おかげさまで昨年、作家デビュー二十年目を迎えることとなりました。まさかこんなに長く書き続けられようとは「メフィスト賞」受賞当時、誰もが想像できなかったでしょう。何しろ本人が全く想像すらしていなかったのですから……。
今年の正月、二十周年記念の短編集『試験に出ないQED異聞 高田崇史短編集』を上梓させていただきました。過去の「QEDシリーズ」から二編、「千波くんシリーズ」から二編、その他の懐かしい作品を二編。この短編集のための書き下ろしで『QED』の桑原崇と『古事記異聞』の橘樹雅が絡む中編『木曾殿最期』という構成です。
それぞれの内容や創作裏話に関しては、巻末「自作解説風エッセイ」に詳しく書いてありますが、書き下ろしの『木曾殿最期』に関してだけ言えば、あの松尾芭蕉が自らの最期に臨んで、
「骸は木曾塚に送るべし」
と遺言し、今も義仲の隣に眠っているのですが、では、どうして俳聖・芭蕉ほどの人間が「無教養で乱暴者」という評価が一般的に定着している義仲に、そこまで愛情を抱いたのか? もしかするとそこには、歴史の表からでは見えない何かがあったのでは――という謎がメインになっています。
また、この「自作解説風エッセイ」が、思い切りネタバレしているため「袋とじ」という、昔懐かしい装丁になっています。ひょっとすると「装丁ミス?」と思ってしまう若い方もいらっしゃるかも知れませんが、ぜひ自力でカットして開けてお読みください。
思えば、書き下ろしは講談社だけで五十六作。他社も入れれば、二十年で六十作を超えました。日本の歴史や風俗・習慣の重箱の隅をつつくように、まだ誰も書いていない新しいモノを探して、いつの間にかこんな所まで来てしまいました。それでもまだ次があるのは、常に叱咤してくれる編集部の方々と、激励してくれる読者のみなさんのおかげと感謝しています。
更にここで忘れてはいけないのは、その土地土地の「神様」です。取材に行き、きちんと「神社・温泉・地酒」をクリアすると、その夜に耳元でさまざまなことを囁いてくれます(たまに頭を殴られたりもします)ので、ぼくは「神様」に言われた通りのことを文章にしているだけです。
冗談と思われるかも知れませんが、実は本当のことなのです。
そうでなければ、二十年にもわたって毎回新しいネタを探して書き続けることは不可能だったでしょう。同時に、この状態がいつまで続くのか「真のゴーストライター」(?)であるぼくには全く分かりませんが「流れのままに」「果報は寝て待て」の精神で、これからも書き続けて行かれればと思っています。
二十年を迎えて新たなるスタートの次作は「源平合戦」に挑みました。これが予想を遥かに超えて大変な事態に陥り、内容も分量も普段の「QED」二冊分ほどとなってしまい、つい先日ようやく脱稿しました。主要テーマは、いわゆる治承・寿永の乱における最大の(と思われる)あの謎を、どうして今まで誰もがあっさりと看過してきたのか……といういつも通りの突っ込み方ですが、楽しんでいただけることを願っています。
ぼくは四十歳デビューでしたので、二十周年とともに還暦を迎えてしまいました。ということは「四柱推命」的に見て、〇歳からの新たなスタートとなります。ぜひこれからも、優しく見守っていただければ幸いです。
- 『これはミステリではない』 竹本健治
- 『法廷遊戯』 五十嵐律人
- 『詐欺師は天使の顔をして』 斜線堂有紀
- 『希望と殺意はレールに乗って アメかぶ探偵の事件簿』 山本巧次
- 『#柚莉愛とかくれんぼ』 真下みこと
- 『ミッドナイツ』 山口雅也
- 『ネタバレ厳禁症候群 〜So signs canʼt be missed!〜』 柾木政宗
- 『絞首商會』 夕木春央
- 『創竜伝14〈月への門〉』 田中芳樹
- 『家族パズル』 黒田研二
- 『アロワナを愛した容疑者 警視庁いきもの係』 大倉崇裕
- 『貌のない貌 梓凪子の捜査報告書』 松嶋智左
- 『友達未遂』 宮西真冬
- 『線は、僕を描く』 砥上裕將
- 『千年図書館』 北山猛邦
- 『うつくしい繭』 櫻木みわ
- 『奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!』 加藤元浩
- 『試験に出ないQED異聞 高田崇史短編集』 高田崇史
- 『暗殺日和はタロットで』 古川春秋
- 『オホーツク流氷殺人事件』 葵 瞬一郎
- 『レベル95少女の試練と挫折』 汀こるもの
- 『異セカイ系』 名倉 編
- 『体育会系探偵部タイタン!』 清水晴木
- 『清らかな、世界の果てで』 北里紗月
- 『人間に向いてない』 黒澤いづみ
- 『閻魔堂沙羅の推理奇譚』 木元哉多
- 『コンビニなしでは生きられない』 秋保水菓
- 『毎年、記憶を失う彼女の救いかた』 望月拓海
- 『緋紗子さんには、9つの秘密がある』 清水晴木
- 『ギキョウダイ』 嶋戸悠祐
- 『禁じられたジュリエット』 古野まほろ
- 『双蛇密室』 早坂 吝
- 『神の時空 ―京の天命―』 高田崇史
- 『溝猫長屋 祠之怪』 輪渡颯介
- 『もう一つの「バルス」―宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代―』 木原浩勝
- 『未来S高校航時部レポート 新撰組EZOで戦う!』 辻 真先
- 『水の都 黄金の国』 三木笙子
- 『ホームズ四世』 新堂冬樹
- 『倒叙の四季 破られたトリック』 深水黎一郎
- 『誰も僕を裁けない』 早坂吝
- 『ペンギンを愛した容疑者 警視庁総務部動植物管理係』 大倉崇裕
- 『幸腹な百貨店』 秋川滝美
- 『その可能性はすでに考えた』 井上真偽
- 『たとえ、世界に背いても』 神谷一心
- 『深紅の断片 警防課救命チーム』 麻見和史
- 『怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関』 法月綸太郎
- 『黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子』 二上 剛
- 『かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。』 最果タヒ
- 『パリ症候群 愛と殺人のレシピ』 岸田るり子
- 『無貌伝 ~奪われた顔~』『無貌伝 ~最後の物語~』 望月守宮
- 『純喫茶「一服堂」の四季』 東川篤哉
- 『都知事探偵・漆原翔太郎セシューズ・ハイ』 天祢涼
- 『蜂に魅かれた容疑者』 大倉崇裕
- 『五覚堂の殺人』 周木律
- 『未来S高校航時部レポート TERA小屋探偵団』 辻 真先
- 『渦巻く回廊の鎮魂曲(レクイエム) 霊媒探偵アーネスト』 風森章羽
- 『さいとう市立さいとう高校野球部 甲子園でエースしちゃいました』
あさのあつこ - 『鬼神伝 龍の巻』 高田崇史
- 『ただし少女はレベル99』 汀こるもの
- 『神の時空 ―鎌倉の地龍―』 高田崇史
- 『双孔堂の殺人 ~Double Torus~』 周木 律
- 『月と太陽』 瀬名秀明
- 『さくらゆき 桜井京介returns』 篠田真由美
- 『聖者の凶数 警視庁捜査一課十一係』 麻見和史
- 『硝子の探偵と消えた白バイ』 小島正樹
- 『美都(みと)で恋めぐり』 北 夏輝
- 『水晶の鼓動 警視庁捜査一課十一係』 麻見和史
- 『狼と兎のゲーム』 我孫子武丸
- 『綾辻行人殺人事件 主たちの館』 天祢涼
- 『404 Not Found』 法条 遥
- 『蔵盗み 古道具屋 皆塵堂』 輪渡颯介
- 『猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条』 北山猛邦
- 『セシューズ・ハイ 議員探偵・漆原翔太郎』 天祢涼
- 『プライベートフィクション』 真梨幸子
- 『カマラとアマラの丘』 初野晴
- 『増加博士の事件簿』 二階堂黎人
- 『戦車のような彼女たち』 上遠野浩平
- 『カンナ 京都の霊前』 高田崇史
- 『魔境の女王陛下 薬師寺涼子の怪奇事件簿』 田中芳樹
- 『猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数』 北山猛邦
- 『天山の巫女ソニン2 海の孔雀』 菅野雪虫
- 『さよならファントム』 黒田研二
- 『アケローンの邪神 天青国方神伝』 高里椎奈
- 『覇王の死 二階堂蘭子の帰還』 二階堂黎人
- 『空を飛ぶための三つの動機THANATOS』 汀こるもの
- 『QED 伊勢の曙光』 高田崇史
- 『闇の喇叭&真夜中の探偵』 有栖川有栖
- 『バミューダ海域の摩天楼』 柄刀一
- 『虚構推理 鋼人七瀬』 城平京
- 『メルカトルかく語りき』 麻耶雄嵩
- 『生霊の如き重るもの』 三津田信三
- 『古道具屋 皆塵堂』 輪渡颯介
- 『縛り首の塔の館 シャルル・ベルトランの事件簿』 加賀美雅之
- 『シンフォニック・ロスト』 千澤のり子
- 『ハウンド 闇の追跡者』 草下シンヤ
- 『聖地巡礼』 真梨幸子
- 『夜の欧羅巴』 井上雅彦
- 『眠り姫とバンパイア』 我孫子武丸
- 『ひなあられ』 日日日
- 『燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿』 篠田真由美
- 『小鳥を愛した 容疑者』 大倉崇裕
- 『琅邪の鬼』 丸山天寿
- 『薔薇を拒む』 近藤史恵
- 『光待つ場所へ』 辻村深月
- 『星々の夜明け フェンネル大陸 真勇伝』 高里椎奈
- 『幻人ダンテ』 三田 誠
- 『キョウカンカク』 天祢 涼
- 『プールの底に眠る』 白河三兎
- 『幻獣坐』 三雲岳斗
- 『妖精島の殺人 上・下』 山口芳宏
- 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』 辻村深月
- 『奇蹟審問官アーサー 死蝶天国』 柄刀一
- 『残酷号事件 the cruel tale of ZANKOKU-GO』 上遠野浩平
- 『萩原重化学工業連続殺人事件』 浦賀和宏
- 『トワイライト・ミュージアム』 初野晴
- 『完全版 地獄堂霊界通信(1)』 香月日輪
- 『無貌伝~双児の子ら~』 望月守宮