私は、プロットを書きません(書けません)。なので、犯人が誰なのか、もっといえば被害者が誰なのかも決めずに、書きはじめます。
今作もそうです。決まっているのは「三匹の子豚」というタイトルだけ。
1幕、2幕、3幕……と進んでも、犯人が誰なのかさっぱり見当がつきません。死体が増えるだけで。
そして、終幕に入ったとき。突然、その気配を感じました。書いていて(厳密にはキーボードをタッチしていて)、あれほどの戦慄を覚えたことはありません。そして、ラスト。その正体が明らかになったとき、「ブヒィィィィ」という声を上げてしまいました。それは、ある種の快感でもありました。
読者の皆様にも、「ブヒィィィィ」の快感を味わっていただけたら、幸いです。
真梨幸子
1964年宮崎県生まれ。2005年『孤虫症』で第32回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年に文庫化された『殺人鬼フジコの衝動』が累計60万部を超えるベストセラーに。他の著書としては『人生相談。』『私が失敗した理由は』『カウントダウン』『ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで』『向こう側の、ヨーコ』『ツキマトウ』『初恋さがし』など多数。
あるところに母さん豚とその三匹の子豚たちが住んでいました。母さん豚は子供たちを独り立ちさせるために、家を建てさせます。一番目の子豚はわらで家を建てますが、オオカミがやってきて家を吹き飛ばし、子豚は食べられてしまいます。二番目の子豚は木の枝で家を建てますが、こちらも同じように家を壊されて食べられてしまいます。三番目の子豚はレンガで家を建てます。オオカミは同じように吹き飛ばそうとしますが、レンガの家は丈夫なのでびくともしません。しびれを切らしたオオカミは、煙突から忍び込みますが、煮えたぎっていた鍋いっぱいの熱湯に飛び込んでしまい、オオカミはゆでられて、子豚に食べられてしまいます。
イギリスの伝承童話として世の中に広まった「三匹の子豚」は、ディズニーでアニメーションになることにより、より広まることになりました。現在では、子豚たちはオオカミに毎度追われるも、レンガの家に逃げ込んで、難を逃れ、またオオカミは煙突から入って大やけどをして逃げるというものが多く知られています。
真梨幸子節、炸裂です! 母親の呪縛から逃れられない娘たちの衝撃の顚末。黒幕は一体誰なのか。すべてが繫がった時の爽快感と“やられた!”感は真梨さんならではです。この感じ、読まなくては到底わかりません! ぜひお手にとってみていただけますと幸いです。