創作の発見があるんじゃないかと思ったのだ。嵐の中で険しい崖をよじ登り、困難を乗り越えれば、急に風がやみ、光り輝く草原が現れて、想像もできないような地平線を見ることができるんじゃないかと。

 まぁ、そんなものなかったんですけど。

 強いて言えば創作活動でぶつかる大きな難問は、大抵ジョギングが解決してくれるということくらいでした。

 肩こりや腰痛、ストレス、睡眠不足は走ることで片がつく。

 魔法使いが現れたときに「背を高くしてください」と頼んだら、脚立を出されたようなつまらない答えが出た気がします。

 ともかく、シリーズ三作目『奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!』を完成させることができました。キックとアンコウの更なる冒険を、楽しんでいただければ幸いです。

 ああ。でも最後に、これだけは言えるかもしれません。

 文章を書くのは、面白い。

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