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『溝猫長屋 祠之怪(どぶねこながや ほこらのかい)』

『溝猫長屋 祠之怪(どぶねこながや ほこらのかい)』輪渡颯介
忠次たちが住む溝猫(どぶねこ)長屋には、三月十日の時点で最年長の男の子たちが、長屋の奥にある祠を毎朝お参りする決まりがある。その祠を拝むようになってから子供たちは「幽霊が分かる」ように。祠にはどんな謂(いわ)れが?なぜ「分かる」ように? そして忠次と同い年の銀太、新七、留吉らに苦難の日々が始まった――

『溝猫長屋 祠之怪(どぶねこながや ほこらのかい)』
著者:輪渡颯介
定価:本体1,400円(税別)

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著者コメント

 新作です。
 あ、失礼しました。どうも、輪渡颯介(わたり・そうすけ)です。
 ちゃんと名乗っておかないと、「そうか、この人は新作さんというのか」と間違える方がいないとも限りませんので。いや、もちろんそんな粗忽者はいるわけがないと思っております。ただ、念のため丁寧に申しておきますと、輪渡颯介という作家がこれまでのシリーズとは別の新しい作品を書き上げましたよと、そういうことでございます。
 私はずっと、子供が主人公の作品を書いてみたいと思っていました。その念願が叶ったのが、この『溝猫長屋 祠之怪』です。
 基本的に私の作品は幽霊が出てくる話ですので、ともすれば暗くなりがちです。もちろん死を扱っている以上、その部分は真面目に取り組まなくてはいけません。しかし、それ以外の場面では明るくてもいいのではないか、必要以上に重くなることはないのではないかと、そう常々考えておりました。それが救いになるということもありますから。
 その辺りの調和というのが私の課題の一つであったのですが、今回、主人公になった子供たちがそれをあっさりと解決してくれました。幽霊を怖がり、無念の死を遂げた者たちに心を痛め、それでいて喉元過ぎればまた自ら怪異に突っ込んでいくという、見事な能天気さを見せてくれたのです。お蔭で怪談にありがちなじめじめとした湿っぽい印象が薄れ、からっとした明るい雰囲気の作品に仕上がりました。  ということで、江戸の長屋に住む十二歳の少年四人が巻き起こす幽霊騒動を描いた『溝猫長屋 祠之怪』、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 以上、輪渡新作でした。
 ……間違えた。輪渡颯介でした。

Profile 輪渡颯介(わたり・そうすけ) 1972年、東京都生まれ。明治大学卒業。2008年に『掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南』で第38回メフィスト賞を受賞し、デビュー。怪談と絡めた時代ミステリーを独特のユーモアを交えて描く。主な作品に「浪人左門」シリーズとして『百物語』『無縁塚』『狐憑きの娘』、「古道具屋 皆塵堂」シリーズとして『蔵盗み』『祟り婿』『夢の猫』などがある。他の著作に『ばけたま長屋』がある。

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登場人物紹介

忠次 桶職人の倅。12歳になり同い年の銀太らと毎朝、長屋の奥にある祠をお参りするようになる。
銀太 将棋や駒の盤などを作る職人の倅。お調子もので好奇心が強い。
新七 提灯屋の倅。賢く、手習所では小さな子供たちに教えてもいる。
留吉 油屋の倅。弟と妹が多く、面倒を見なくてはならないため忠次たちと遊べないことがある。
吉兵衛 溝猫長屋の大家。忠次たちと毎朝、祠をお参りして
いる。子供たちを心配しているがゆえ叱言(こごと)が
多い。
弥之助 岡っ引きの親分。以前、溝猫長屋で暮らしていた。
古宮蓮十郎 浪人。以前は剣術道場を開いていたが、今は忠次らが
通う 手習所・耕研堂の師匠をしている。
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担当コメント

曰く付きの品物ばかりが揃う古道具屋「皆塵堂(かいじんどう)」を舞台にした全7作のシリーズで「怖さと笑い」という相反する要素を盛り込み、多くの読者を魅了したメフィスト賞作家・輪渡颯介さんの新作が誕生! 今度の主人公は、4人の12歳の子供たち。長屋の決まりに従い祠をお参りするようになってから「幽霊が分かる」ようになった子供たちが恐がりつつも、楽しみも見いだし波乱をよぶのが読みどころ。舞台は「溝猫長屋」ですから「皆塵堂」に続いて猫たちも大登場し、猫好きな方にもおすすめです! 「皆塵堂」を進(深)化させた「輪渡節」をぜひともお楽しみください!

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既刊リスト
『古事記異聞 京の怨霊、元出雲』高田崇史 『またね家族』松居大悟 『修羅の家』我孫子武丸 『#柚莉愛とかくれんぼ』真下みこと 『希望と殺意はレールに乗って アメかぶ探偵の事件簿』山本巧次 高田崇史ONLINE