「物語全体に都市伝説とか迷信とかを扱っているんですけど、ただ、これ、実在の事件で実際に噂になったことをモチーフにしてるのかな。過去の殺人犯の都市伝説。」
「あっ、そうなんだ。」
「それは嘘か本当かわからない都市伝説ですが、怖いなと思ってたんですね。だから今回、こういうものが物語になったらどうなるんだろうと思って、かなり引き込まれて読んだんです。主人公がまっ暗な田舎の家で、ライターだけ持って、鍵が開いてるかどうか恐る恐る確認するじゃないですか。そこの描写がめちゃめちゃ怖かったんですよ。途中で結末の予想はついちゃうんですけど、でも、これはミステリじゃないから、ホラーとして読むのであれば。そんなに関係ないのかなと。」
「呪文とか、怖いよね。」
と、高評価ながらもここはサスペンディッド。
ところが、その2回後の選考会で──
「あら、今回の座談会でもメフィスト賞作品が出ないの? 何だか悲しいわね。仕方ないけどお開きに……」
「マダム、ちょっと待ってくださ〜〜〜〜〜い!」
「な、なに?」
「前々回の座談会で取り上げたホラー作品、『虫とりのうた』をメフィスト賞にぜひ! あらすじをもう一度言いますけど、「虫とりのうた」という歌の歌詞のとおりに人が殺されていくホラー小説です。都市伝説や迷信、呪文なども織り交ぜていて、空気感が本当に不気味。迫りくる恐怖感で一気に読ませられる本当に面白い作品なんです! 手直しして頂いて、ますます面白さに磨きがかかりました。絶対デビューさせたいです!」
「私も覚えてますね。真っ暗な田舎の家での描写、めちゃめちゃ怖かったですよ。」
「ホラー作品でメフィスト賞というのも珍しいですが、私もぜひ世に出してみたいと思いました。ということで、赤星香一郎さんの『虫とりのうた』を第41回メフィスト賞に決定します!! おめでとうございます!!」
「私、私、この作品が売れなかったら、メフィスト賞座談会を引退します!」
……とまで選考会メンバーに言わしめた、『虫とりのうた』大期待でございますっ!