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『オホーツク流氷殺人事件』葵 瞬一郎
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オホーツク流氷殺人事件折

『オホーツク流氷殺人事件』

葵 瞬一郎(あおい しゅんいちろう)

profile

東京都文京区生まれ。2017年、『東海道新幹線殺人事件』でデビュー。

はじめまして、『東海道新幹線殺人事件』でデビューした葵瞬一郎と申します。今回、二作目の『オホーツク流氷殺人事件』を上梓することができました。読者の皆さま、本当にありがとうございます。

「鉄道ミステリ」は、日本の誇る文化だと思います。少し考えただけでも(以下、敬称略で失礼します)鮎川哲也『黒いトランク』、高木彬光『人形はなぜ殺される』、夏樹静子「特急夕月」、辻真先『ローカル線に紅い血が散る』、森村誠一『新幹線殺人事件』、赤川次郎「幽霊列車」、西村京太郎『終着駅殺人事件』、島田荘司『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』……などなど、文字数が限られていなければ朝まで語れるほどの百花繚乱ぶりです。

 若い読者の方々には、あまり「鉄道ミステリ」は読まれていないかもしれませんが、ここで挙げたものは本格ミステリの範疇に入るものばかりですし、びっくりするほどの大トリックが炸裂するものもあります。「鉄道ミステリ」、面白いですよ。

 さて、わたしはこれらの「鉄道ミステリ」を、通学や通勤の電車内で来る日も来る日も読んできました。わたしにとって「鉄道ミステリ」は、疲れ切った日常に彩りを与えてくれる相棒なのです。

 葵瞬一郎のミステリは、そんな相棒たちに宛てたお礼代わりのラブレターです。

 『東海道新幹線殺人事件』では、上りと下りの東海道新幹線がすれ違うときに、それぞれの車内で頭部を切断された死体が見つかるのですが、その死体の頭部がすげ替えられている、という謎が出てきます。『オホーツク流氷殺人事件』では、オホーツク海の流氷から美女の絞殺死体が見つかるという謎。路線は言えませんが、もちろん鉄道も重要な場面で絡んできます。

 これらの謎を、名探偵・朝倉聡太はどう解くのか。ぜひお読みいただき、朝倉の推理におつきあいください。

 わたしは今でも通勤電車に揺られながら、毎日ミステリ小説を読んでいます。

 でも、最近思うんです。「車内で読書している人が減ったなあ……」と。昔は、ほとんどの乗客が本や新聞を読んでいました。でもここ数年来、スマホ率がすこぶる高い。

 これはいかんぞ、と思う。なんとかして電車内の読書人口を増やしたい。電車で本を読む人が増えれば、本ももっと売れるようになるんじゃないかなあ。

 わたしは、駅のホームや電車内に、読書の風景を取り戻したいのです。そのためにまた「鉄道ミステリ」を書く。

 それが、今までわたしを楽しませてくれた「鉄道ミステリ」への恩返しだと思っています。

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