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『暗殺日和はタロットで』古川春秋
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あとがきのあとがき

暗殺日和はタロットで

『暗殺日和はタロットで』

古川春秋(ふるかわ しゅんじゅう)

profile

1977年、熊本県生まれ。2012年『ホテルブラジル』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。著書に『エンドロール』、『二十八日のヘウレーカ! または教育実習生加賀谷貴志は如何にして心配するのを止めて教職を愛するようになったか』、『BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係』(原案/金城一紀)などがある。

 十数年前、仕事でメールマガジンのコンテンツを制作していました。当時は今ほどネット環境も良くなく、またウェブメディアの数も少なかったので、手軽に受け取れるHTMLマガジンの需要がかなりありました。それこそ、一度に百万通単位での配信を行い、広告主からのヒキも上々でした。高級車を販売するメルマガを配信していたこともあります。

 そのメルマガの当時の企画で「風変わりな喫茶店」を取材するというものがあり、「手品」を見せてくれる喫茶店、「占い」をしてくれる喫茶店、そして「古き良き」喫茶店の話を聞き、やっぱり普通の喫茶店が一番落ち着くよね、というオチのコンテンツを作りました。そりゃそうだと、当時も今でもそう思います。まあ、若気の至りということでそれはさておき、その「占い喫茶」で、取材とは別で個人的に占ってもらいました。

「今、付き合ってる人がいますよね」と占い師兼マスター。

「え、あ、はい。どう、ですかね?」と私。

「そうね、今すぐ別れた方がいいよ」と占い師兼マスター。

 確かに、当時付き合っていた彼女とは馬が合わないところがありました。

 それから数年後、同僚の結婚式で著名な占い師さんと知り合い、ダメ元で占いをお願いしたところ快く引き受けてくださり、その場で本格的に占ってもらいました。メディアでよくお見かけする、著名な占い師さんです。とはいえ、話半分で聞いていたのですが、
「古川さん、あそこにホクロありますよね」
と言われ、トイレで確認すると見事に的中、それから、その占い師さんの書籍を購入するくらいまでには信じました。

 その数ヵ月後、「小説現代」にて、この『暗殺日和はタロットで』の前身となる短編「射手座の与一の星と恋」を書かせていただきました。占いを盲信する殺し屋の話です。その後、その短編を元に長編を、という話になったのですが、それからが苦労の連続でした。プロットを何度も練り直し、いざ執筆に取り掛かっても何度も構成を変更し、ようやくしっくり来るようになるまで、およそ二年かかりました。正直、「これはもう完成無理だな」と、何度思ったことか! こうして無事に読者の皆様の元に届けることができ、感無量です。当初のプロットからは大幅に設定など変わりましたが、大変面白い作品が出来上がったなと自負しております。

 登場人物は前出の孤独な殺し屋・与一と、事故で生死の境を彷徨った悲運のピアニスト・星子真琴。与一は真琴を占い、彼女に降りかかる災難を予言する。「オーディションを受ければ死ぬ」と。必ず当たる与一の占いを前に、真琴が取った行動は――。

 いい感じでどんでん返しが仕込めたので、どうかよろしくお願いします。

 あ、そうそう。その占い喫茶のマスターに「別れた方がいい」と言われた彼女とのその後ですが……。

 占い無視して、結婚しました。

 子供は小学生になり、今では、そこそこ、幸せな家庭を築けていると思います。

 まあ、そんな作品です。

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