祖父が死んだ――。たいして交流もなかった上杉和典は葬儀に出席することすら億劫で、いつも通り登校していたところ、母親から父のクリーニングを取ってくるよう使い走りを言い渡される。面倒に感じつつも、葬儀に出ていない後ろめたさから、クリーニング店に向かった和典。直後に店員から、父の服についていた広範囲にわたる血痕を、申し出はなかったが綺麗にしたということを聞き不審に思う。さらに母親からは、最近父親が何度も長崎に行っていて、そこに不倫相手の女がいるに違いないという話を聞かされる。明らかに不審な父親の行動。探り始めると、死んだ祖父にまつわる新たな謎が浮上してきた。
担当コメント
進路に悩み始めた上杉和典が、今回は自らのルーツにまつわる謎に取り組みます。父親の不審な行動からあぶりだされたのは、亡くなった祖父がずっと抱え続けてきた“闇”でした。祖父、父、孫と3代にわたる家族の物語と、戦争によって生まれてしまった悲しみが交錯した、藤本ひとみ氏渾身の一冊です。