第1回 「まぜ御輿に水をまくのか?」編
第2回 「豆まきは変?」編
第3回 「禁足地ってどういう場所?」編
高田崇史(たかだ・たかふみ) 昭和33年東京都生まれ。明治薬科大学卒。『QED百人一首の呪』(講談社ノベルス)で、第9回メフィスト賞を受賞しデビュー。著作に「QED」シリーズ、「カンナ」シリーズ、「鬼神伝」シリーズ(2011年アニメ映画化)、『軍神の血脈 楠木正成秘伝』などがある。
日本最古の御魂鎮めの劇は、言うまでもなく能でしょう。
能には、大きな恨みを呑んで亡くなった数々の怨霊たちがシテ(主役)として登場し、ワキ(相手役)などに向かって満たされぬ思いや事実を語り、やがて鎮魂されて黄泉国へ戻るか、あるいは昇天してゆきます。
この「神の時空」シリーズでも、やはり怨霊や妖怪や幽霊たちが実際に登場して、自分たちが舐めさせられた辛酸や、更に正史に隠された真実までも語って鎮魂されてゆきます。
またその一方、この国を「本来の日本」に立ち返らせようと考えるモノたちも登場します。そして彼らは、人々は怨霊と共に生きるべきではないかと主張します。果たして私たちは、彼らの主張を否定し、論破できるでしょうか。
ここで正直に告白してしまうと、最後は作者としても思わず悩んでしまいました。彼らの主張には、非常に反論しづらかったのです。
なので、ぜひ読者の方々も作者同様、この点に関してご一考いただき、一緒に頭を悩ませていただければと思っています。
『神の時空 -倭の水霊-』
鎌倉将軍暗殺事件の真相とは!?
横須賀の走水神社は、今も度々訪れている大好きな社です。近年、パワースポット云々という話になっているそうですが、そういう方はぜひ弟橘媛の辞世の歌をきちんと噛みしめていただきたいと思います。あの辞世は決して「日本婦女子の鑑」の歌などではないのではないか、実のところ弟橘媛は、もっと筆舌に尽くしがたい悲しい運命を担わされたのではないか。そんなことを強く感じています。しかしどちらにせよ、走水神社は素敵な場所です。そしてそれもまた、ある意味では弟橘媛のなせる技だったのかも知れません。
『神の時空 -貴船の沢鬼-』
宇治の橋姫伝説。悲しみが京を揺らす!
貴船神社に行かれたら、ぜひとも鞍馬から貴船の山道を歩いてみてください。とても素晴らしい行程です。源義経の史蹟はもちろん、その他にも素敵な神々が大勢出迎えてくれます。今回は、鞍馬寺に関する謎を一つだけ、わざとそのままに放っておきました。機会がありましたら、ぜひみなさんも現地に足を運ばれて、凛とした景色に包まれつつ、ゆっくりご考察いただければと思っています。
『神の時空 -三輪の山祇-』
誰も知らない、パワースポットの闇……
奈良・大神神社は三輪山を御神体としていると、一般にいわれています。アニミズムの代表であると。しかし、本殿から参拝しても、三輪山頂上を拝むことはできません。何故か微妙に角度がずれているからです。また、大怨霊を祀っているはずなのに、本殿に向かって広い参道が真っ直ぐ走っているように思えます。これはどういうことなのでしょうか? また、現地に行かれたなら、ぜひとも三輪山に登拝を。但し、往復2時間・水分補給以外の飲食禁止・トイレなしという、かなりきつい山道ですが。
『神の時空 -嚴島の烈風-』
神の島が秘匿する歴史の暗部
嚴島に足を運んだきっかけは、嚴島観月能鑑賞でした。しかしそこで、嚴島(市杵嶋姫命)にすっかり魅入られてしまいました。当初は殆ど何も考えていなかったのですが、実際に行ってみると「居着く島」という名前の通り、余りにも見事な「結界」が敷かれていたことに驚嘆してしまいました。後日、改めて弥山に登拝し、御山神社に参拝させていただきました。そしてそれ以来ずっと、市杵嶋姫命に魅了され続けているのです。
『神の時空 -伏見稲荷の轟雷-』
「稲荷神=狐」の大いなる誤謬!
わが家は三代続いた江戸っ子だったので、稲荷は昔からとても身近な神様でした。しかし、そもそも「稲荷」と書いて「いなり」と読めないではないか、という疑問は昔から持っていました。そのあたりから、ここまで話が広がりました。能の「小鍛冶」にも、強く背中を押された気もします。それから京都に足を運ぶ度に稲荷山に参拝させていただき、次はいよいよ7度目になるので、とても楽しみです。
『神の時空 -五色不動の猛火-』
「江戸」に潜む夥しい死者
江戸っ子だったと公言する以上、吉原と歌舞伎に関して書かなくてはならないと常々思っていましたが、ようやくここで書くことができました。しかし書き始めてみると(読まれた通り)作者の予想を遥かに超えて、とんでもない話になってしまいました。都内の取材も30ヵ所を越えました。しかし、それでもまだ書ききれていません。江戸は深いと、改めて感じましたので、そのあたりの話は、また違う機会に公にしたいと考えています。
鎌倉の伝説からはじまった、シャーマンの血筋をひく辻曲兄妹の物語がついに完結です。
今回の物語は過去の大惨事、京都・天橋立での事件の真相から始まります。辻曲兄妹の両親に何が起こっていたのか、ついに描かれるときが来ました。
読みどころはシリーズを通してうすうす皆さまはお気づきであろう、高村皇の本心がついに、彼みずからの言葉で語られるところです。この原稿を読んだ時、私は辻曲兄妹の味方をしていいのか、高村の意志が正しいのか、わからなくなりました。そして、ここに来てシリーズタイトル「神の時空」の意味を改めて考えたとき……「おお!」と声を出してしまいました。高村の言葉をもってして、シリーズ通算8冊を読み直してみるのもおもしろいかもしれません。
……こぼれ話としては高田さんから天橋立取材旅行中に送られてきた蟹とお酒の楽しそうな写真が忘れられません(笑)。かの地で高田さんが聖酒とともに“神の啓示”を得た圧巻のシリーズ最終巻、お楽しみください!
『神の時空 -鎌倉の地龍-』
鎌倉将軍暗殺事件の真相とは!?
鎌倉には多くの謎が隠されています。そもそも源頼朝が鎌倉に幕府を開いたのは「三方が山、一方が海という、守るに易く攻めるに難い要害の地」という理由が一般的ですが、果たして本当なのでしょうか。それならば他の天皇や将軍たちは、何故そういった土地を選ばず、奈良、京都、大坂、江戸……などなどを選んだのか。どうやらそこには、とても深い秘密が隠されていそうです。また、源範頼や頼家たちの眠る修善寺にも、多くの謎が潜んでいます。ぜひみなさんも、さまざまなことを考えながら足を運んでみてください。