『清らかな、世界の果てで』
著者 : 北里紗月 (きたざと・さつき)
定価:本体1,600円
『清らかな、世界の果てで』
著者 : 北里紗月 (きたざと・さつき)
定価:本体1,600円
「皮膚の下を小さな虫が這(は)っている」と訴えながら死んだ男。
その友人もホームから転落死し、死体から大量の虫が発見された。
前代未聞の寄生虫症候群が進行しているのか?
続発する嚙みつき通り魔事件との関係は?
散乱する謎に、天才毒物研究者・利根川由紀が挑む!
昨年デビューを果たし、この度念願の二作目を出版することが出来ました。一作目は夢見心地のまま本が出来上がりましたが、本作は地に足を着けて書き上げたぞ! という思いが致します。さて、私が作る小説の中には奇妙な病や恐ろしい動植物が沢山登場します。一作目を読んで頂いた方から、あれは事実なのかとよく聞かれます。答えとしては、本筋に無関係な生物学小話は全て真実ですが、物語の核心部分は私の創作によるものが多いです。なんだ、嘘かとお思いですね。嘘には違いありませんが、私は小説で嘘を吐(つ)く際に一定のルールを決めています。それは、この世に存在しない毒、薬、動植物、病は登場させない、というものです。必ずモデルがあり、それにアレンジを加え物語に溶け込ませています。
また、変わり者の登場人物も実在する場合が多く、著名な生物学者や友人達がそのモデルです。金髪ドレッド、鼻ピアスの微生物学者や、趣味で動物の骨格標本を作り続けている友達もいます。ある日ポストを開けると、友人からキイロタマホコリカビの胞子が届いていたこともあります。生物学という毒にも薬にもならない学問の世界は、ユニークで魅力的な人物で溢れているのです。
今後も、読んで下さった方が生物学の不思議な世界に触れ、感動と興奮を味わえるような本を目標に書き続けていきたいです。ちなみにキイロタマホコリカビは、黄色のスライムのように育ち可愛いですよ。
島田荘司選 第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作『さようなら、お母さん』でデビュー。医療ミステリーの新星として注目されている北里紗月さんの第2作です。寄生虫をめぐる犯罪を追う、変人にして天才の毒物研究者・利根川由紀の大胆不敵な活躍をお楽しみください。犯人の企ての全貌が解明された瞬間の、圧倒的なサプライズを保証します。
医療研究者にして、主婦で3児の母と超多忙な日々を送りながら、かくも骨太で読み応えのあるミステリーを構築、執筆できる北里紗月さんは、まさにとんでもない才能の持ち主です。注目の大器による清新な傑作、必読です!