『雨色の仔羊 警視庁捜査一課十一係』
著者:麻見和史
定価:本体900円(税別)
こんにちは、麻見和史です。『雨色の仔羊 警視庁捜査一課十一係』は、刑事・如月塔子たちの捜査活動を描いたシリーズの第八弾となります。
一般的な捜査一課ものでは、殺人事件が発生し、刑事たちが臨場して捜査本部が設置される、というストーリーが多いかと思います。本作ではその流れを変えて、執筆時、次の二点に挑戦しました。
まず、事件の端緒です。塔子は上司の命令で、SOSメッセージの書かれたタオルについて調べ始めます。まだ事件かどうかもわからないまま聞き込みを続ける、という展開はシリーズで初めてのことです。「どこで」「誰が」「何に巻き込まれているのか?」という謎から、物語がスタートするわけです。
そして二点目。今までこのシリーズでは、犯人にせよ被害者にせよ、成人の男女を描いてきました。しかし今回、事件の鍵を握るのはひとりの少年です。未成年者から事情を聴くには細やかな配慮が必要ですから、塔子が中心になって少年と接することになります。はたして彼は事件とどう関わっているのか。彼はどこへ向かい、何をしようとしているのか。雨の中、捜査員たちの緊迫した捜査が繰り広げられます。
このように本作は、従来私が描いてきた作品とは一味違ったものに仕上がりました。人として、刑事として、少しずつ成長していく塔子の姿を見守っていただければと思います。
麻見和史(あさみ・かずし)
1965年千葉県生まれ。立教大学文学部卒業。2006年に『ヴェサリウスの柩』で第16回鮎川哲也賞を受賞し、デビュー。大学での解剖学教室を舞台にした医療ミステリーで注目を集める。著書に『真夜中のタランテラ』(東京創元社)、『特捜7 銃弾』(新潮社)、『屑の刃 重犯罪取材班・早乙女綾香』(幻冬舎)、『深紅の断片 警防課救命チーム』(講談社)がある。今後さらなる活躍が期待されるミステリー界の気鋭。
新米刑事・如月塔子の奮闘を描く本シリーズもついに八作目の登場です。今回、塔子と十一係が挑むのは、普通の住宅街で起きてしまった監禁殺人事件。これまでに彼らが解決してきた事件と異なるのは、九歳の少年が関係者だったこと……。事件について頑なに口を噤む少年と、塔子がどう向き合うのかも大きな読みどころです。ドラマ『水晶の鼓動』放送もいよいよ迫っています! 秋の夜長は、ぜひ十一係の面々とお過ごしください。