『人間じゃない
綾辻行人未収録作品集』
著者:綾辻行人
定価:本体1,550円(税別)
「あの家のこの部屋は・・・・・・密室、だったんです」
持ち主が悲惨な死を遂げ、今では廃屋同然の別荘<星月荘>。ここを訪れた四人の若者を襲った凄まじい殺人事件の真相は?――表題作「人間じゃない――B〇四号室の患者――」ほか、『人形館の殺人』の後日譚「赤いマント」、『どんどん橋、落ちた』の番外編「洗礼」など、自作とさまざまにリンクする五編を完全収録。
単行本未収録の短編・中編がこの一冊に!
この30年の中で、一番思い出深いことはなんですか?
いろいろと思い出深いことはありますが、「一番」と云われるとやはり、「デビュー作『十角館の殺人』が刊行されたときのこと」になるのかなあと。何しろ、「ミステリ作家になる」というのは少年時代から抱きつづけてきた(あまり叶うとは思っていなかった)夢だったので。それがまさかこうして現実になるとは―という驚きと戸惑いが、あのときは喜びと同じくらい大きくあった気がします。
『人間じゃない』は綾辻さんにとってどんな1冊ですか?
デビューからしばらくは長編本格ミステリの書き下ろしが仕事の中心だったため、短編の依頼をお引き受けする機会がほとんどなかったのです。短編を書くことがそもそもあまり得意じゃない、という理由もあります。2004年に『深泥丘奇談』の連作を始めてみて、こういう短編なら自分も書けるなと発見したのでしたが、それでも普通のミステリの短編はいまだに書き方がよく分からない、という――。
そんな中でも、たまに単発でお引き受けして執筆・発表してきた短編・中編が本書に収録された5編。これまで単独名義の著書に収録する機会がなかったのを、ようやく1冊にまとめることができたわけです。5編は独立した物語でありつつも、それぞれに何らかの形で他の綾辻作品とつながりが見える内容になっていて、こうして並べてみると、それがちょっと風変わりな効果をもたらしているようにも思えます。
収録作品の中で思い出があるものはありますか?
書いた時期がすべて年単位で離れているため、どの作品にもそれぞれの時期の思い出があります。楽しい思い出だったり悲しい思い出だったり……いろいろです。中でも「洗礼」は、本書の「あとがき」でも記しているような経緯があって書いたものだったので、ひとしおの感慨が……。
「人間じゃない――B〇四号室の患者――」は、収録された5編の中では最も新しい作品で、そのぶんやはり、執筆時の記憶も鮮明です。けっこう苦労したのですが、結果としてなかなか綾辻らしいホラーミステリに仕上がったのではないか、と自己評価しています。
1960年京都府生まれ。京都大学教育学部卒業、同大学院博士後期課程修了。大学院在学中の87年9月に『十角館の殺人』で作家デビュー、「新本格ムーヴメント」の嚆矢となる。92年には『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞。『迷路館の殺人』『人形館の殺人』『暗黒館の殺人』など「館」シリーズと呼ばれる一連の長編で本格ミステリシーンを牽引する一方、『殺人鬼』『眼球綺譚』などホラー小説にも意欲的に取り組む。ほかに『霧越邸殺人事件』『フリークス』『どんどん橋、落ちた』『最後の記憶』『深泥丘奇談』『Another』など著書多数。
本格ミステリの金字塔「館」シリーズ。第1作となる『十角館の殺人』で綾辻行人さんが鮮烈なデビューを飾ってから30年目を迎えます。メモリアルイヤーのスタートに最新作『人間じゃない 綾辻行人未収録作品集』を刊行します。
これまで単行本に収録されていない、希少な短編と中編を完全収録した最新作は、綾辻さんの先行作品とさまざまにリンクしています。「館」シリーズをはじめ、同時期刊行の講談社文庫『どんどん橋、落ちた<新装改訂版>』の番外編にあたる「洗礼」も収録しているので、あわせて読むとさらにお楽しみ頂けます!
『十角館の殺人』とともに誕生した新本格ミステリというジャンルも、同時に30周年を迎えます。綾辻さんの最新刊を皮切りに、夏に大きな企画も進行中。イベントなども予定しているので、ご期待下さい!