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『無貌伝〜双児の子ら〜』望月守宮|あとがきのあとがき|webメフィスト
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あとがきのあとがき

『無貌伝〜双児の子ら〜』

望月守宮 (もちづきやもり)

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‘09年、『無貌伝〜双児の子ら〜』で第40回メフィスト賞を受賞しデビュー。現在、シリーズ第二作を執筆中。

 守宮はヤモリと読みます。はじめまして。望月守宮です。家族や友人にこのペンネームを告げると、皆から「変な名前だな」と言われます。私もそう思います。「なんでそんな名前に?」とも聞かれます。私にもわかりません。本名をいじったり色々しているうちにこうなりました。

 今回は『無貌伝〜双児の子ら〜』のあとがきのあとがきということなので、軽く過去を振り返ってみたいと思います。そもそもこの話を書いた動機ですが、簡単に言うなら、ミステリ作家ごっこがしてみたかったからです。乱歩が描き、その後様々な形で描かれてきた探偵と怪人の対決や、横溝を代表とする多くの作家が手がけてきた、旧家における愛憎を軸とした殺人事件。そうしたものを好んで読むうち、「こういう話を書くのはさぞ面白かろう」と、そう思ったのがきっかけです。

 だからこの物語は雑多なガジェットで満ちています。他人の顔を奪うことのできる怪盗、怪盗に顔を奪われた仮面の探偵、生意気な助手、旧家における相続争い、なぜか人前に姿を現さない当主、双子の続く一族、瓜二つの美少女、包帯で顔を隠した軍服の男、そして連続殺人、などなど。

 また、この無貌伝シリーズの特徴として「ヒトデナシ」と呼ばれる精霊めいたものの存在が挙げられます。要は非現実的トリックや私の空想妄想を作中に持ち込むための小道具です。ヒトデナシはそれぞれ固有の能力を持っているため、ヒトデナシの憑いた人間は特殊な力を使うことができるようになり、ヒトデナシの憑いた建物や物は特殊な性質を帯びた舞台やアイテムと化します。

 例を挙げると、現在執筆中の二作目には「夢と光景のヒトデナシ、明海」が登場します。このヒトデナシはホテルに憑いていて、「ホテルの夢見る世界」を顕現させる力を持っています。そして一年のうち限られた期間だけ、ホテルの客はその夢の世界へと誘い込まれ、探偵たちも奇妙な事件に巻き込まれることになります。

 ミステリ作家ごっこはまだ続いているので、この二作目は一作目とはまた少し異なるジャンルのものとなることでしょう。ホテルの様々な人物を主人公として、各パートでそれぞれ事件が起こり、同時並行で進んでいくという形をとる予定です。それらの事件が最後にどうなるかは、見てのお楽しみということで。

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