初めまして。真下みことです。
『#柚莉愛とかくれんぼ』は、私にとって初めて本になる小説です。
コメントを書くにあたって執筆当時のことを思い出そうと、あのころずっと聴いていた、宇多田ヒカルさんの「A.S.A.P.」を部屋でかけてみました。何とも言えない焦燥感と、先の見えない不安がよみがえってきました。
私は、SNSで発信するのが苦手です。友達にどう見られるか、何かの拍子に炎上してしまわないか、そういったことがいちいち心配になってしまうのです。とはいえ、現代社会でSNSを全く使わないというわけにはいかないので、恐る恐る利用しています。
そんな中、あるアイドルが炎上したというニュースがスマホの画面に流れてきたことがありました。よくあることですが、その時の私はふと思ったのです。
アイドルの人はSNSを利用するとき、怖くないんだろうか、と。
この小説ができたきっかけは、その小さな疑問でした。
それからしばらくして、電車に乗ってスマホを見ていたら、別のアイドルが炎上したというニュースが流れました。またか、と思って顔を上げた私は目の前の光景に息をのみました。みんなが、自分のスマホに夢中になっているのです。スマホの画面のコメントと、目の前にいる人……。なぜか、それが重なって見えたのです。あのアンチコメントを書いたのは、そこに立っているサラリーマンかもしれない。制服を着たこの女の子は、炎上しているアイドル本人かもしれない。
「#柚莉愛とかくれんぼ」の大まかなすじ書きが、そのときにできた気がしました。電車から降りて、頭の中にあったイメージをスマホのメモ帳に打ち込みました。周りから見れば、私もスマホに夢中な人の一人でした。
それからは、あっという間でした。オリジナルのアイドルを作り上げて、夢中で原稿を書きました。
運よく見つけていただいて、本になることになりました。
この本を読んでほしい2種類の人に、ここでメッセージを書かせていただこうと思います。
アイドルが好きな人へ
この本は、アイドルの気持ちになれる小説です。あなたの好きなアイドルの思いが、少しだけわかるかもしれません。
アイドルが嫌いな人へ
この本は、アイドルの気持ちになれる小説です。あなたが嫌いなアイドルが何を感じて何を考えているのか、少しだけわかるかもしれません。
この本を手に取っていただける方がどんな方なのか、彼女たちの結末をどう思われるのか、とても楽しみにしています。私の最初の小説を、よろしくお願いします。
真下みこと(ました・みこと)
1997年埼玉県生まれ。早稲田大学に在学中(2020年2月現在)。 2019年『#柚莉愛とかくれんぼ』で第61回メフィスト賞を受賞し、2020年デビュー。
プロフィール
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P | 『#柚莉愛とかくれんぼ』。キャッチコピーは「アイドルたちのかくれんぼ、本当の鬼はだーれだ?」。インディーズのアイドルがメジャーデビューを目指し、動画配信でファンに向けてドッキリを仕掛けたところ炎上がとどまることを知らず、どんどん堕ちていくという話です。実に文章がうまい。アイドルやネット住人の雰囲気づくりがよくておのずと引き込まれて素直な気持ちで楽しめました。結末で、ある一撃を食らって、呆然とするわゾッとするわで、ああ満足。こんな感覚にさせてくれるなんて、エンタメとして最高じゃないですか。 |
U | リーダビリティが圧倒的に高くて一気に読まされました。仕掛け自体もストーンと腑に落ちて、シンプルだけど面白いですし、「一度ウソをついたら、二度と信じてもらえなくなるんだよ」というメッセージはシンプルだけどゾッとくるところがあります。 |
T | 今、起こり得る話をすごくコンパクトにギュッとスピード感あふれる感じで書けています。 |
金 | 好きです。文字で読むときには、アイドル本人以上にアイドルを観ている人やアイドルに関わっている人が魅力的に見えると気づかされました。とにかく面白い! |
N | いちばんの魅力は文章の上手さで、作中に登場する曲名とかも含めてすごくセンスがいいなと思います。このセンスってなかなか獲得しづらいものなので、武器にしていってほしい。 |
寅 | 面白かったです。僕はツイッターなどに詳しくないんだけど、こうやって炎上させるんだなとか、リアル感があって、アイドル三人の心情を含めてリーダビリティがありました。 |
P | この方、好きな小説が綿矢りささんの『勝手にふるえてろ』だそうです。 |
N | メフィスト賞投稿者としては珍しいタイプかも! |
金 | 文章の上手さと引き出しの数を思うと、確かにミステリだけ読んでました、みたいな人ではない感じはありますね。 |
P | 心をとらえて仕方がない作品です。これは世に出してみたいんですよ。皆さん、決めました! 新しい風を吹かせましょう。『#柚莉愛とかくれんぼ』を第61回メフィスト賞とします! |
『メフィスト 2019 VOL.1』より一部抜粋
ただただ呆然――メフィスト賞一次選考でこの作品を読み終えたときの私の心理です。そんな状態が長く続きました。仕事が手につかず、帰宅してしまいました。そして、この女子大生投稿者にぜひ作家デビューしてほしいと思いました。
アイドルたちの心情や会話、業界の事情、裏切られたファンたちの心理とネット炎上の手口、これらをしっかりとエンタメにした作品です。リーダビリティの高さは新人離れしています。
夢を与えるために努力する女の子たちのリアルな姿、誰もが他人事ではないネットの怖さを一気読みしてください!
中森明夫(作家/アイドル評論家)
アイドルと小説は、だますことが使命である。
だまされた! 驚いた! 魅せられた!
橋本愛奈(元アイドルグループ「チャオ ベッラ チンクエッティ」)
本音と建前。ネット社会。
誰しもが抱いたことのある悪の部分が描かれている。
三島政幸(啓文社西条店)
アイドル好きの書店員として断言しよう。
これは今までに読んだ「アイドル小説」の中で最もリアリティに溢れた作品だ。
宗岡敦子(紀伊國屋書店福岡本店)
あまりの面白さに時が経つことも忘れるくらい没頭して読み続けてしまいました!