「警視庁捜査一課十一係」シリーズも3作目になりました。今作と前2作で、あえて変えた部分などはありますか?
『石の繭』は捜査に不慣れな如月塔子が犯人に振り回される話、『蟻の階段』は遺留品捜査の技術を習得する話でした。それらを踏まえて、今回は塔子がさらに成長できるよう、スケールの大きな事件を用意しています。彼女がどのように危機を乗り越えていくかが見どころです。
前回のインタビューで、このシリーズを書くにあたって東京の地勢図を用意されて書き込んでいくと伺いました。物語の舞台はどのように選ぶのですか?
知っている場所のほうが書きやすいので、おもな舞台は土地鑑のある場所から選んでいます。『石の繭』の新橋、『蟻の階段』の南品川、『水晶の鼓動』の木場などです。複数の事件が起こる場合は、移動経路や所要時間を考えて無理のないように設定しています。
この先、書いてみたい場所は銀座、新宿、下北沢辺りです。
十一係に人事異動の予定はありますか?
新メンバーを考えています。実際の組織では定期的に異動がありますし、塔子自身もずっと新米のままではないと思いますので。いずれ彼女が中堅の刑事になれば、鷹野以外の捜査員と組む可能性もありますね。
気になる塔子と鷹野の関係は、今後進展するのでしょうか?
鷹野との関係は少しずつ変わってきています。以前の塔子は研修生的な立場でしたが、最近力をつけてきましたから、そのうち意見が対立するような場面があるかもしれません。私生活の面は……そうですね、これはどうなるでしょう。鷹野がああいう性格ですから、どんな展開になるか予想が難しいところですね。
麻見さんから見て、魅力的な男性キャラを教えてください。
2種類ありまして、ひとつは生真面目で仕事に厳しい、プロフェッショナルタイプの男性。俺が俺がという自己主張はせず、困難な任務を黙々と遂行する人に魅力を感じます。もうひとつは明るく朗らかで、ちょっと抜けているように見えるけれど、じつはいろいろ考えているという男性。
どちらのタイプも、他人への思いやりを持っていてほしいと思います。
塔子にモデルはいますか?
もとは地味でおとなしい女性としか考えていませんでしたが、「身長152.8センチで童顔、大きな鞄を肩に掛けている」というふうにデフォルメしましたので、特定のモデルはいません。書くに当たっては、書籍などで身長が低めの女性について調べました。これは大変参考になりました。
ずばり、塔子は好みのタイプでしょうか?
好みです。努力を惜しまないし、自分の役割を考えて、周囲に気配りできるところがいいですね。ちょっと抜けているようなところもチャームポイントです(笑)。
努力している人がきちんと評価され、報われるという話が書きたいので、塔子には毎回頑張ってもらっています。
麻見さんから見た、このシリーズの読みどころを教えてください。
警察小説の形をとっていますが、組織の問題を描くのではなく、犯人との対決を主眼としています。捜査員が情報を積み上げて推理する、そこで意外な真相が明らかになる、という部分を楽しんでいただければと思います。
あとは、如月塔子の成長ですね。鷹野が理詰めでいくのに対して、彼女は直感で何かを見抜く力を持っています。これからも感性を活かして、先輩たちとは一味違う捜査を見せてくれるはずです。
次回作のアイデアを、少しだけ教えていただけますか?
思わぬ場所から切断遺体が発見されるという、猟奇殺人の話を準備しています。今、十一係のメンバーで進めるか、それとも別の刑事に担当させるか検討しているところです。かなり密度の高い話になると思いますので、ご期待ください。
読者の方にメッセージをお願いします。
おかげさまで十一係シリーズも3作目となりました。いくつもの難事件が起こりますが、刑事たちは全力で取り組み、困難な局面でも決してあきらめません。それが捜査のプロというものだと思います。
これからも、読んだあと前向きな気持ちになれるような作品を書き続けたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。