『聖地巡礼』
真梨幸子
『シンフォニック・ロスト』
千澤のり子
「パワースポット」といえば、「パワー」をいただくところ。でも、それだけかしら? という疑問が、今回の作品のテーマです。パワーをもらいすぎてもその人の器に合わなければかえって体調を崩すだろうし、逆にパワーを吸い取られることもあるんじゃないかしら? と。
たとえば、オーラをギンギンに放出している人がそばにいると、こちらのエネルギーが吸い取られるような気分に陥ることはありませんか? それと同じで、パワーが漲っている場所に下手に近寄ると、こちらのパワーが奪われるような気がするんです。
タダより高いものはない、ではありませんが、タダでパワーがもらえる、と思って気楽な気持ちで行くと、足を掬われるかも? そんなことを思いながら、作品を楽しんでくださいませ。
真梨幸子(まり・ゆきこ)
1964年生まれ。2005年『孤虫症』にて第32回メフィスト賞を受賞しデビュー。その後も精力的に執筆活動を続ける。女たち特有の世界に、人間の業や執念を潜ませた真梨流ミステリーとしてファンを増やす。そのほかの作品に『深く深く、砂に埋めて』『ふたり狂い』など。2010年に発表された『更年期少女』がその独特の世界観などで話題に。今もっとも注目される気鋭の女性作家である。
前作は小学校が舞台だったので、今作はちょっと大人になって中学校を舞台にしました。主人公は、校舎のあちこちで練習をする吹奏楽部員です。
「青春なのに熱さが足りないんですよ!」
「スクール☆ウォーズの主題歌でも歌ってきます!」
度重なる書き直し、深夜の打ち合わせ、朝までの作業……。
いろんな初恋の形も出てくるほど、登場人物たちはどんどん熱くなっていきました。
それでもドライのままだったのは、なんと肝心の主人公・泉正博。何でこの人、この状況下でも楽器に打ち込めるのでしょうか。作者にもわかりません。おそらく理由なんてないのです。きっと、それが青春なのでしょう。
はたしてこの奇妙な青春を操っているのは、事件なのか、吹奏楽なのか、それとも別の何かなのか――?
答は読者のあなたのみぞ知る! かもしれません。
千澤のり子(ちざわ・のりこ)
1973年、東京都生まれ。専修大学文学部人文学科卒。2007年、宗形キメラ名義で二階堂黎人氏との合作『ルームシェア 私立探偵・桐山真紀子』を発表。2009年、『マーダーゲーム』でソロデビューを果たす。また別名義で、評論ライター・シナリオライター活動を行っている。
『孤虫症』で衝撃的なデビューをし、その後も精力的に執筆を続けてきた真梨さんが講談社ノベルスに初登場です。今回は史上初?! パワースポットミステリーです。良いところばかり取り上げられるパワースポットですが、実はもっと陰の力も漲っているのかも……と思わせられるような、連作短編集となっております。ぜひご一読下さい!
みなさんは最近、一つのことに情熱を燃やしましたか? 忙しさのあまり、その熱い気持ちから遠ざかっていた方にこそ読んで欲しいのが、この『シンフォニック・ロスト』という青春小説です。定期演奏会を前に猛特訓を続ける吹奏楽部の中学生たちの姿をぜひご覧ください。必ずや胸が熱くなることでしょう。ですが、その感動のさなかにやってくる、大どんでん返し! 千澤のり子さんの巧みな仕掛けは絶品です!!
今作の着想のきっかけは?
担当様に「パワースポットをお題に、書いてみませんか?」とご提案をいただいたのがそもそものきっかけです。オカルトは大好物なので、もちろんソッコーで飛びつきました。
年上のお友達がウェブ日記で書かれていた、ちょっとした日常の不思議をそのままメイントリックに使用しています。
○○な人にこそ読んでもらいたい!
「パワースポットってすごいよね!」な肯定派と、「パワースポットね……(苦笑)」な否定派。
「リア充死ね」と思っちゃうような、人生に疲れてる人に読んでもらいたいです。
今作の中で、お気に入りのキャラクターは?
お気に入りの登場人物は作らないようにしているのですが、強いて言えば、「ドッペルゲンガー」に登場する芸者さんたち全員。
サックスの今井加奈子。
ここだけは誰にも負けない今作のポイントは?
「どうして、こんなことに……?」という不条理と、もやもや感。
メイントリックです。
今作を四字熟語でたとえると。
玉石同砕(善人も悪人も、賢者も愚者もすべて滅びること)。
故事来歴。
作品について◎ ○ △ ×でお答えください。
コワい? ◎
エロい? ×
泣ける? △
コワい? △
エロい? ×
泣ける? ○
真梨さんお勧めのパワースポットを教えてください。
パリ、ルーヴル美術館のガラスのピラミッド。ここは、なにかすごいです! 壮大な秘密が隠されていそう。
パワースポットに纏わる体験談を教えてください。
都内で超人気のとあるパワースポットに取材に行ったときのこと。その日の夜、足先に奇妙な真っ黒いものが! 昨日までなかったのに! 血豆か?とも思いましたが、痛くも痒くもありません。もしかして、悪名高い例の病気? と顔面蒼白になり、翌日、病院に駆け込みました。「うーん、なんだろうね、これは?」と困惑顔のお医者様。「1ヵ月様子を見て、消えなかったら、切りましょう」と言われて、再度顔面蒼白。……遺書まで書いて悶々とした日々を過ごしましたが、1週間経つと、きれいに消えました。あれは、なんだったのでしょうか? 「一日一日を大切に」というメッセージだったのでしょうか? 確かに、健康のありがたみを改めて教わった1週間でした。
千澤さんお気に入りの楽曲は。
サンチェスの子供たち。
その曲に纏わるエピソードを教えてください。
中1のときの定期演奏会で吹きました。当時の2年生たちのソロがすごくかっこよかったのですが、その裏でメインメロディを支えるバスクラリネットに感動しました。リズム打ちでもソロに負けないくらいの存在感があり、こんなに綺麗な音をしていたっけ、とびっくりした記憶があります。楽器は違えど、作中に出てくる「いつまでも一緒に吹いていたい」奏者で、その人がいなかったらこの物語は生まれなかったです。
140字以内でつぶやいてください。
去年、ツイッターをはじめたのですが、140文字ではどうしてもおさまらず、毎回、長文を分割して投稿していました。つぶやきのはずが、どうしても熱弁に。私には、「つぶやき」というのは、どうも合わないようです。ということで、3ヵ月ももたずに撤退。フォローしてくださった方々には本当に申し訳
(※途中ですが、140文字超えましたので、ここで中断します)
ツイッターやってます。IDはnoriko_cです。不思議の国のアリスグッズを集めています。カラオケ大好きです。Sound Horizonをよく歌います。いつもおうちにいますがお片づけが苦手です。最近ジムに通っています。アスリート並みに筋肉質みたいです。140字って意外と長い……。
作家になって良かったことは?
『密室本』【メフィスト巻末編集者座談会】(非売品) をいただいたこと。
評論家の千街晶之さんに文庫解説を書いてもらえる可能性ができたこと(実現するといいなあ)。
無人島に1冊だけ講談社ノベルスを持って行くことができます。さて、何?
『密室本』【メフィスト巻末編集者座談会】(非売品)
『マーダーゲーム』……と言いたいところですが、中西智明『消失!』です。
好きな女性作家は?
エミリー・ブロンテ。
たくさんいますが、好き歴の長さで立原えりかさん。
好きな本、オススメ本は?
バルザックの『幻滅』。19世紀フランスを舞台にした、出版業界残酷物語!
今の気分で1冊だけ。
高野和明『6時間後に君は死ぬ』。
二話目の「時の魔法使い」のある部分が好きすぎます。自分を好きになろうかなあと思える作品です。
今後書いてみたい題材、テーマを教えてください。
オカルト全般(予言、不思議、都市伝説、超常現象などなど)、歴史もの。
少年犯罪、妖精、魔女狩り。
読者の方にメッセージを。
おかげさまで、「イタミス」(痛いミステリー)とか「ドロミス」(どろどろのミステリー)などの肩書をいただいております。今年は、「オカミス」(オカルトなミステリー)というキャッチも欲しいかな……などと、野心に燃えております。「レキミス」(歴史ミステリー)とも呼ばれたい! ということで、今年もよろしくお願いいたします。
どんな本でも、読んでいる間は充足した時間を得ていると思います。良い時間を費やしたなあと思ってもらえることが、作者にとっていちばんの喜びです。どうぞ、そんな1冊に、本書がなれますように!
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『孤虫症』
講談社文庫 -
『深く深く、砂に埋めて』
単行本 -
『クロク、ヌレ!』
単行本
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『ルームシェア 私立探偵・桐山真紀子』
講談社ノベルス -
『レクイエム 私立探偵・桐山真紀子』
講談社ノベルス -
『マーダーゲーム』
講談社ノベルス
汀こるもの
講談社ノベルス
ペットボトルの中に潜む 友情、策略――そして殺意。
美少年双子ミステリ&サスペンス!
まわりで次々と人が死ぬ“死神(タナトス)”体質の少年・立花美樹。魚マニアの彼が観賞魚展示会に出向いたところ、案の定、会場の客が毒殺され、お守り役の高槻刑事の身にも異変が……。混乱極める中、さらには美樹誘拐事件まで発生! 毒殺の真相は? 誘拐の意外な背景とは? そして美樹(死神)と誘拐犯の運命は? 高校生探偵の真樹(美樹の双子の弟)が掟破りの手段で事件に迫る!
高里椎奈
講談社ノベルス
講談社文庫
賑やかな街の一角に、その店は存在する。燻べたような色の木の板、木の壁、木の天井。まるでそこだけ時に取り残されたかのような――その店。蒼然たる看板に大書された屋号は、「深山木(ふかやまぎ)薬店」。優しげな青年と、澄んだ美貌の少年と、元気な男の子の3人が営む薬種店は、だが、極めて特殊な「探偵事務所」で……!? 第11回メフィスト賞受賞作!!
ほしおさなえ
講談社ノベルス
少女幻視探偵 三上汀! 彼女の瞳にだけ視えるものとは!?
古い空き家に眠る過去が、1枚の写真から浮かび上がる!
ベニスのように美しい水上都市、海市。その一角にある風変わりな組織“海市協会空き家課”。だれも住まなくなった建物に再び命を吹き込むのがこの部署の仕事だ。そこに勤務する間宮明はちょっと気弱な25歳。仕事で扱う古い建物から古いアルバムをくすね、蒐集する悪癖がある。ある日、明の仕事に課長の娘・三上汀がついてくることに。そこで、汀の能力が目覚め……。次々に現れる空き家の謎を解く事は出来るのか!?
戸川昌子
講談社ノベルス
綾辻行人「油断禁物。鮮やかに変転する“火”のカタチ。」
有栖川有栖「妖しく、たくらみに満ちた名編。まるで完全犯罪のよう。」
昭和33年、洋画家・松原和彦の自宅で火災が発生。病気療養中の松原は逃げ遅れて焼死する。出火の原因は3人の幼稚園児の火遊びとされた。それから26年、成人した3人の幼稚園児は、それぞれ消防士、刑事、保険会社の重役となり、連続放火事件をきっかけに再会するが、奇妙な殺人事件に巻き込まれる……。