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『その可能性はすでに考えた』井上真偽
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あとがきのあとがき

『その可能性はすでに考えた』

『その可能性はすでに考えた』

井上真偽(いのうえ まぎ)

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東京大学卒業。神奈川県出身。『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞。本作が2作目となる。

【メイキング・オブ・そのかの】

昨秋某日。メフィスト編集部内の会議室(『化物語』グッズがある)に、それほど激しくもない火花が散っていた。
作家「二作目は普通の多重解決物を書こうと思うのですが……」
編集「駄目です」
作家「では普通の叙述を……」
編集「あきません」
作家「ではいっそミステリはやめて……」
編集「井上さん。逃げてはいけません。世間の風当たりにめげてはいけません。ここは退かずに攻めましょう。あなたなら書けます。普通じゃないスゴイやつ書けます」

 ……のような担当編集氏の声に導かれて、ようやく完成したのが本作です。

 けれどおかげさまで、出版後は期待以上の反響を頂くことができました。特に驚きだったのは帯の推薦文で、最初麻耶雄嵩先生の御名を見ただけでも「アイエエエエ!」でしたのに、重版帯では恩田陸先生まであって「オンダ=サン!? オンダ=サンナンデ!?」という気分です。

 少々気が昂ぶりまして乱文すみません。

 麻耶先生、恩田先生、誠にありがとうございます! 未だ夢心地です。また他にも多くの方々から望外の賛辞を頂き、戸惑いと感謝の念で一杯です。そして自分以上に自分の力を信じ待っててくれた担当編集氏に、満腔の謝意を!

 少し作品の説明をします。あらすじからも明らかな通り、本作のミステリ的テーマは「否定」です。そこで設けた一つの縛りは「仮説を後出しの証拠で否定しない」でした。事件だけでなく、「いかに仮説を否定するか」の部分でもパズラー的な妙味を出したかったのです。

 その縛りの下で最後の趣向を成立させるのに、地獄を見ました──が、まあそのへんの裏事情や苦労話はさておき、読者の皆様には好きに自由に読んで愉しんでもらえればと思います。

 ちなみに現在、本作続編を執筆中です。正直このテーマは今回使い尽くしたつもりですが、今度はそのダシガラで何ができるかに挑戦してみます。もっともできあがるのはただの壁投げ本かもしれませんが……逃げずに攻めます。

 かように今後もミステリの新たな形を模索していく所存ですので、何卒宜しくお願いします!(普通の小説の書きたさもありますが)

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