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『無貌伝 〜綺譚会の惨劇〜』望月守宮/『空想探偵と密室メイカー』天祢涼/『咸陽の闇』丸山天寿|講談社ノベルス

講談社ノベルス

ミステリ新次元! メフィスト賞新人作家フェア
『無貌伝 〜綺譚会の惨劇〜』望月守宮 『空想探偵と密室メイカー』天祢涼 『咸陽の闇』丸山天寿
『無貌伝 〜綺譚会の惨劇〜』望月守宮 謎を積み込んだ豪華列車の向かう先は驚嘆の破滅……!? 至高の新伝奇ミステリ!!
『空想探偵と密室メイカー』天祢涼 20年前に閉ざされた学生寮に女優の死体――そこは史上最兇の密室! 進化する本格ミステリ!!
『咸陽の闇』丸山天寿 不老不死を願う始皇帝はなぜ巨大な生前墓兵馬俑を造らせたのか? 痛快!中国歴史ミステリー!!
メフィスト賞新人作家フェア・リレー小説「呪いの原稿事件」

無貌伝 〜綺譚会の惨劇〜

謎を積み込んだ豪華列車の向かう先は驚嘆の破滅……!?
至高の新伝奇ミステリ!!

探偵見習いの望(のぞみ)は、名探偵・御堂八雲(みどう・やくも)に呼び出され、怪事件について語り合う談話会――綺譚会(きたんかい)に参加することに。そこで紡がれる物語は、夢幻の顔を持つ怪盗・無貌(むぼう)と彼の協力者たちに纏(まつ)わる、恐怖と悲哀の歴史だった。豪華列車の中に煌めく、八雲の真意と探偵たちの矜恃(きょうじ)。明かされる綺譚の謎と、連鎖する望の宿命……! 動き出す運命の歯車に導かれた終着駅は!?

望月守宮さんコメント

無貌伝シリーズも4冊目。今回は初の短編集で、作中の色々な時代から7つの話を取り上げました。
シリーズの主人公・古村望が育ったサーカスの崩壊を描いた『満月も今日で終わり』、望の前任者・相原が日本庭園を舞台にした雪の密室に挑む『無情のひと』、農村で起こる連続殺人を描いた横溝正史風の物語『犬神』などなど、それぞれ味わいの異なるものに仕上げています。
そしてラストでは、衝撃の事実が明らかとなり、三探偵や無貌など、主要キャラ全員を巻き込む作中最大の事件へと繋がっていきます。
元々このシリーズは、どういう順番で読んでも楽しめるような構成にしてあるので、初めての方も、既に読んだことのある方も、是非読んでみてください。

プロフィール

望月守宮(もちづき・やもり)

2008年、『無貌伝 〜双児の子ら〜』で、第40回メフィスト賞を受賞しデビュー。

担当者コメント

今作は、望月さん初の連作短編集となっております。粒ぞろいの物語を読み進めると、シリーズ4巻目にして、物語に驚愕の展開が! まさかあのキャラがこんなことになるなんて……。あぁ、これ以上は言えない! 是非、その目で確認してください!!


望月守宮既刊リスト
『無貌伝 〜双児の子ら〜』

『無貌伝 〜双児の子ら〜』

衝撃! これが第40回メフィスト賞受賞作だ!!

人と“ヒトデナシ”と呼ばれる怪異が共存していた世界――。名探偵・秋津は、怪盗・無貌によって「顔」を奪われ、失意の日々を送っていた。しかし彼のもとに、親に捨てられた孤高の少年・望が突然あらわれ、隠し持った銃を突きつける! そんな2人の前に、無貌から次の犯行予告が! 狙われたのは鉄道王一族の一人娘、榎木芹――。次々とまき起こる怪異と連続殺人事件! “ヒトデナシ”に翻弄される望たちが目にした真実とは!?

『無貌伝 〜夢境ホテルの午睡〜』

『無貌伝 〜夢境ホテルの午睡〜』

悪夢のように面白い。――西尾維新

怪盗・無貌……それは世界が畏怖する生ける怪異。探偵・秋津とその助手・望は、宿敵無貌逮捕の報を受け、夏原ホテル――別名「夢境ホテル」へと向かった。そこには、殺人鬼探偵をはじめ、一癖も二癖もありそうな宿泊客ばかりが……。やがて、ホテルの一室で刺殺死体が発見される! 探偵たちを嘲笑うかのように繰り返される殺人。「夢境」の彼方に隠された事件の真実を、望は追う!!

『無貌伝 〜人形姫の産声〜』

『無貌伝 〜人形姫(ガラテア)の産声〜』

孤島に棲む人形に命が宿るとき惨劇の幕が上がる!
メフィスト賞受賞作シリーズ新作登場!

これは在りし日の名探偵と生まれいずる怪人の物語――。 「人形を見せてあげる」遥はそう言って、怪異が集まる島に秋津を誘った。そこに住むのは、幼き彼女の姿をした人形と、男たち。遥の失踪。消えた一日の記憶。破られた封印……。命の灯が1つ消えるたび、一体の人形が動き出す。孤島に秘められた悲愴な真実に秋津はたどりつけるのか!?

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空想探偵と密室メイカー

20年前に閉ざされた学生寮に女優の死体――そこは史上最兇の密室!
進化する本格ミステリ!!

密室に女優の死体――自他殺不明、凶器不明、動機不明。ミステリをこよなく愛し、並外れた“空想”力を持つ大学生・雨崎瑠雫(あまさき・るな)と、彼女に片思いの宇都木勇真(うつぎ・ゆうま)は謎を解くべく、行動を開始した。左遷された訳ありの刑事、女優の夫、各々の思惑が交錯する中、さらなる事件が……史上最兇の密室に隠された真相とは?

天祢涼さんコメント

13ヵ月ぶりにこんにちは。天祢涼です。
本来は「美夜シリーズ」の3作目を上梓すべきところ、担当P氏と××××な▲▲▲を繰り広げた末(P氏へ:適当に伏せ字を入れておいてください)、タイトルからしてミステリ色の強い小説を書くことになりました。
閉鎖された学生寮の一室で、女優が首から血を流して死んでいます。現場は何人(なんぴと)たりとも出入り不可能な密室。ということは自殺? しかし凶器が見当たらない。では他殺? しかし現場は密室――。
この謎に、『空想』癖のある大学生・雨崎瑠雫と、彼女に片思い中の宇都木勇真、さらに訳ありの刑事の3人が挑みます。一方で、女優の夫にも不穏な動きが……。
倒叙形式に名探偵、さらにラブコメ要素をちょっぴり配合した"天祢涼流"密室ミステリ、お楽しみいただければ幸いです。

プロフィール

天祢涼(あまね・りょう)

1978年生まれ。音が「見える」探偵・音宮美夜を主人公とする長編ミステリ『キョウカンカク』で第43回メフィスト賞を受賞し、2010年2月、デビュー。
犯人の「意外な動機」がミステリファンの間で話題となり、2011年版「読者に勧める黄金の本格ミステリー」(南雲堂)にも選出された。著作はほかに「美夜シリーズ」の続編『闇ツキチルドレン』がある。また短編「楢山鍵店、最後の鍵」が二階堂黎人・編『密室晩餐会』(原書房)に収録された。

担当者コメント

本来は「美夜シリーズ」の3作目を上梓すべきところ、天祢涼氏と○○○○な×××を繰り広げた末(皆様へ:伏せ字部分に貴方の推測を入れてお読みください)、天祢氏の本格魂がたっぷり詰め込まれたミステリが完成しました。読み手を翻弄する予測不可能な展開はまさに本格ミステリの醍醐味! そして推理合戦を始めた大学生たちや刑事の他に、ミステリファンならご存じの“意外”な人たちも参戦します。こちらも見どころの一つです! 「読者に勧める黄金の本格ミステリー」(選者・小森健太朗氏、つずみ綾氏、二階堂黎人氏)にデビュー作『キョウカンカク』で選出された実力派若手作家の新作をぜひお楽しみください!


天祢涼既刊リスト
『キョウカンカク』

『キョウカンカク』

第43回メフィスト賞受賞作
「喪われた恋の色を見る覚悟はあるか?」――上遠野浩平
見えすぎてしまう彼女が挑む謎は殺意の赤と邪悪の黒が混じった、世にも“凶”なる感覚の迷宮。

女性を殺し、焼却する猟奇犯罪が続く地方都市――。幼なじみを殺され、跡追い自殺を図った高校生・甘祢山紫郎は、“共感覚”を持つ美少女探偵・音宮美夜と出会い、ともに捜査に乗り出した。少女の特殊能力で、殺人鬼を追い詰められるのか? 2人を待ち受ける “凶感覚”の世界とは?

『闇ツキチルドレン』

『闇ツキチルドレン』

最強最悪な容疑者――捜査の裏を知り尽くした元エリート警察官僚!!
“音を見る”共感覚美少女探偵・音宮美夜が凶悪事件に挑む!

殺意の矛先は犬や猫、そして人間へ――。
小さな地方都市を震撼させる事件の容疑者は、県警本部長も務めた元警察官僚・最上倉太朗! “共感覚”美少女探偵・音宮美夜は妙な出会い方をした高校生・城之内愛澄とともに捜査を開始する。だが最上は「私は音宮くんを殺したい」と宣戦布告! 狙われた探偵は、裏を知り尽くした男を追い詰められるか?

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咸陽の闇

『咸陽の闇』

『咸陽の闇』
丸山天寿

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不老不死を願う始皇帝はなぜ巨大な生前墓兵馬俑を造らせたのか?
痛快! 中国歴史ミステリー!!

「驪山(りざん)(兵馬俑〔へいばよう〕)に首塚、触れてはならぬ。寄ればたちまち首が飛ぶ」不気味な歌が流行る秦の都・咸陽(かんよう)で怪事件が続発!
「首塚に現れた人食い女」「若い娘の連続失踪」
「皮だけが残る大量の死体」「人造人間の出現」
――街を恐怖へと陥れるは化生(けしょう)たちの仕業か?
そして「驪山」に隠された始皇帝の野望とは?
伝説の方士・徐福(じょふく)の弟子たちが、剣術、医術、推理……超越した能力を駆使して、巨大な都の秘密を暴く!

丸山天寿さんコメント

今日は。丸山天寿です。中国歴史ミステリー第3弾をお届けします。今回の舞台は秦の首都「咸陽」。始皇帝が住む巨大都市です。琅邪を離れましたが、私にとってはむしろこちらが本編。徐福とその弟子達が「咸陽に伝わる人食い女と首なし武者の伝説」「若い娘の連続失踪」「古代中国に現れた人造人間」、そして「秦と始皇帝の歴史上の謎」に挑みます。無心、狂生、桃姫などおなじみのメンバーの他にも、妙な能力を持った新たな弟子達や歴史上の有名人物も登場。もちろん事件や伝説の解明と併せて、派手な活劇も繰り広げます。中国物ですが、肩のこらないミステリーです。どうか存分にお楽しみ下さい。

プロフィール

丸山天寿(まるやま・てんじゅ)

1954年、長崎県生まれ。福岡県立八幡南高等学校卒業後、陸上自衛隊勤務を経て、古書店を開業。ライフワークである邪馬台国研究を進めるうち、自身初の小説となる『琅邪の鬼』を着想。2010年、第44回メフィスト賞を受賞し、デビューを果たす。現在、福岡県北九州市在住。

担当者コメント

謎解き、活劇、恋愛、感動……まさに「娯楽小説」という言葉が似合う作品ができあがりました。読み手の心を鷲づかみにしてしまう技術は、古書店店主でもある丸山氏の尋常ならざる読書量から生まれたもの。この夏、満足感が得られる作品をお探しなら、絶対オススメします! また始皇帝の謎にまつわる物語も読み応え十分。中国史好きな方もぜひ読んでください!


丸山天寿既刊リスト
『琅邪の鬼』

『琅邪の鬼』

第44回メフィスト賞受賞作
「前例がない!」「読後感爽快!」――田中芳樹氏絶賛!!
痛快中国歴史ミステリー誕生!!

始皇帝時代の中国、商家の家宝盗難をきっかけに、港町・琅邪で奇妙な事件が続発する!
「甦って走る死体」「美少女の怪死」「連続する不可解な自死」「一夜にして消失する屋敷」「棺の中で成長する美女」
――琅邪に跳梁する正体不明の鬼たち!!!
治安を取り戻すべく、伝説の方士・徐福の弟子たちが、医術、易占、剣術、推理……各々の能力を駆使して真相に迫る。多彩な登場人物、手に汗握る攻防、緻密な謎解き、そして情報力!面白さ極めた、圧倒的興奮の痛快歴史ミステリー!

『琅邪の虎』

『琅邪の虎』

「500年生きた虎は人虎となる」
古代王の祟りの謎を解け!
痛快中国歴史ミステリー!!

「虎が人の姿をして、災いを振り撒く」
鬼(ちょうき・虎に喰われた人の妖怪)の警告直後から始皇帝時代の港町・琅邪で奇妙な事件が続発する!
「神木の下の連続殺人」「暗躍する謎の集団」「人間の足が生えた虎」「始皇帝の観光台崩壊」――全ては虎を遣わした古代王の祟りか?
恐怖に陥る人々を救うため、求盗(警察官)の希仁や伝説の方士・徐福の弟子たちが、異能を駆使して真相に迫る!

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メフィスト賞新人作家フェア・リレー小説「呪いの原稿事件」

?(written by 天祢涼)

 よく知られているように、メフィスト賞には下読みがない。文芸図書第三出版部(通称「文三」)の編集部員がすべての投稿作に目を通し、「これぞ」と思った作品を座談会で取り上げる。座談会でほかの部員の賛同を得る、あるいは誰か一人が強く推せば受賞=デビューとなる――そんな尖った新人賞だ。
 ただ、募集要項を守っていない原稿が多いことは、意外に知られていない。こうした投稿作は、若干不利になる。才能が同程度なら「要項を遵守した作品を優先したい」と思うのは人情だろう。
 さらに座談会が、講談社の地下室で蝋燭の明かりのもと、覆面を被った十三人の参加者によって催されることは、極々一部の関係者にしか知られていない……。
 かく云う僕も、座談会がここまで秘密裏に運営されているとは知らなかった。
 僕が何者なのか? それは重要ではない、現時点では。
 そんなことより問題なのは、今回の座談会の参加者数だ。
 僕を含めても三人しかいない。
 すべては今回投稿された、とある原稿――《呪いの原稿》のせいだった。

 ほかの二人は、先に地下室に来ていた。
「フォッフォフォ。いらっしゃい」
「…………」
 一人は妙な声で笑い、もう一人は無言だった。掟どおり覆面を被っていて、正体はわからない。
 覆面着用が義務づけられているのは、部員の立場を平等にして、忌憚のない意見交換をするためらしい。毎回、座談会は議論が白熱し、怒声罵声喚声が飛び交う。『メフィスト』に掲載される座談会は、この辺りをぼかし、おもしろおかしく変えている。「この作品は絶対に世に出す!」「いや、コイツだけはデビューさせん!」などと叫んでいるうちに、拳と拳で語り合う事態に発展することも珍しくないと聞く。結果、負傷し、文三から長期・永久離脱する部員もいる。故に座談会終了後、部員の数は減少する。
 だが今回は、座談会が始まる前から部員が激減するという異常事態に陥っていた。
「フォッフォフォ。これが問題の原稿だよ」
 妙な声で笑う覆面(便宜上「一号」と呼ぼう)が、机に載せられた原稿を指差す。
 これが《呪いの原稿》……。
 この原稿を読んだ部員は、全員、不幸な目に遭っている。ある者は階段から落ち、ある者は車に轢かれ、ある者は心臓発作に襲われ……命に別状はないものの、全員が全員、意識不明の重態。原稿の感想は一言も口にしていないし、メモすら残していない。
 つまり、この原稿にどんな内容が書かれているのか、僕らにはわからないのだ。
 唯一、落ちてきた鉄骨が頭にぶつかった部員が、意識を失う直前、「音に色が見える……」と共感覚者のようなことを云い残している。しかし、これが原稿のヒントなのか、単なるクウソウなのかは不明である。
 理解に苦しむことに、犠牲者が続出しながらも、文三部員は次々とこの原稿に挑んでは散っていった。残った部員は、わずか二人。誰が残ったのかは知らないが、とにかくこれでは座談会にならないということで、急遽臨時メンバーが派遣されることになった。
 そこで白羽の矢を立てられたのが、この僕だ。
「フォッフォフォ。座談会に先立って、この原稿をどうするか、はっきりさせねばならんね」
 一号の隣で、無言の覆面(「二号」と呼ぶことにする)が頷く。
「いや、どうするもなにも、捨ててしまえばいいじゃないですか」
 当たり前の解決策を提示すると、一号と二号は、驚いたように僕に顔を向けた。
「読んだ者が次々と不幸に見舞われるなんて、普通じゃない。読む必要ないでしょう。黙って捨てたって、どうせ誰にもわから……」
「フォッフォフォ。このたわけが!」
 わざわざ笑い声を挟んでから、一号は叫んだ。
「メフィスト賞にはひとことコメントというものがあるのを知らんのか、貴様は」
 ああ! そうだった!
 座談会に取り上げなかった作品にも必ず寸評――いわゆる「ひとことコメント」をつける、それがメフィスト賞だった。
「フォッフォフォ。理解したようだね。そうだよ。ひとことコメントがあるかぎり、我々はどんな原稿でも読まないといかんのだよ」
「でも……あ、読んだふりをして適当なコメントを書く、というのはどうですか」
「いいや」
 小さくも強い語調で云ったのは、二号だった。
「それはメフィスト賞の矜持に関わる」
 では……読まなくてはならないのか、この原稿を。蝋燭の明かりがちらちらと、爬虫類の舌のように揺らめく中、唾を一つ呑み込み、《呪いの原稿》を見つめた僕は……。
「な、なんてことだ!」
 とんでもないことに気づき、思わず立ち上がった。

?(written by 丸山天寿)に続く

丸山天寿さんへ
 トップということで、好き放題思わせぶりな要素を盛り込ませていただきました。膨らますなり破棄するなり、ご自由になさってください。

望月守宮さんへ
 こんな話にどんなオチをつけていただけるのか、楽しみにしております……と、自分で書いたくせに無責任に期待。

?を読む (written by 丸山天寿)

「見て下さい。この原稿のキャッチコピーを」
 僕は思わず大声を出した。そこには毒々しい字で「この原稿に触れる者、全てに災いを」と書いてある。
 そう言えばここに来る途中で、二、三人の郵便配達人が倒れていたし、ポストには烏が止まっていた。急いでいたからスルーして来たが、あれは伏線だったのか。
「これを書いた者の悪意が感じられる。この原稿を書いた者は無差別殺人を狙っているのではないでしょうか」
 我ながら素晴らしい発想だ。このネタでミステリが一本書けるのではないか。だが、覆面一号が首を横に振った。
「フォッフォフォ。違うね。受付の可愛い○○子ちゃんは無事だ。ごつい警備員もピンピンしている。郵便配達人はただの暑気あたりだろう。烏の止まっていたのは妖怪ポストだ」
 その態度が気にくわない。見てもいないのに断定するのか。
「では、あなたの考えは?」
「フォッフォフォ。この原稿は、文三に直接届けられた。それも部長の机の上に置いてあったのだ。だから……」
 覆面の下の顔は見えないが、その声を聞くと随分苦しんでいるようにも思われる。次の言葉に笑い声はなかった。
「だから、書いた者はこの文三の誰かを狙っているのだと思う」
 何だと! だから文三の人間が次々に犠牲になったというのか。
「文三の誰かに恨みを持つ者……か」
 僕は指を折って数えた。だが指が足りない。自分の足の指や、覆面一号、二号の指を全部借りてもまだ足りない。
「多すぎる。これは大変だ。無差別殺人よりも犯人を割り出すのが難しい。警察に連絡しましょう」
 すると今まで黙っていた覆面二号がいきなり僕の頭を殴った。
「この馬鹿め。ここはメフィストの座談会だぞ。ここから世に出た名探偵が何人もいる。警察に頼んだら『そんな事件も解決出来ないのか』ともの笑いの種になるわ」
 僕はムッとした。その理屈はわからないでもないが、いきなり殴る事はないだろう。こぶができたぞ。
 覆面一号といい二号といい、何と怪しげな人間だろう。本当に文三の人間だろうか。
 アッ、この覆面はもしかすると部員の立場を平等にするためではなく、正体を隠すためではないか。あるいはこぶの痕や殴られて腫れあがった顔を隠すためかも知れない。
 覆面一号、二号の覆面も心なしか膨らんでいるように見える。
 過去にもメフィスト賞の選考過程で多くの編集部員が派手な殴り合いをしたと聞く。そう言えば、昔、覆面の中に凶器を隠している悪役レスラーもいたな。
 そうか。僕は突然ひらめいた。呪いの原稿を間違いなく手にするのは誰だ。そして、今までの犠牲者は全て文三の人間。
 原稿が直接届き、それも部長の机上にあったという事は……。
 僕の頭の中に真実が浮かんだ。
「わかりました。これで全ての理が通ります」
 私が厳かに宣言すると、一号が立ちあがって少し後ずさった。
「何だ、こいつ。態度も言葉つきも変った。まさかメフィスト出身の名探偵が乗り移ったのか。誰だ?」
 すると二号がすかさず口を挟んだ。
「私は知っている。物語の一番最後に現れて、偉そうに能書きを垂れるあいつだ。この探偵は、事件が終わり被害者が死んでしまった後にしか出て来ない徐福の弟子だ」
 私は二号の罵倒に対して穏やかに微笑みを返した。
「今回の事件はまだ終わっていません。いや、これからが始まりでしょう」
 すると一号の声が裏返った。
「では、今までよりも酷い災いが起こる、と? しかし、文三に残っているのはここにいる者だけだ」
「そうです。もっと恐ろしい災いが起こるのです。あなた達に思いあたる事はありませんか?」
「うむう、それは許さん」
 覆面二号が怒声を放った。
「あいやぁ、それは困る」
 一号は声だけではなく、体も震わせ始めた。覆面の下では泣いているかも知れない。
「ど、どうすれば、その災いを避けられるのか?」
 怒る者と泣く者が調子の違う声で同時に尋ねて来た。私は二人を見回して答えた。
「戦うのです」
「戦う? 誰とどうやって?」

?(written by 望月守宮)に続く

 リレー小説は初めてなので思いつくままに書かせて頂きました。
 もの凄く無責任とは思いますが望月先生、後を宜しくお願いします。

?を読む (written by 望月守宮)

「もちろん、呪いと戦うんですよ。この《呪いの原稿》を読むことによって」
「や、やっぱり原稿を読むのかね?」
 覆面一号が身震いした。
「そうです。《呪いの原稿》を読んだ人間は皆、不幸な目に遭うのでしょう? それなら、今ここで試してみればいい。呪いの正体がわかるはずです」
「しかし、それは……、危険では?」
 覆面一号が同意を求めるように二号を見つめた。二号もこくこくと頷く。
 彼らの考えていることはわかる。自分が読むことになって、呪われたらどうしようと考えているのだろう。
 もしくは、そう見せかけようとしているのか。
「ご心配なく。僕が読みますから」
 他の二人がどうだかは知らないが、僕は呪いなど信じていない。この事件には必ずトリックがあり、犯人がいるはずだ。いないとまずい。読者に叱られちゃう。
 犠牲者が文三の人間で、原稿が直接部長の机に置かれていたということは、犯人は文三の人間のはず。そして残った部員は覆面一号二号の二人だけ。
 つまり、覆面一号二号のどちらかが犯人なのだ。第三者である僕が臨時で呼ばれたのは幸運だった。犯人でない方と僕の二人で、犯人を捕まえることができる。
「では、読みますね」
 原稿の一ページ目をめくった僕は奇妙なことに気づいた。タイトルがない。キャッチコピーである「この原稿に触れる者、全てに災いを」という文句が書かれた次のページは、もう字がぎっしりとつまっているのだ。
 しかし考えることはやめて、僕は原稿を読み上げていく。
「○月○日、Pが鉄道模型をデスクでいじっている。何となく腹が立ったので、車輪をキャタピラに替えておいた。楽しい。○月×日、Yがデートに出掛けようとしていたので仕事を増やして邪魔をする。愉快」
 それを聞いて覆面一号、二号がざわめいた。
「なんだ、これは」
「小説の始まりにしては少し妙だが」
「○月△日、Uの笑顔が嘘くさいので、眉毛を油性ペンで繋げる。これで笑える」
 読んでいる僕自身も驚いていた。これは、これではまるで……
 覆面一号二号が顔を見合わせて言う。
「もしやこれは……日記?」
 確かに、書かれている内容は日記としか思えなかった。
 そうか。僕はようやく理解した。日記ならばタイトルがないのは当たり前。「この原稿に触れる者、全てに災いを」というのもキャッチコピーではなく、単に「読むな」という警告だったのだ。
 そしてこの日記を書いた人物についてもすぐにわかった。PやらYやらいうのはメフィスト座談会における部員のニックネームだ。彼ら全員をいじめることができる人物といえば、一人しかいない。
「どうやらこの日記の主は、文三こと文芸第三出版部の部長ZことマダムJJのようですね。犯行動機もこれでわかりました。マダムJJは、日記を人に読まれたくなかった。だからこそ、読んだ部員たちを次々と事故に見せかけて口封じした。それが真相です」
 僕は二人にそう告げたが、そこで奇妙なことに気づいた。てっきり覆面一号二号のどちらかが部長なのだろうと思ったが、二人とも、この原稿が日記であったことに純粋に驚いた様子だ。
「そんな。どちらも部長じゃない?」
 呆然とする僕を見て、覆面二号が首をかしげた。
「やれやれ。まだわかりませんか」
「相当お疲れのようだ。参ったね」と覆面一号も呟く。
 二人とも、口調がこれまでとは違う。
「な、何なんですか、一体? 説明してくださいよ!」
 すると覆面一号が軽く肩をすくめて、
「まだ思い出せませんか? 部長」
「な、なんだって! 僕が……部長?」
 僕は全身を貫くがごとき衝撃を受けた。しかし、それによって記憶を取り戻した。
「そ、そうよ。そうだった。私がマダムJJ。そして犯人も私だわ」
「今回は随分とどっぷり別人格になってましたね。仕事のしすぎですよ」
「何よ、あなたたちだって途中、某キャラが乗り移ってたじゃない!」
 校了前の修羅場では、部員がおかしくなるのはよくあることなのだ。
「部長ほどじゃないですよ。臨時派遣部員になったり、途中から探偵風になったり」
「うーん、部員たちを口封じして仕事量が増えたせいで、いつも以上におかしくなってたらしいわね。あぁ、働きすぎて頭が痛い……」
 頭をさすると、こぶができている。
「思い出した! あなたたち、私が混乱しているのをいいことに、殴ったり罵ったり、部長様に向かって随分なことをしてくれたわね」
「ちっ。覚えてたのか。錯乱している今なら日頃の怨みを晴らせると思ったのに……」
 覆面一号と二号は悔しさを滲ませて顔を見合わせる。
 何て部下かしら。またいじめて、日記に書かなきゃ。とりあえず、目の前の蝋燭のロウを一号と二号の覆面の隙間に垂らす。そう、私がマダムJJ。
「あつっ! や、止めてください! 『もっと恐ろしい災いが起こる』ってこんな蝋燭プレイ!?」
 と、泣きながら逃げる一号と二号。
「……部長の仕業というのはうすうす気づいてましたけど、まさか原稿が日記だったとは。それにしても、全部事故に見せかけるなんて、随分うまくやりましたね」
「ミステリを参考にしたの」
「問題発言だ! っていうか、日記をA4用紙に出力してクリップで留めないでください。応募原稿と間違えるじゃないですか」
 わめく部下に対して、私は堂々と答えた。
「それが目的よ。自分の日記が机の上にあって、誰かに間違って読まれるかもと思えば、緊張感を持って仕事ができるでしょう? でも、皆に読まれたからにはしかたないわね。今更あなたたちまで口封じすると仕事が進まないし、座談会を始めましょう」
 しかし、部下二人は納得しない様子だった。
「何事もなかったかのように進めないでください! この日記、応募原稿として座談会で批評しますから」
「みんなでこきおろしてやりましょう。いや、ひとことコメントだ」
「そんな、ひどい。ヒトデナシ!」
 こうして、「呪いの原稿事件」は幕を下ろしたのだった。

天祢さんへ
 魅力的な状況設定ありがとうございます。ちりばめられた謎もぼくなりに解決したつもりですが、こんなオチになっちゃいましたよ。

丸山さんへ
 丸山さんの張ってくれた伏線をまんまと利用させてもらいました。こんな推理で良かったのか、と思わなくもないですが。

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