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『ハウンド 闇の追跡者』 草下シンヤ|あとがきのあとがき|webメフィスト
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『ハウンド 闇の追跡者』

草下シンヤ (くさかしんや)

profile

78年、静岡県出身。作家。豊富なアンダーグラウンド取材をもとに、ベストセラー『裏のハローワーク』『実録ドラッグ・リポート』などを発表。

 本作の主人公は、警察もヤクザもお手上げの逃亡犯を捕まえるプロの追跡屋である。裏社会が重要な舞台になるため、執筆用の取材も“その筋”の人間に行うことになる。

 私はネタもとの1人であるK君(29歳・チンピラ)に話を聞いた。ヤクザ組織が逃亡者を捜す手法についてである。

 K君はかつて覚せい剤の売人をしていたが、覚醒剤所持で逮捕され、現在は執行猶予中の身だ。もう薬物は触っていないと言うが、落ち窪んだ眼窩を見ると「お前、嘘がヘタだよな」と突っ込みたくなる。

 追跡方法を聞くと、覚せい剤の抜け際なのかK君はくたびれきった様子で答える。

「系列の組に手配書ファックスして……、あとは、水商売とかパチ屋のボーイにも手配書を送るかな」

 私も以前「人探し 報奨金30万円」という手配書メールを受け取ったことがある。店の売上を持ち逃げした裏スロ屋の店員を捕まえてほしいという内容だった。丁寧にもメールには添付ファイルでむくんだブサイクな男の顔写真が貼り付けてあった。

 1ヵ月ほどして、メールの送り主に確認すると、店員は捕まったということだった。案の定、地方のパチンコ店にいるところを捕獲されていた。水商売の人間は、やはり水商売の店に面接に行って捕まるか、パチンコ店で捕まるかのどちらかである。

 次にどんな人間を追いかけるのか聞いた。

「組の金持ち逃げしたやつと豆泥棒(※兄貴分や親分の女を寝取ること)ぐらいだよ」

 昔は不義理をして組を抜けた組員も追いかけていたが、最近は逮捕のリスクを恐れ、そこまではしていない。だが、組の金や上の人間の女に手をつけた者は別だ。捕まれば悲劇的な状況に見舞われる。

 取材中、K君の携帯電話が鳴った。K君は緊張した面持ちで会話をし、電話を切ると、「行かなくちゃならなくなったから、またな」と言って立ち去っていった。

 その後、K君と連絡がつかなくなった。携帯電話は番号が変更されている。

 裏社会で煙のように人がいなくなるのはよくあることだ。だが、K君とは数年の付き合いということもあり、行方が気になる。

 本作の主人公は追跡のプロ。どんな人間でも鮮やかに捕まえるという触れ込みだ。私もできることならK君の行方探しを頼みたい。


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