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あとがきのあとがき

『妖精島の殺人 上・下』

山口芳宏 (やまぐちよしひろ)

profile

1973年、三重県四日市市生まれ。'07年、『雲上都市の大冒険』で第17回鮎川哲也賞を受賞してデビュー。著書に『豪華客船エリス号の大冒険』がある。

 『妖精島の殺人』執筆中に考えたのは「とにかく枚数は気にせず、自分の好きなモノを全部書こう」ということでした。ラーメンでいう「トッピング全部のせ」です。

 それで結局どうなったかというと――第一章が『パノラマ島奇談』ばりの冒険小説、第二章が古式ゆかしい捜査小説、第三章〜第五章が古典的な館モノ探偵小説――と、てんこ盛りの小説になってしまいました(笑)。つまり三種類の小説が入っていたわけで――どう見ても盛り込み過ぎですね。

 しかしそのせいか、評判もバリエーション豊かでした。「第一章が好み」という人もいれば、「第二章の三人のやり取りがいい」という人、「第三章以降のトリックや盛り上がりがいい」という人――様々です。

 もちろん逆もあって、「第一章はよかったのに、他は残念」という人もいれば、「下巻はいいのに上巻がダルい」という人も――。「人の好みはそれぞれなんだな」ということを痛感した次第です。

 でもおおむね好評だったので、未読の方はぜひ手にとってくださいね! プロの評論家や作家を含めて「いままでで一番おもしろかった」と言ってくださった方が多数です!(ぼくの周りの方々は優しいので)

 それはともかく、少々残念だったのは、主人公の探偵(『〜の大冒険』シリーズの義手探偵の孫)の評判をあまり聞けなかったことでしょうか。ぼく自身は個性的と思っていたのに――しかしこれも考えてみれば当然です。だって、「著者のことば」にも書いたように、祖父の義手探偵のほうが後に生まれたキャラクタでして、そっちは「孫よりも個性的でぶっ飛んだやつにしよう!」と設定したのですから……(笑)。

 しかしご安心ください。次の『学園島の殺人』(2010年2月に発売予定)で孫の真野原は、祖父以上に、縦横無尽に暴れ回ります。欧州の小国から王女様が来日して、探偵が、島に伝わる「再生の書」の謎や、夜な夜な生首を持ち歩く「黒いサンタクロース」の謎を解き明かします。『北斗の拳』のジャギが重要な鍵を握っていて、主題歌の歌詞使用を問い合わせ中です。もちろんスケールの大きな(無茶な)物理トリックも! てんこ盛りで、まったく懲りてません!(また長くなったので、編集さんには渋い顔をされましたが)

 あれっ、宣伝になってしまいましたが、同じ講談社ノベルスだからいいですよね。

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