刀城言耶の学生時代の事件簿をお届けします。
まだ作家デビューはしていませんので、幸か不幸か(?)怪想舎の編集担当者である祖父江偲(そふえ・しの)とは出会っていません。
が、かの悪名高き阿武隈川烏(あぶくまがわ・からす)とは、不幸にも既に先輩と後輩の関係にあります。
学生の言耶君が巻き込まれるのは、スグショウ族の死霊、箕作家の天魔、彌勒島の屍蝋、谷生家の生霊、釜浜町の顔無などが絡む、不可解で奇っ怪な事件ばかりです。
では、どうぞお楽しみ下さい。
三津田信三(みつだ・しんぞう)
奈良県出身。編集者を経て2001年『ホラー作家の棲む家』(『忌館〈いかん〉 ホラー作家の棲む家』と改題し講談社文庫)でデビュー。
その後、本格ミステリと民俗学的見地に基づく怪異譚を融合させた『厭魅〈まじもの〉の如き憑くもの』(講談社文庫)を発表。今までにない作風がヒットし、「刀城言耶シリーズ」として多くのファンを掴む。2010年には同シリーズ6作目にあたる『水魑〈みづち〉の如き沈むもの』(原書房)で第10回本格ミステリ大賞を受賞。独特の世界観と筆致で精力的に執筆を続けている。
装画 村田修
1972年広島生まれ。蟹座。O型。和光大学卒。
小説家・津原泰水の実弟。
刀城言耶シリーズ第一作『厭魅の如き憑くもの』でカバーイラストを執筆。
以来、原書房ミステリー・リーグなど、三津田作品のイラストを多く手がける。
http://zerocool-x.com/murata/
「刀城言耶シリーズ」の着想のきっかけを教えて下さい?
ホラー風のミステリ、またはミステリ風のホラーではなく、最後まで読まないとホラーなのかミステリなのか分からない小説は書けないだろうか……と考えたのがきっかけでした。その結果、生まれたのが『厭魅の如き憑くもの』です。
ただ、その後の作品はかなりミステリ寄りになっていますので、またホラー色の強いものも書きたいと思います。
ずばり、「刀城言耶」とは、一言でいうとどんな人物でしょうか?
自分の知らない怪異譚を耳にすると、我を忘れて暴走することはありますが、それ以外はいたって気の良い青年です。
三津田さんご自身、彼に似ているところはありますか? あるとすれば、どこでしょうか?
芦辺拓さんに「ひょうひょうとしているところが似ている」と言われましたが……?
『生霊の如き重るもの』に登場するキャラクター達の中で、特にお気に入りのキャラクターは誰でしょうか?
他の作品にも登場しておりますが、刀城言耶の先輩の阿武隈川烏です。
自分にはとても甘く、他人(特に後輩の言耶)に対しては非常に厳しい人物で、しばしば言耶が事件に巻き込まれる騒動の元凶になります。
「刀城言耶」シリーズを書く上で、一番苦労することは何でしょうか?
民俗学的な題材、戦前から戦後の時代設定、基本的にはミステリであるというお話の内容、そこにからむホラー要素、この四つを無理なく融合させることです。
僕は書きながら試行錯誤を重ねてお話を創っていくので、なかなか大変です。ただし、そこが楽しくもあります。
今回の『生霊の如き重るもの』中、一番気に入っているシーン、エピソードを教えて下さい。
「天魔の如き跳ぶもの」で、犯人に対して刀城言耶が×××するはめになるところ。
どんな人に読んでほしいですか?
すべての老若男女! とりわけミステリ好き、民俗学好き、怪談好き、不可能犯罪好き、戦前戦後の時代設定が好き、長篇より中短篇が好き、そして刀城言耶シリーズのファンという方でしょうか。
執筆中、かかせないアイテムは何かありますか?
執筆前には珈琲を飲み、執筆中はガムを噛んでいます。
今まで読んだ本、観た映画の中で、一番怖かった本(映画)は何ですか?
なかなか一番は選べませんが、M・R・ジェイムズと岡本綺堂の怪奇短篇は大好きです。ぞっとしたのは田中貢太郎「竈の中の顔」ですね。
映画はビデオオリジナル版「呪怨」が印象に残っています。「ほんとにあった怖い話 第二夜」の第五話「霊のうごめく家」もお勧めです。
今後シリーズはどのように展開していくのでしょう。少しだけ教えて下さい。
長篇では、遊廓や炭鉱を舞台にした作品を予定しています。
あとは、確執のある父親(名探偵の冬城牙城)との推理対決、刀城言耶最初の事件(『九つ岩石塔殺人事件』)、阿武隈川烏の迷探偵物なども書きたいのですが……。