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『コンビニなしでは生きられない』秋保水菓|講談社ノベルス|講談社BOOK倶楽部

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『コンビニなしでは生きられない』 秋保水菓
『コンビニなしでは生きられない』

『コンビニなしでは生きられない』
著者:秋保水菓 (あきう・すいか)
定価:本体900円 (税別)

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あらすじ

大学生活に馴染めず中退した19歳の白秋(はくしゅう)。彼にとって唯一の居場所はバイト先のコンビニだった。そこに研修でやってきた女子高校生の黒葉深咲(くろはみさき)。強盗、繰り返しレジに並ぶ客、売り場から消えた少女。店内でひとたび事件が起これば、深咲は目を輝かせて、どんどん首を突っ込んでいく。彼女の暴走に翻弄されながら、謎を解く教育係の白秋。二人の究明は店の誰もが口を閉ざす過去の盗難事件へ。元店員が残した一枚のプリントが導く衝撃の真実とは?

秋保水菓さん一問一答

応募先にメフィスト賞を選んだ理由を教えてください。

書き上げた小説を読んでいただける方が自分の周りにはいなかった(そもそも小説を読んでいる方があまりいなかった)ので、編集者さんにいきなり読んでもらえるというシステムは、恐れ多くも大変惹かれるものがありました。4ヵ月ごとに結果がわかるというスパンの短さも自分の投稿ペースとちょうど合致しており、また、感銘を受けた村深月先生の『冷たい校舎の時は止まる』がメフィスト賞を受賞しているということで、もうここしかない!と思い込みました。

秋保水菓さん一問一答

いわゆる「メフィスト賞常連投稿者」となられていました。受賞作を書き上げるまでにどのような努力をしましたか?

1年半のあいだに4作投稿しました。そのうち1作は「もうちょいで座談会」に、残りの3作は「座談会」に挙げていただきました。いずれもコンビニを舞台にしたミステリーでしたが、いずれも膨らみ過ぎたページを削るのに苦労したことを覚えています。

秋保水菓さん一問一答

受賞を知ったとき、最初に思ったことは何でしょう? その後、まずしたことは?

お世話になっていた大学の先生に、まず報告しようと思いました。アントニイ・バークリーの小説を何冊か借りたままでしたので、これを口実に返しに行こうと。……まだ返せていません……。

秋保水菓さん一問一答

「コンビニ青春ミステリー」、着想のきっかけを教えてください。

閉塞感に陥っている人たちの話がまず頭にぼんやりと浮かびました。しかしそれだけでは暗澹としたイメージを拭えないので、純朴かつ健気でひたむきな明るい癒やし系後輩ヒロインをその舞台に登場させたいと思い立ちました。その結果、黒葉深咲というキャラクターが生まれ、本作の輪郭が鮮明になりました。

秋保水菓さん一問一答

コンビニを愛しすぎた著者というフレーズがオビにある秋保さん。いつごろ、どんなきっかけで愛し始めたのでしょうか?

小学2年生のとき、初めてコロコロコミック(480円)を1人で買うために最寄りのコンビニを利用しました。その際、100円玉が2枚と、あとは1円玉と5円玉、10円玉しか財布にはなく、仕方がないのでそれらを上手くやりくりして会計してもらおうとしました。当時は計算もままならなかったのですが、なんとかしてレジカウンターの上に代金分ぴったりの小銭を出すことに自分は成功しました。そのときはまだ不慣れなコンビニでの買い物だったので、誇らしさと達成感みたいなものも微かに覚えていました。ところが、店員のおばちゃんは首を横に振ってその小銭を自分の方に押し返してくるのです。
「これじゃダメ」
そう鬱陶しそうに言われて、自分は何度も確認しました。100円玉2枚に、1円玉、5円玉、10円玉と、少額貨幣の構成で少し恰好が悪いとはいえ、ちゃんと代金分ぴったりのお金を出したはずなのに……。しかし店員のおばちゃんは「多すぎるからダメ」と重ねて言って、取り付く島もありませんでした。
「金額は合っているのに、どうして会計を拒まれているんだろう?」 「お母さんが買えたのに、どうして自分は買えないんだろう?」
──当時の自分は、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律の第七条(同じ種類の硬貨は20枚までしか出せない)なんて知る由もなく、何がなんだかわからないままその場に立ち尽くしてしまいました。泣き虫だった自分はほとんど涙目で、堰を切ったようにむせび泣き寸前だったと思います。そんな自分を意に介さず、やがて店員のおばちゃんは、自分の背後にずっと並んでいた20代から30代前半の男性客をせかせかとレジに促しました。商品は手に持っていませんでしたが、すでに財布を開けて待っていたので、もしかしたらタバコか店頭商品を買おうとしていたのかもしれません。ところが──その男性客は押しのけるように自分の前に立って、レジカウンターの上に500円玉を置き──そしてそのまま何も買わず、何も言わずに颯爽と退店していったのです。結論から言えば、コロコロコミックは、買うことができました。買うことができてしまったのです。
あれから15年以上が経ちましたが、そのときの男性客の後ろ姿は今でも忘れることができません。

秋保水菓さん一問一答

ずばり、秋保さんにとってコンビニとは?

『コンビニなしでは生きられない』をご一読ください……!

秋保水菓さん一問一答

2018年4月現在、秋保さんイチオシコンビニ商品を教えてください。

「安納芋もなかアイス」というとあるコンビニチェーン限定の商品があるのですが、あれは本当に衝撃的な美味しさです。アイスは普段あまり食べませんが、「安納芋もなかアイス」だけは定期的に食べたくなります。あと、もうなくなってしまいましたが、同じコンビニチェーンのお弁当では、「若鶏の唐揚弁当」を高校生のときによく買って食べていました。あのパッケージも含めたシンプルさに、本当にそそられました。また、同じチェーンで最近リニューアルされた「グリルチキン」がジューシーな味わいで、とても美味しいです。

秋保水菓さん一問一答

作家を志したきっかけは?

高校3年生の頃、京都アニメーションさんが制作された『氷菓』というアニメの第4話を偶然視聴したことがきっかけです。当時そのあまりのクオリティの高さに圧倒されてしまい、そのまま原作者の米澤穂信先生の作品を熱中して読むようになりました。それまでの17年間、小説とはほとんど無縁の生活でしたが、それ以来手に取る機会が増え、やがて書くようになりました。もしもアニメ『氷菓』に、何より米澤穂信先生の作品に出会っていなければ、今の自分はきっとどこにもいなかったと思います。

秋保水菓さん一問一答

初めて「小説」を書いたのはいつ頃ですか? またどんな作品でしたか?

大学2年生の頃です。交通事故に遭った青年が目を覚ますとそこは病院で、でもどこか違和感のある世界だぞ? ──という好きなジャンルとシチュエーションをごちゃ混ぜにしたような話を自己満足だけで書き始めました。4ヵ月かけて思うままに好きなだけ風呂敷を広げ続けた結果、前編に原稿用紙1200枚以上費やしてしまい、案の定収拾がつかなくなって完成を断念しました……。

秋保水菓さん一問一答

好きなメフィスト賞作家・作品を教えてください。

氷川透先生の『真っ暗な夜明け』、小路幸也先生の『空を見上げる古い歌を口ずさむ』、村深月先生の『冷たい校舎の時は止まる』、白河三兎先生の『プールの底に眠る』、天祢涼先生の『キョウカンカク』です。

秋保水菓さん一問一答

影響を受けた作家・作品を教えてください。

加納朋子先生、米澤穂信先生、村深月先生の作品には、多大な影響を受けています。

秋保水菓さん一問一答

今後チャレンジしてみたい題材・テーマは何でしょうか?

コンビニにまつわる青春とミステリーの物語を書き続けたいです。しかし、たまにはコンビニの外に出て、コンビニとはまったく別のスケールの大きな話を形にしたいという思いも強くあります。とにもかくにも、今は青春ミステリーを書きたい思いで一杯です。

秋保水菓さん一問一答

最後に、読者の方々に一言お願い致します!

コンビニにも青春がある。
コンビニにもミステリーがある。
そんな思いで書き上げた一冊です。コンビニ×青春×ミステリーという少し変わった組み合わせの本作を、最後まで楽しんでいただけたら幸いです。
まだまだ不束者ですが、どうぞよろしくお願いいたします……!

つづきを読む
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 全フリーターが泣いた!!
立ち直るきっかけをくれる素晴らしいミステリだ!!

(喜久屋書店 北神戸店 松本光平さん) 

 誰もが一度は行ったことのあるコンビニで起きるミステリー。
読みながら風景が脳裏に浮かんで勝手に映像化していました。
発売後、即ドラマ化、映画化決定してもおかしくないおもしろさでした。

(啓林堂書店  奈良店 松田弘美さん) 

 どきどき青春ミステリー界に颯爽たる新星(スター)誕生!
名探偵・白秋、良い名前だ!(まざあ・ぐうすを訳しちまうぜ。笑)
可憐な女子高生・深咲ちゃんとの息もピッタリ。
デビュー作にして、既にキャラ立ちまくり、続編待望の連作である。
嗚呼っ! 青春。♡

(大垣書店 高槻店 井上哲也さん) 

 読み進んで全ての謎が明らかになった驚きは、
「見事!」という言葉しかありませんでした。

(書泉グランデ 近藤茂樹さん) 

 コンビニが生活の中に当たり前に存在するからこそのリアル感が半端ない。
タイトルもセンス抜群。
あとはリアル黒葉深咲を見てみたい。
映画化熱望します。

(今井書店 吉成店 小森佳子さん) 

 コンビニが舞台の青春ラブコメミステリーなのかなって、
軽い気持ちで読み進めるうちにハラハラドキドキ、最後には涙まで。
また最初からもう一度読んでしまいました。
まさに『コンビニなしでは生きられない』でした。

(明文堂書店TSUTAYA 金沢野々市店 穴水美穂子さん) 

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主要なチェーン店だけでも日本全国に55,395店(2018年2月度 JFA発表)もあるというコンビニ。日常生活の中に当たり前に存在するものを舞台としたミステリーが誕生しました。あまりにも身近な舞台だけに正直に言います、軽い気持ちで読み始めてください。青春にキュンキュン、コンビニ的日常の謎にワクワク……面白い展開に読む手は止まらないことでしょう。でも、様々な衝撃作を生みだしてきた「メフィスト賞」受賞ラインナップに名を連ねる作品ですから、まあ一筋縄ではいきません。この驚きはお読みになるアナタだけのもの!

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