1960年和歌山県生まれ。
第13回「このミステリーがすごい!」大賞隠し玉となった『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう』で2015年にデビュー。
2018年『阪堺電車177号の追憶』で第6回「大阪ほんま本大賞」を受賞。
著書に「開化鐵道探偵」シリーズ、『途中下車はできません』、『軍艦探偵』などがある。
現在は鉄道会社に勤務。
『希望と殺意はレールに乗って』装画には、電気機関車EF10を描きました。
鉄道に興味を持ち始めた幼い頃、私が住む地域では電気機関車は青とクリーム色に塗られたものが一般的でした。その中で、たまにしか見かけない飯田線を走る茶色(ぶどう色)のEF10は、自分が生まれてくる前の時代を感じさせる不思議な機関車でした。当時私が感じていた「時代」がまさに『希望と殺意はレールに乗って』の舞台となる時代です。
EF10形電気機関車にも様々な形のものが存在します。今回描いたのは、丸みのある車体でどこか外国の機関車のような雰囲気も感じられるタイプをモデルにした架空のEF10です。絵の中には、すれ違いのできない単線で行われるタブレット(通票)の受け渡しに使用する通票授柱も描いています。
様々な季節、時代を走り抜けたであろう機関車の姿を作品とともに楽しんでいただければ幸いです。
終戦から十数年、汽車が我が町にやって来ることに、まだまだみんなが夢と希望を持っていた時代……その高度成長期の香りが漂う鉄道ミステリが出来ました。人々が情熱を持ちつつもどこか牧歌的な時代、そこに潜む闇。読み口は軽やかながら、なかなかの読み応えです。
続けて起こる不可解な事件に迫るのはアメリカかぶれの探偵・城之内。彼を信頼する大塚警部もまたアメリカかぶれ。実に濃い二人が登場します。その彼らとともに行動する旧華族のお嬢様・真優。一服の清涼剤と思いきや、彼女もまた実にいい味を出しています。事件解決へ向けて、何をやらかすのかは本書を見てのお楽しみ。
謎もキャラも鉄道も……現役鉄道会社社員であり、人気ミステリシリーズを生み出す著者のエッセンスがギュッと詰まった作品をどうぞ手にとってください。