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『横濱エトランゼ』

『横濱エトランゼ』

著者:大崎 梢
定価:本体1,400円(税別)

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高校3年生の千紗(ちさ)は、横浜のタウン誌「ハマペコ」編集部でアルバイト中。初恋の相手、善正(よしまさ)と働きたかったからだ。用事で元町の洋装店へ行った千紗は、そこのマダムが以前あった元町百段をよく利用していたと聞く。けれども善正によると元町百段は、マダムが生まれる前に崩壊したという。マダムは幻を見ていた? それともわざと嘘をついた? 「元町ロンリネス」「山手ラビリンス」など珠玉の連作短編集。

『横濱エトランゼ』によせて

 横浜市内に住むようになって、二十年以上が経ちました。となれば、歴史についても多少は明るくなってよさそうなものですが、のんびり散歩するくらいではなかなか頭に入ってきません。そこで小説の中で、元気のいい女子高生と共に、横浜の今と昔をたどってみることにしました。
 あらためて見渡せば、気になる地名や場所はいっぱい。中でも元町、山手、根岸、関内、馬車道という、かつて「文明開化」と呼ばれた頃の足跡を今なお色濃く残す町、あるいは通りに、ぎゅっと引き寄せられました。資料を読むのも面白い。掲載されている写真の中の人々に思わず目が釘付け。吉田橋通りを横切っていく着物姿に下駄、頭にカンカン帽をかぶった少年はどこの誰? 赤ん坊をおんぶした丸髷の女性はどんな人生を送ったの? 
 こういうことに夢中になるのは主人公・千紗の片思いの相手、善正です。タウン誌「ハマペコ」の編集長(代理)。
 ささやかな恋の行方も織り交ぜて、ミナト横濱に潮風が吹き抜けます。空を横切るのはカモメたち。楽しんでいただけることを祈っています。

プロフィール

大崎 梢(おおさき・こずえ)

東京都生まれ。神奈川県在住。元書店員。書店で起こる小さな謎を描いた『配達あかずきん』で、2006年にデビュー。近著に『誰にも探せない』『スクープのたまご』『よっつ屋根の下』『本バスめぐりん。』などがある。

横浜MAP

横浜MAP

書店員さんコメント

横浜育ちでも、知らない歴史や場所がまだあるんだと、
新たな視点で街並みを眺めてしまいます。

紀伊國屋書店横浜みなとみらい店 三谷薫さん

読了後、心がぽかぽかして横浜の街を歩きたくなりました。
青春の甘酸っぱさも楽しめて、おすすめです!

BOOK EXPRESS横浜南口店 鈴木詩織さん

ねじれた感情を解きほぐし、迷路のような人生をガイドする。
大いなる包容力と人肌の優しさに満ち溢れた物語は、まさに大崎梢さんの真骨頂!

三省堂書店営業企画室 内田剛さん

優しくて温かい、ふんわりと幸せな気持ちになれる
宝箱のような作品集。

大垣書店イオンモールKYOTO店 辻香月さん

好きな人に必死に、でもさりげなくアピールを続ける千紗ちゃんがかわいい!
思わず応援してしまいます。

若草書店八木駅店 平田有子さん

担当コメント

 学生時代を千葉、会社に入ってからは東京で過ごす私にとって横浜は憧れの地でした。憧れの女性と港の見える丘公園や山下公園を歩きたい、と情報誌をめくりながら妄想を膨らませたものです。今は再開発により、みなとみらい地区が特に賑わっているようです。
 幕末に開港され、外国人居留地ができたことにより発展した横浜で、かつての面影を残すのは、やはり山手や馬車道あたり。過去と現在(と未来)がほどよく同居し、独特の街並みを有する横浜を舞台とした五編は、そこで暮らす人々の半生や想いが詰まったものばかり。心に深くしみ入ってくるのです。ああ、また横浜への憧れが……。
 多くの人と触れあいながら成長していく高校生・千紗の初恋が成就するかにも、胸躍らされるはずです!

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